第97話 聖剣技
聖剣の契約のための結界が生まれ、
神々しいほどの輝きが訓練場に溢れている。
そして結界を前にバルガスとの死闘は継続していた。
「反撃の隙を与えるな!」
シャルロットが指示を送りながら攻撃を繰り返す。
戦況を左右するのはアリスの魔法剣に他ならない。
そしてアリスを失った瞬間に敗北が確定してしまう。
シャルロットはカートに必ずアリスを守るよう指示を出していた。
「小賢しいわ!」
バルガスもこの状況で一番厄介なのはアリスだと理解している。
しかし統率の取れた攻撃に中々反撃が出来ず苛立っていた。
「ならばこれならどうだ…」
バルガスは麻痺でも硬質化を使えると分かっている。
全身を鋼の肉体に変化させ、アリスへ強引な突進を繰り出した。
シャルロットは急なバルガスの行動に驚いてしまう。
咄嗟の攻撃だがこの時こそカートに守らせるべきだと考えた。
「カート!」
カートは二人の間に割り込んだが巨体を生かした体当たりによって弾き飛ばされてしまった。
鋼の肉体がアリスへと襲いかかる。
「しまった…」
アリスの目前に迫ったバルガス。
ついに雷魔法を奪えると踏んで舌舐めずりをしている。
「その力、喰わせてもらう!」
アリスはバルガスとの距離を測りながら攻撃していたが、この距離ではいくら高速移動を出来るとはいえ回避は難しい。
アリスは絶体絶命の危機に直面している。
そしてバルガスは爪による攻撃を繰り出していく。
ベルはレガードの金庫から預かっていたアイテムの使い所を考えていた。
そしてその使うべき時は今しかない。
「アリス様を守って!」
ベルが放った小さな盾はアリスとバルガスの間に割り込んでいき瞬く間に巨大な盾へと変化していく。
「聖者の盾だと?」
バルガスの必殺の攻撃は聖者の盾によって防がれた。
しかし聖者の盾が消え去る瞬間にバルガスは改めて突進してくる。
そのため盾が消える前に行動しなくてはならない。
限られた時間の中でアリスの才能は更に開花する。
なんと、上空に雷の剣を呼び出したのだ。
クレアと修行を繰り返していたことが影響して、
アリスは魔力制御によって空中に雷の剣を生み出すことに成功たした。
そして即座にバルガスへと落としていく。
「な、なんだと!」
アリスは魔力制御の才をクレアから引き継いでいた。
ここぞという場面でクレアの技を再現して見せた。
バルガスは新たな麻痺を上書きされ動きが鈍ってしまう。
「クソが!!!」
バルガスはまさか麻痺を上書きされると思わない。
聖者の盾は消えるが鈍い動きではアリスを捕まえられない。
アリスは高速移動でカートの隣に避難していく。
「ア、アリス、お前ってやつは…」
カートは親友の娘の才能に驚愕していた。
まさかクレアの光の剣を再現するとは思いもしない。
一本だけとはいえ、その才能に恐ろしさを感じていたのだ。
そしてついにその時が訪れる。
クリス達が結界から出てくる瞬間が訪れた。
契約結界の光が徐々に弱まり、
中にいる二人の姿が少しずつ見え始めてきた。
「みんな、待たせてごめん…」
シャルロットは二人の間に何かが起きたと感覚的に悟った。
そしてマリアの表情は晴れやかな笑顔だ。
シャルロットはマリアの表情を見ただけで、
何故かバルガスへの勝利を確信した。
そして更にこの場に賢者達が到着する。
「お前たち、良くやったね!」
賢者は思った以上に元気な声を出しており、
クリスは心から安堵していた。
「さぁ見せておくれ…
500年前に失われた、
聖剣の契約者の力を…」
そして聖剣をお互いの両手で握りしめると、
二人の紋章が光り輝いていく。
その想いに呼応するように聖剣がクリスの力を呼び覚ます。
新しいスキルを獲得しました。
聖剣技Lv.1
「クリス、覚えたようだね…
黒騎士の魔剣技と対をなす剣技、聖剣技
聖剣の真の力を引き出す剣技だよ」
そして二人はバルガスへと向かう。
互いに恐怖は感じていないのが聖剣を通じて分かる。
「ふはははは、
わざわざ殺されるために戻ったか」
「バルガス…
お前は俺たちがここで倒す!」
そしてクリスとマリアはお互いの魔力を聖剣に送る。
二人の意志が重なったことで聖剣が覇王の力を更に強めていく。
「マリア、いくよ…」
マリアは無言で頷く…
そして繋がれた手から渾身の一撃である、
聖剣技を繰り出していった。
虹色に光る高密度の塊がバルガスを襲う。
その攻撃の速度はバルガスでは回避不可能だ。
「な、なんだと…
この俺がここで、朽ち果てるだと」
聖剣技はバルガスの胸を貫いていく。
そしてその穴を再生しようとバルガスは試みるが、
その行動も虚しく叶わない。
「クソ、クソが…」
バルガスの再生スキルを消し去ったのは、
サリーの槍による攻撃だ。
積み重ねた想いが報われた瞬間だった。
「必ず、お前らを…
俺が喰ってやる…」
そう言い残しバルガスは光の粒子となり消えていく…
過去に取り込んできた魂の数だけその光が多く広がる。
そしてふとサリーは目を覚ます。
その光の粒子を見て光の向こうに家族が笑顔で笑う姿が見えた気がした。
「みんな…シュリちゃん…
私は、やったよ…
これで皆んなも、安らかに眠れるね…」
サリーは、ようやく復讐を終えた。
そしてこれから新たな人生を歩み始めるだろう。
クリス達は魔王軍の強力な襲撃を退けた。
賢者が言う聖剣の契約者となったクリスとマリア。
契約者の本当の意味を知り、これから更なる波乱へ巻き込まれることを誰も予測できずにいた…
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