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1-1 エロゲの世界に転生した

 俺は学校から帰ると自分の部屋に入る。そして、いつものようにパソコンの前に座る。健全な高校生たる者、1つや2つは持っているはずだ。そうエロゲを! デスクトップ上にはアイコンを表示していないから起動までに少し時間がかかるが、そんなことは些細なこと……。数分後には楽園が待っているんだ!


 ピンポーン。


 楽園への準備を邪魔する不届き者は誰だよ。宅配なんか頼んでねぇぞ。両親が帰ってきていないため俺が対応すると親友の神崎玲(かんざきあきら)がいた。


「遊びにきちゃった。良いよね、マコト君」


 女子っぽいアルトボイス、スラッとした細めの華奢なスタイル、端麗な顔立ちの女子……初めて見る人なら女子と見間違えるであろう男子、いわゆる男の娘であるアキラがいた。アキラが突然遊びに来るのは今日が初めてではない。


「……姉から逃げてきたんだな。まあ、いいよ」


「助かるよ。今帰ると姉に襲われるからな」


 いつも通り俺の部屋に連れて行く。


「別に、きせかえ人形になるだけだろ」


「嫌だ! 女物の下着やメイド服、チャイナドレス、ナース服、セーラー服、甘ロリとかのコスプレさせられる度に男の尊厳が奪われていくんだぞ。最近だと胸パッドやブラジャーも付けさせられそうになるし」


 男の尊厳ね……。どう見ても女子にしか見えないからあまり関係ない気がするが、アキラは意外と気にしている。


 俺の部屋に入ると、アキラはベッドに座った。何か遊べるものあったかな。アキラは意外とゲーム強いからなぁ。そうだ、いいこと思いついた。


「そうだ。男の尊厳の回復に良い物があるぞ」


「そんなものがあるのか!」


 アキラは目を輝かせていた。俺はアキラをパソコンの前に座らせて、ヘッドホンも付けさせた。これで高音質で聞くことができるぞ。CGフルコンプしてクリア済みのエロゲを開いた。


「ちょっ! これはエロゲではないか! は、肌色がこ、こ、ここここんなに!」


「まだまだこの程度は序の口」


 イベントシーンをクリックすると、声優の迫真の演技が聞こえているはずだ。俺は最近プレイしたエロゲなら脳内再生とか余裕だ。アキラは顔を真っ赤にしていた。


「あわわわわわわわ。は、裸……そんな太いモノを口に入れるのか!」


「どうだ、男の尊厳が回復してきたんじゃないか?」


「こ、これが男の尊厳……ゴクリ」


 イベントシーンが終わる頃には、アキラは顔を紅くしながら画面を見ていた。しかも、情報を整理しきれずに混乱もしているのか、アニメやマンガならグルグル目で表現されそうな状態だった。


「な、なるほど。たしかにこれなら男の尊厳が、ががががががが」


「アキラしっかりしろ。まさかこの程度でバグるなんて」


「こ、これより凄いのもあるのか!」


 あるけど見せてもアキラは大丈夫なのだろうか。そんなことを考えていると、突然部屋の床が光った。


「えっなに! 何かしたのか!」


「俺の部屋にこんな仕掛けは無いよ! うわっ」


 視界が光に埋め尽くされて数秒後に真っ暗になった。目を開けると、知らない男女がいた。


「見て、目を開けたわよ」


「君に似た可愛らしい顔だ」


「立派な男の子に育って欲しいわね」


 眠い……。一体何が起きた……んだ? 俺は睡魔に負けて眠った。


 結果だけを言うと、俺は赤子になっていた。名前はエメリー・カルモット。名前が女子っぽいが男である。そして、名前を聞いた時にエロゲ『フェアリーナイト』の主人公だと気づいた。


『フェアリーナイト』は制作会社の性癖なのか見た目は全員ヒロインなのだ。この制作会社のエロゲは百合ゲーか男の娘主人公が多かった。この情報を知らないと百合ゲーと勘違いして購入する事故が起きる。


