第80話 旧魔法学園
クリス達は旧魔法学園へ足を踏み入れるところだ。
今は破壊されてしまった魔法学園。
魔法学園の校舎は八棟の校舎から成り立っており、
その中でも中央に位置する校舎は国内最大級の設備を誇っている。
敵国から攻撃を受けた際にゲイルが撹乱されてもおかしくない程に規模が大きい。
「何かこう見ると切なくなるな〜」
なんと言ってもフィリアにとって青春の場所なのだ。
魔法学園に通い憧れのクレアを目指して学業に明け暮れてきた。
その魔法学園はまさに廃墟と化している。
「フィリアさんにとっては
思い出の場所でしたね…」
「マリアにとってもね…」
そうか、そうだよね。
マリアもここに通っていたのか。
一緒に来れないと思うと少し寂しいな…
でも…
「ちょっと残念だけど、今は新しい学園で
マリアと通えるから俺は嬉しいかな…
それに、お姉様も一緒だしね」
ふと思ったことをありのまま言っただけなのだが、
シャルロットは少しクリスを見つめる。
「ふーん…」
シャルロットはジト目でクリスを見た。
クリスは何か気に障ったかと思って勘違いしている。
「何かありました?」
「な、何でもないわよ!」
シャルロットは、フンッとそっぽを向いて中央校舎の入り口へと一人で歩き出してしまったためクリスもその後を追っていく。
「ちょっと待ってくださいよ〜」
「アンタたち、よくこの廃れた場所で
青春出来るわね…」
一人ぼやきながらも後を追うフィリア。
ちなみに今はバニーではなく宮廷魔術師の装いだ。
そして中央校舎の前に全員がたどり着くとシャルロットが口を開いた。
「これ何階まであるのよ?」
上を見渡すとざっと見た限りでも6階はある。
施設内全てを捜索するとなると三人では荷が重い。
「あの、探知だと結構正確に探せそうです」
するとシャルロットの目が安堵の色に変わる。
ちょうど気が重くて帰りたくなっていたところだ。
「やっぱり探知持ちがいると楽ね…」
「じゃあ、校舎の中に入りますよ!」
そして恐るおそる入り口へと入っていく。
真っ暗な状況ではシャルロットの火魔法が頼りだ。
しかし照らされている範囲は限られ、視界が狭いため三人は密集して歩くしかない。
更に敵襲への警戒もしなければならず音に敏感だ。
そんな中で突風が窓を鳴らし悪戯をしてくる。
「な、何なのよー」
ガタガタと入り口の窓の音が鳴り振り返る。
想像以上に歩く速度は落ちているが周囲を正確に認識しながら進んでいく。
「あの、幽霊とかっていないよね?」
フィリアは心配性だ。
強化格闘術さえあれば大抵の男は一捻りだが、この状況では人よりも霊の類の方が怖いのだ。
そのため一番怯えており最後尾を歩いている。
「ア、アンタね、いる訳ないでしょ」
シャルロットは余裕がない。
ただでさえでも火の魔法で照らす範囲は狭い。
前方への注意に全力を注いでいるのだ。
クリスは交代したいとも思ったが残念ながら火魔法レベル1では火の大きさが異なり更に視界が狭くなってしまう。
そのため灯り担当はシャルロットしかあり得ない。
「なんか、探知の方向が変わった…」
クリスの探知に新たな反応があった…
歩いていく方向よりも下方向に反応している。
「フィリアさん、地下とかあるの?」
フィリアは魔法学園時代の記憶を遡り考える。
頭に指を当てて刺激するが思い出せなかったようだ。
「わ、分からないわ…」
それもそうである。
フィリアが生徒時代には無かった地下設備なのだ。
思い出せなくて当然だが、校舎に入ってから二人の後ろに隠れていた事に後ろめたさを感じていた。
「ごめーん、
お姉さんが後で奢ってあげるから許して」
それは良い考えだなとクリスとシャルロットの二人は、お互いの顔を見て言質を取ったと確認した。
ここを出たらフィリアの奢り確定である。
「マリアも一緒よ!」
「わ、分かったわよ〜」
暗い校舎を歩き続けているが学園を出た後に楽しい食事が待っていると思うと少しやる気が出てきた。
「あっちに階段が見えますよ!」
クリスが指差した方向に地下行きの階段を発見する。
そして足音を立てないよう警戒しながら階段を降りていく。
「この教室だ…」
クリスの探知はB1の教室を指していた。
この扉を開けた先に依頼人の目的の人物ジョニーがいる。
「いよいよだね…」
「ゆっくり近づいて先制攻撃するわよ」
いよいよ旧魔法学園で捕まる生徒達へと近づく。
そして魔族に関与する者が存在する可能性が高い。
よりいっそう気を引き締めて教室へと向かう。
しかしクリス達は、王国騎士団が学園内をしらみ潰しに探しても見つからなかった理由に気付けていなかった…
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