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第81話 幻惑

世界でも屈指の教育機関であるルミナス魔法学園。

今、廃校となった旧魔法学園の地下1階教室前に来ている。


クリス達は教室内の様子を探りたい。

いきなり中に入って子供達の身に危害が加わってしまうのを避けたいのだ。



「ゆっくり開けるわよ…」



シャルロットがこっそりとドアを開ける。

まさか王女が消え入りそうな声でコソコソしてるとは思わないだろう。

クリス達も固唾を飲んで見守っている。



「よし、フィリアさん…」



フィリアは水魔法バブルバレットを発動して弾丸を空中に用意した。

もしもの時に先制攻撃するためだ。



教室内を覗く…

すると…



「誰もいない?」



確かに探知は、この場所を指しているが誰もいない。

そしてその疑問にフィリアが答える。



「もしかして幻惑魔法?」



シャルロットはその名前に苦い顔をしている。

過去に嫌な思い出があるようだ。



「フィリアさん、幻惑魔法って?」



「まやかしの世界を作ったり自分を透明にする、

 厄介な魔法よ…」



フィリアの話だと目の前の教室は、まやかしで本当の姿が別にあると言う。

更にフィリアは幻惑魔法への警笛を鳴らす。



「最大限警戒して…

 幻惑魔法は、かなり高位の魔法よ」



「解除はどうすれば?」



その疑問に何故かフィリアは胸元から小瓶を出す。

そこには液体のようなものが詰められている。



「ア、アンタ、どこにモノを、

 入れてるのよ!」



「ふふふ、気にしないで」



バニーの件といい大人の色気が出ているフィリアに油断してはいけないとクリスは幻惑魔法と同じくらい警戒を強めた。



「幻惑魔法は聖水をばら撒いて、

 更に水魔法を降り注げば効果が薄まるの」



幻惑魔法は暗黒魔法をベースにしており聖水が解除のためには有効となる。

早速フィリアは聖水を辺りに撒いていく。



「準備は良い?」



クリス達は無言で頷いていく。

フィリアは用意していたバブルバレットの弾丸二発を聖水に向けて発射する。

そして聖水が部屋中に広がっていき幻惑魔法が解除されていった。



嘘の世界が真実へと変化していく。

部屋には生徒は居なく、その代わり更に地下へ潜るための穴と梯子が見えて来た。



「ふぅ、敵はいないようね…」



シャルロットは敵がいないのを確認して安堵したが、クリスはその表情を緩めていない。

いよいよ探知のスキルでジョニーが近いと確信したからだ。



「恐らく下にいます」



クリスもフィリア同様にバブルバレットを用意する。

いざと言うときは師弟による連射攻撃で一網打尽だ。



そしてなるべく音を立てないように梯子を降りていくが後先考えずに先に降りてしまったクリスは後悔した。



「ちょっとクリス君、上向かないでよ!」



なんとフィリアよりも先に降りてしまったのだ。

炎を照らすシャルロットは先頭、二番目がクリス、最後がフィリアの順で降りてしまったのだ。

うっかりさんである。



「ア、アンタ達、静かにしなさいよね」



シャルロットはなるべく小声で注意しているが苛立ちを隠せない。

後でクリスにはお仕置きを検討していた。



「いよいよね…」



底まで到着すると人工的に作られた道が広がる。

そして前方の部屋に人の気配があり声も聞こえてくる…



「アンタ達、いくわよ…」



師弟は弾丸の補充を最大まで行い備える。

そしてシャルロットから合図が聞こえたと共に部屋へと突入した。



「そこまでよ、アンタ達!」



部屋の明かりがついており全てを認識できた。

そこには牢屋が設置され三十名ほどの子供達が閉じ込められている。



「な、何者だ、お前達!」



恐らく見張りの魔族と思われる男が一人だけいるが全く脅威に感じない。



「気をつけて!

 幻惑魔法使いは別にいる」



目の前の敵から幻惑魔法の波動を感じなかった。

つまり魔法を発動した者は室内で奇襲を狙っている可能性がある。



そしてクリスはバブルバレットを魔族へと放つが、

当たる寸前で防がれてしまう。



「な、何だ?

 何かに守られた?」



クリスは確実に当てたと思っていたが透明な何かに防がれたような印象を受けた。

それを見たシャルロットは遠隔で相手を直接攻撃できる火魔法を使用する。



「インフェルノ」



見張りの足元に現れる魔法陣。

そしてその魔法陣の威力を予測してか、幻惑に隠れる透明人間が見張りの魔族を魔法陣の外へと押し出した。



「今よ、フィリア」



咄嗟にフィリアは聖水を魔法陣の辺りへ振りかけた。

その後バブルバレットを発射して聖水へと衝突させると辺り一面に水飛沫が広がっていく。



そして水飛沫が消え去っていくと同時に、

目の前に羽の生えた女性の魔族が現れた。

その見た目はまさに、



「え?妖精?」



「クリス、やつはピクシーよ」



魔族の血を引く妖精、ピクシーだ。

魔力も相当高いと伺える。

幸運なことに幻惑魔法で攻撃される前に聖水をかける事ができた。



「な、なんてことなの…

 私の幻惑魔法が…」



ピクシーも相当落ち込んでいる様子だ。

力の弱いピクシーは幻惑魔法を見破られると攻撃の手段がなくなってしまうのだ。

そして追い込まれた誘拐犯のする行動は大体が決まっている。



「動かないで…

 動いたら子供を殺すわよ」



「な!」



ピクシーは牢屋の方向に手を向ける。

どんな魔法を使うか分からないが子供達を人質に脅している。



「ひ、卑怯よ…」



「手段は選んでられないわ…」



見張りの魔族が嫌らしい笑みを浮かべながら近づく。

しかし宮廷魔術師であるフィリアが指を咥えてみているわけがない。

見張りの魔族がフィリアの目前までくると強化格闘術で弾き飛ばした。



「お、お前!

 なら人質は殺してやる!」



クリスはその一瞬の隙を見逃さなかった。

神速スキルでピクシーと牢屋の間に入る。



「これで人質ではなくなったね…」



「っく…」



そしてその瞬間、ピクシーと見張りの魔族の足元に魔法陣が現れる…

その魔法陣はシャルロットのインフェルノだ。



「動かないで!

 動いたら焼き殺すわよ…」




ついに魔族を無力化し子供達の救出に成功した。

子供達の人数はあまりに多いため増援を呼びに戻らなければならない。

しかし火魔法を使いながら戻れるのはシャルロットだけだ。

王女を一人で帰らせるわけにもいかず子供達の見張り番はフィリア一人ですることになった。

思い出の学園とはいえ廃校者に取り残されて、

フィリアは寂しく涙するのだった…

いつもお読み頂き心から感謝致します(T . T)

皆様のおかげで何とか毎日更新継続できております…

明日も10時更新を目指します。

もし気に入って頂けましたらブックマークの登録やいいねをして下さると今後の励みになります。

今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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