 俺は『フェアリーナイト』のCGとかはフルコンプしていたが、半年以上前にプレイしたのが最後だから、細かいイベントは記憶があやふやでストーリーの大筋しか覚えていない。


 赤子の時は、漏らしたり母乳を吸ったりと、転生前は高校生だった俺の尊厳は失われていた。自分でどうすることもできないのは辛かった。ただ、母乳は……なんというか、ごちそうさまでした。


 俺は病気になることはなく、健康に育ち、7年が経った。俺は可愛らしい少女の見た目に育っていた。鏡を見たら金髪の美少女がそこには映るけど男だ。あと、妹ができた。


「もう7歳か。あと9年後にはスタートしてしまうのか」


 異世界ヒャッホーというラノベ主人公のような精神的な余裕はない。内心ヒヤヒヤしている。ゲームではステータスをいじっているだけで良かったが、俺自身が戦わなければならないとなると怖い。しかも、ゲームではHPが0になったらエロCGが流れてゲームオーバーだったが、現実(ココ)では死を意味する。ネタビルドなんてできない。少しでも鍛えて強くならないと。腐っても主人公であり、普通に強かったからなんとかなるはずだ。レベルという概念があるならの話だけど。


「エメリー、少し話がある。私の書斎に来なさい」


 父親が話とはなんだろうか。俺は父親の書斎に行くと母親もいた。なにか大事な話でもあるのだろうか。


「エメリー、魔法と剣術ならどちらを習いたい?」


 魔法……やはりこの世界でもあるのか。相手に近接することなく攻撃できる手段の1つとして魔法がゲームでも存在した。


「両方はダメなのですか」


「すまないが、どちらかだけだ」


「母としては魔法がオススメよ。エメリーにはケガを避けて欲しいから」


「私としては護身のためと男として剣術を覚えて欲しいのだが」


 魔法と剣、どちらにしろ素人であることには変わりはないため苦労しなければならない。ただ、父親が「男として」と言った時にふと、アキラが言っていたことを思い出した。


 ー僕って女子っぽいから色々と大変だったんだよね。女子っぽいせいで他の男子から虐められてたから。


「お父さん剣術が良いです。剣術でお願いします」


「おお! そうか、そうか。それでは、剣術の先生を探しておこう」


「エメリー、無理はしないでよ」


 見た目がどうしても美少女になる未来が分かっているなら、少しでも男らしいことができたほうが良いだろう。男らしさは磨けるんだ!


 1週間後、剣術の先生が家に訪れた。俺はこの間に『フェアリーナイト』のことを色々と少しずつ思い出していた。エロCGを思い出すことが多かったが、もう一人の主人公アリスを思い出した。


 アリスはクリア後特典として、新しくゲームを始める場合に選択できる女主人公だ。アリスは元々の主人公より強くなることで有名な公式チートキャラだ。しかも、ちゃんと百合ゲーとして各種ルートにイベントシーンやCGまで用意されている。そのため、クリア後特典のアリスを解放したら、真のフェアリーナイトが始まるという言われようだった。


 剣術の先生は糸目の男で何故か、笠、着物、刀、草履という見事なまでの和装だ。西洋やナーロッパだと思っていたら突然のジャパニーズだ。世界観が狂っていやがる。いや……たしか、『フェアリーナイト』にもヒロインキャラで侍がいたから元々の仕様だった。


