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第82話 命の取引

王直属の極秘任務を命じられた特別調査隊の初任務は子供達の救出、魔族の捕獲と大成功に終わった。

子供達を親元へ帰した後、調査隊全員はBARルミナスに集まっている。

これから捕獲した魔族への尋問をするところだ。



「ようやくサリーの出番ってわけね」



「ふふふ、待ちくたびれたわ」



結界の関係で賢者は城の外に出ることは出来ない。

そのため随時報告はシャルロットが担っている。

今回は大手柄だが、ここから情報を聞き出せるかが重要なのだ。



「さぁサリー、やって」



「貴方たち、私の奴隷にしてあげる」



サリーのその言葉を聞いた瞬間、俺は魔族の男がニヤけて鼻の下を伸ばしたのを見逃さなかった。

そのため俺は魔族の頭をチョップした。



「どうしたの?クリス?」



「いや、何でもないよ」



そしてサリーの身体の周りに赤い魔力が溢れていき奴隷術が発動する。

するとサリーの奴隷の証としてピクシーと魔族の男の腕に奴隷紋が現れた。

そして呼びづらいため魔族の男をガブと名付けた。

黒髪の短髪で牙が鋭い容姿からガブという名前が似合いそうなためガブとしたのだ。



「シャルロット殿下、尋問を」



「アンタ達、私の質問に答えなさい

 ちなみに嘘ついたら焼くから…」



二人とも顔を青くしながらシャルロットを見つめる。

奴隷術がかかった状態で嘘をつく事はできない。



「アンタ達の目的は?」



「誘拐されてきた子供の見張りです」



「誘拐してくるのはアンタ達?」



首を横に振り二人とも否定する。

与えられた仕事をこなしているだけのようだ。



「じゃあ、誘拐してくるのは誰?」



「私たちは知らない奴、黒髪の女剣士」



クリス達全員は目を見開き驚く。

その人物は恐らくセシルに間違いない。

ようやく誘拐に関与している手がかりを見つけた。



「そいつとはどこで待ち合わせるの?」



「ちょうど今日、魔導工場の倉庫内」



魔導工場とは魔道具を製造する工場を言う。

ルミナスの魔法学の全てを注いだ技術により魔道具の質は他国に比べて高い。

魔法教育と同等に魔道具の技術はルミナスにとって価値があるのだ。

その倉庫内で誘拐された子供の引き渡しがされる。




「な、何ですって!」



「ちなみに引き渡しの時間は?」



奴隷術にかかったピクシーがフィリアの質問に答えていく。



「後2時間後…」



「ま、まだ間に合うかも…」



ようやくセシルを追い込む証拠を掴めるかもしれない。

しかし今日のタイミングを逃せば魔族を捕まえたことがセシルにも伝わり、更に姿を隠してしまう可能性が高い。



「今日のチャンスは逃せないわ」



「決まりだな…」



サリーも今日の勝負に同意する。

幸いにも魔族達を奴隷として使役できるため受け渡しの場に平常通り向かうことができる。

この好機は逃せない。



「急ごう、必ず捕まえてやる」



そしてクリス達は奴隷の魔族を連れてBARルミナスを出発した。

セシルを誘拐の現行犯として逮捕するために。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そして取引が行われる倉庫に到着した。

時間は15時くらいだが辺りは静寂に包まれている。

まだセシルは到着していない様子だ。



「本当にアイツらだけで大丈夫なの?

 めちゃくちゃ心配だわ…」



ピクシーとガブは取引が行われる倉庫前に来ている。

いつもの手筈であれば中に入り直接セシルから子供を預かっている。



「水魔法を使って会話を聞きます」



クリスは水魔法と探知の融合により水のある場所であれば会話の聞き取りに成功した。

今回は倉庫の近くに海があるため海水を利用している。



「お前、その魔法を悪用するなよ」



「し、しませんよ!」



更にクリスはその音波を自身の水魔法に共鳴させてシャルロット達にも聴こえるように音を出すことに成功した。



「おお、凄い…

 ガブとピクシーの声が聞こえる」



「クリス君…

 この魔法で一儲け出来るわね…」



クリスのご都合主義とも感じる能力を体験してフィリアはジト目でクリスを見ていた。



「アンタ達、静かに…」



少しずつだが、ガブとピクシーの声が聞こえてくる。

若干ピクシーの声が高くて聴き取り難い。



「そろそろアイツくるかな?」



「さぁ…どうでしょう」



定刻の時間になったがセシルは現れず、その後一時間待っても一向に姿を現さない。



「あ〜、もう今日は来ないわよ…

 どこかで情報が漏れたのかしら…」



「まあ流石にセシルだと簡単に

 尻尾を掴ませてくれませんね…」



と誰しもが諦めた時、その想い人が現れた。




「申し訳ありません、お二人とも、

 今日はお待せしましたね…」



黒髪、長身であり容姿端麗。

固有スキル高速剣、暗黒魔法を持つ、

ルミナスの剣聖セシル・フレイヤが現れた。



「いや、俺達も今来たばかりなんだ…」



遅れてではあるがセシルの登場に、

クリス達は気を取り直して会話に集中する。



「今日の子供はどこだ?」



「ふふふ、気が早いわよ」



セシルは不敵な笑みを浮かべて言い放つ。

クリスはこの笑みを見て残虐なセシルを思い出していた。



「ところで、あの方は元気?」



「あの方って四天王のか?

 お元気にされているが…」



いきなり四天王という単語が出てきて取引よりも、

その人物が誰なのか気になってしまう。

そしてサリーは、四天王が復讐相手のことを指すのか気になって仕方ない。



「じゃあ伝えて…

 目的の子供は居なかったと…」



「あぁ、良いけどよ…

 てことは今日の取引は…」



一瞬セシルの空気が変わった。

そして暗黒のオーラを身に纏ったセシルは急速にガブの隣に移動して言い放った。



「聞こえなかったの?

 目当ての子供はいない…

 そうね、もう一人にも伝えておいて」



「え?」



「貴方の新しい飼い主にも」



ガブはその瞬間、死の恐怖に支配された。

目の前の怪物との会話で一歩間違えば即死。

ガブは命のやり取りをしていたのだと認識を改めた。



そして不気味な笑みを浮かべたセシルは、付近の障害物を足場に上空を駆け回り、あっという間に姿を消してしまった…



「な!」



シャルロットは驚きを隠せない…

全く気づかれる要素がない中で奴隷術を見破られてしまった事に落胆している。



「まだ全ての手がかりが無くなったわけではないわ…

 それに…」



魔族二人は殺されていない。

その二人の供述からセシルや四天王の陰謀を予測できるかもしれない。

サリーは、次なる手へ望みが消えたわけではないことを伝えた。



「そうね…

 まだ終わったわけではないわ…」



「あの二人を回収してBARに帰りましょう」




そして特別調査隊はBARルミナスへと帰っていく。

二人の魔族は生きて帰らせることが出来た。

これからセシルと四天王の手がかりを見つけて陰謀を阻止しなければならない。

しかし魔族を回収して街へと帰る道の途中、

調査隊を不敵に見つめるセシルの姿があったのだった…

いつもお読み頂き心から感謝致します(T . T)

皆様のおかげで何とか毎日更新継続できております…

明日も10時更新を目指します。

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今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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