「ほう、この女子(おなご)に剣術を教えれば良いのか?」


「……私の息子だ」


「これは失敬失敬。ふむ……なるほど、なんとかしてみましょう。あとは本人の覚悟だけですな。それでは、さっそく素振りからやってみましょう」


 俺は庭に出ると木剣で素振りを始める。たかが7歳児で転生前も武道未経験な素人の振るう木剣はヘロヘロとして弱々しい。学園までに間に合うのか心配になる。


「ほう、年齢に似合わない剣筋だ。7歳にしては良い。棒切れを振り回す感覚で扱うと思っていましたが、剣とは思ってくれているようですね。毎日1時間やっていきましょう」


 毎日1時間か。何をするのだろうか。少し楽しみだ。


 1時間後に分かった。素振りだけだった。これから、毎日1時間の素振りだ。素振りだけで面白くないとはいえ、素振りだけでも今はキツい。おそらく体作りの一貫なのだろう。


 父親は領主としての仕事に戻っていて、今は先生しかいないかった。


「7歳とは思えない集中力でした。途中で諦めると思っていましたよ」


「そりゃ……どうも」


「明日は素振りはしませんが、ゆっくりと走りましょう。基礎体力はどんな訓練をするにも重要です。まだ、この程度で根をあげないでくださいね」


「分かり……ました」


 明日は1時間ランニングか……。男らしさのためにも頑張ろう。先生は宿屋に泊まるらしい。そのため、宿泊料は全額コチラで持つようだ。


 □□□□□□□□


 剣術を習い始めて5年が経って12歳になった。俺は先生とランニングをしていた。最初の頃は10分も走れなかったのだが、今では1時間以上走れるようになった。最近の悩みとしては、筋肉があまり付かないせいで華奢な体型をしていることだ。


「残りの30分は『身体強化』を使って走りましょう。意識をしなくても使いこなせるようになるのが重要ですよ」


「はい!」


 『身体強化』を発動すると走る速度が一気に早くなる。『身体強化』は文字通り身体を強化する魔法だ。全身にマナを薄く纏わりつかせるイメージが重要で、大量にマナを込めた所で効果は変わらず浪費するだけとなる。この魔力を薄く纏わりつかせる技術は難しく気を抜くと、マナの無駄使いや部位の未強化が起きてしまう。


 30分経って走り終えると、俺は肩で息をして大粒の汗を流していた。マナの保有量がギリギリということや意識して『身体強化』を使っていることもあって、精神的に疲れる。


「まだまだ鍛練が足りませんな」


 先生は汗1つかかず、涼しい顔をしていた。俺が子供だから差があるのは仕方ないとはいえ、こんなに差があるのは悔しい。


「先生は疲れていないように見えるのですが、先生はどのくらい走れるのですか」


「そうですね、この程度では準備運動にすらなりません。私の場合は『身体強化』を使わずに2日間山の中を走らされてました。走り終えて少し休んだらそのまま剣術。精神も肉体もボロボロになった酷い鍛錬が懐かしいですね」


 先生はクックックと笑いながら空をぼんやり眺めていた。想像以上に酷い鍛錬で乾いた笑いしかでなかった。もしかして、俺もそんな訓練をすることになるのだろうか。


「そういえば、エメリーはちゃんと言いつけ通り、剣を持ってきてますね」


「鍛錬で走る時でも必ず持つように言われていますから」


「私の言いつけを守っていて関心関心。それでは」


 ゾワッと身の毛がよだつ冷たい雰囲気を感じた。先生の方を見ると俺の首を目掛けて横に木刀を振るっていた。


「うわっ!」


 俺は横に転がって避けた。立ち上がろうとすると上段に構える先生がいた。そのまま剣を振り下ろされた。俺は咄嗟に剣を抜き『身体強化』も発動して受けようとしたが、先生の剣が透過して斬られた。鋭利で冷たい感覚が体を通り抜ける。体が左右に真っ二つに……なってない。


「まさか、木刀が斬られてしまうとは良いですね」


「なんですか……今のは」


 全身から汗が流れ、立ち上がろうとすると体から力が抜け倒れてしまった。全く力が入らない。


「だいぶ効いたようですね。殺気に斬られた感覚はどうです?」


 殺気に斬られた? あの感覚か。なんだか…眠い……。


「効きすぎたみたいですね。そい!」


 ゴンっと頭に痛みを感じ、意識が覚醒する。アイタ! 体にも力が戻っていた。


「生きているから大丈夫ですよ」


「生きてはいますが頭がイタイです……」


「殺気に斬られて死にかけていたので痛いのは我慢してください」


「死にかけっ…!」


 死にかけていたことに驚いて言葉が出なかった。


「自分も師匠から受けた時は冷や汗が止まりませんでした。たまに死人が出るというのは冗談だと思っていましたが、本当だったみたいですね。私も良い勉強ができました」


「そんな危険なことを試さないでくださいよ!」


「まぁまぁ、今回については合格です。殺気に反応できるかを試しました。剣を鍛錬の際に持たせているのはこういった奇襲にも対応する自覚を持たせるためです。1撃目を回避した後の2撃目は『身体強化』も発動できていたので実戦形式の鍛練を行うには十分です。最初でここまでできるとは思っていませんでした」


「どうなると思っていたのですか」


「一撃目で気絶していると思ってました。予想が外れて悔しいですね」


「アハハ……」


 先生はクックックと笑っていた。俺もようやく実戦訓練というのだから楽しみだ。素振りとランニングの基礎体力作りや型稽古、最近始まった体術の訓練と少しずつ本格的になり始めている。


「明日からは貴族達のパーティに向けて出発すると聞いているので楽しんできてください。帰ってきたら実戦形式なので、あまり体を鈍らせないように。今日はこれで終わりです」


「はい! ありがとうございました」


 訓練が終わり父親に報告にいく途中で妹が抱きついてきた。11歳とはいえ今も俺にベッタリくっついてくる。この時期なら「近寄らないで!」となっていると思っていたのだが、今でも甘えてくる可愛らしい妹だ。金髪で自分より頭1つくらい小さい。


「兄様! 遊びましょう!」


「ニーナ、ちょっと待っててね。鍛練が終わったことを父様に報告にいかないと」


「分かりました。5分20秒くらいは待ってやります」


 なんで秒単位なんだ……。俺は執務室にいく。この時間なら、領主として仕事をしている。扉は開いていてノックをすると俺に気づいた。


「鍛練は終わったのか」


「はい、次から実戦形式もしていくそうです」


「そうかそうか、順調のようだな。あと4年後くらいには王都の学園に行ってもらうから、それまでしっかりと学ぶのだぞ」


「分かりました」


 そういえば、あと4年もないのか。レベルという概念があるなら、入学前に少しでもいいから上げておきたい。


「そういえば、準備はできているか? 今回は初めての夜会だが緊張することはない。礼儀作法は教えているから、その通りやれば大丈夫だからな」


「大丈夫です。準備は昨日のうちに終わっています。礼儀作法も父様から教えて貰っているので心配はしていないのですが……その、女性の礼儀作法も覚える必要はあったのですか?」


 母親から女性の礼儀作法や姿勢も覚えさせられた。俺がいると妹が文句を言わずに覚えてくれるから助かるわ、とのことだったが、妹よりも厳しかった気がする。最近だと妹に暇な時とかに教えてあげて、とも言われている。俺、男なんだけどなぁ。


「知っておいて損はないな。姿勢や礼儀作法は、その人物の鏡だ。知っていれば人を見定める1つの手段になる。まあ、ニーナのワガママだが付き合ってあげなさい」


 父様は笑っているがニーナに甘い。俺もニーナには甘いけど。「兄貴、キモい」という妹だったなら遠慮なく「俺だって嫌いだ、ボケ!」と犬猿の仲になれただろうに、今でも慕ってくれている妹を突き放すようなことは良心が痛む。母親からは、はしたない行為だから辞めなさいと何度も言われているが「兄様だけです」と絶対に辞めようとしない。


「分かりました。それでは部屋に戻ります」


「明日からの移動に備えてゆっくり休んでくれ……と言いたいのだが、もしかしたら、この後のニーナの礼儀作法に一緒に出てもらうかもしれない」


「分かりました、お任せください」


 多分、妹と遊んでいたらそのまま礼儀作法に流れる感じだろうな。鍛練でだいぶ疲れたから体力が足りるだろうか。


 案の定、ニーナと遊んでいたら一緒に礼儀作法もすることになった。最近だと女性物の服を着させられてやっている。男の尊厳が……。スカートでスースーするのは慣れたくないけど、慣れてしまいそう。アキラが言っていた失われる感覚が今だと分かる。


「兄様、今日も可愛いですよ。化粧は薄くても良いのですね」


「エメリーがどうして女の子として産まれなかったのか母親である私も不思議に思うわ」


 ついに化粧も覚えてしまった。ニーナのケバい化粧を見て笑ってしまったのが悪かった。「兄様もやってみれば分かります」とニーナが言ったことを機会に、「エメリーもやってみましょう」という流れになって母親に教えられるがまま化粧をしていたら一発で成功してしまった。化粧によって少し大人びいた雰囲気になるのも悪くない。


「それでは、ニーナはもう一度やってみましょうか」


「分かりました、お母様」


 ニーナは俺の要領を見て覚えたのか、今度は上手くできていた。可愛らしさから少し大人っぽい感じに変わっていた。


「さっきよりも良いわよ」


「どうですか、お兄様。」


「大人っぽくなって良いと思うよ」


「お母様! お兄様に褒めて褒めてもらえました」


「良かったわね。この後も引き続きやっていきましょう」


 母親がウインクしてきた。妹のやる気を出してくれてありがとう……か。まあ、この損な役回りをもう少しやっても良いかな。


 この後の礼儀作法も上機嫌なニーナはどんどん上手くこなしていく。俺はいつも通り母親の厳しめの採点を超えていく。


「それじゃ、今日はここまでね」


「気づいたら終わっていたのです! 兄様がいると楽しいです。ところで、兄様大丈夫ですか?」


「燃え尽きたよ……」


 俺は非常に疲れた。先生との訓練で体力をほぼ使い切っているのに、少し休んだら追い打ちでニーナと礼儀作法の勉強……。もうむりぽ。イスから立ち上がるだけの元気がない。


「えい!」


 頬に優しい感触があった。なんだろう、この前世でも知らない感触……。初めての感じだ。


「元気出ましたか? 初めてしてしまったのです〜」


 きゃ~と頬を紅くしながらニーナは1人で盛り上がっている。何が起きたんだ。まさかこれは!? 伝説のほっぺにチューだったのか。落ち着け、これも先生と同じ抜き打ち試験なのだ。そうだ! そうに違いない! 俺は疲れていても思考は鈍っていない。そう、おれはしょうきにもどった!(混乱)


「兄様、どうしたのです? 急に立ち上がって」


 俺は何も言わずに抱き寄せるとニーナのおでこにキスをした。手の甲は敬愛、唇なら親愛、頬かおでこなら友愛を意味したはず……母親が半年くらい前に言っていた! 


「あらあら」


「に、に、にににに兄様! わ、わ、わわわわ私には大丈夫です〜!」


 ニーナは走って逃げていってしまった。何か間違えただろうか? まさか、抱き寄せたのが間違いだったか。抜き打ち試験をもしかしてミスったのか! 俺は恐る恐る母親を見るが怒ってはいなかった。


「ニーナも成長していたのね。好意を受け取るのが苦手だったり意識したことが無かったのかしらね。エメリーどうしたの?」


「ぬ、抜き打ち試験は不合格ですか!?」


「抜き打ち試験? うーん、もしかしたらエメリーは多くの女性を泣かせてしまうかもね」


 母親の意図が理解できなかった。この後、ニーナに抱き寄せてキスをしたことを謝りにいったらなぜか不機嫌になってしまった。


「兄様のバカ。今回は許しますけど、あまり驚かせないでください」


 翌日、妹との距離感が遠くなってしまった。昨日まで、ベッタリだったこともあって少し悲しい。


 2日間の馬車での移動で尻が痛くなった。ラノベ主人公ならサスペンションとか作ってしまうだろうが、俺にはそんな知識はない。物の名前しか知らん。


 そんな馬車移動でカルマイン侯爵領に着いた。夜会は明日に行われる。今日は既に日が沈みかけていることもあって貴族用の宿に泊まった。

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