第78話 瞬間
特別調査隊の結成から一夜明けてお姉様から俺たちは常日頃からコミュニケーションが必要だと忠告を受けた。
しかし、まずマリアと仲直りのためにもお姉様が一肌脱ぎお昼ご飯の場を設けてくれたのだ。
今は学園のベンチに三人で座っている。
「驚きなさい!
マリアがお弁当作ってくれたのよ!」
マ、マリアの手作りだと…
いきなり天国とはこのことですか…
「あの、今から逆立ちしてルミナス一周するくらい
嬉しいんですけど…」
「ふふふ、クリスったら」
そして俺はマリアからの笑顔という会心の一撃を喰らい残りHPは僅かだ…
「ほら、早く見せてあげなさいよ!
朝早く作ったんだから」
シャルロットが急かしてお弁当の中身を開ける。
するとそこにはおにぎりと卵焼き、ウィンナー、煮物そしてサラダと丁寧に作り込まれた品が並ぶ。
「え?これ朝一人で作ってくれたの?」
「うん、あまり上手じゃないけどごめんね…」
「マリア、安心しなさい!
不味いって言ったら焼き殺すから」
シャルロットが俺を睨みつける…
あの、出来れば毎日食べたいくらいなので睨まないで下さい。
「頂きます!」
「ど、どうなのよ?」
俺はひとまず大好きな卵焼きを食してみた。
二人とも唾を飲み込みながら俺をじっくりと見つめてくる。
「めっちゃ美味い!」
「ほら、見たことか!」
マリアは、ふぅっとため息を吐いて安心しているが、シャルロットはドヤ顔でマリアの自慢をしている。
「マリアはね、小さい頃から料理が
本当に得意だったんだから!」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
俺はそんな褒めるシャルロットと焦るマリアを見て笑い出してしまう。
「ふふふ、あははは」
「な、なによー」
「いや、ごめん、ごめん
本当に仲が良いんだなってさ」
マリアは少し恥ずかしそうだが、シャルロットは更に胸を張って妹を自慢しだした。
「そりゃあ、妹が聖女なのよ!
自慢したくもなるでしょ!」
「お姉ちゃん、もう恥ずかしくて
死んじゃうよ…」
本当に固い絆で結ばれてるんだなと分かる。
まあうちの家族もそんな感じに見えるのかな。
「まあでも、お姉ちゃんも
カッコ良いところがあるんだよね〜」
「マ、マリア、やめなさい!
その話は!」
今度はシャルロットが顔を赤くする番のようだ…
マリアは急に悪戯好きな小悪魔のような顔を見せる。
俺はこんなマリアを初めて見た。
「ねぇ、その話、もっと聞きたい!」
「でしょ!クリスも聞きたいって!」
ついつい小悪魔なマリアとひたすら恥ずかしがるシャルロットが見たくて流れに身を任せてみる。
「お姉ちゃんがね、
私の騎士になってくれた話!」
「マ、マリア、それ以上は」
まるでトマトのように真っ赤になっているシャルロットを見て、こんな表情もするんだなと驚いた。
「今日はお姉ちゃんが可哀想だから、
また今度ね!」
「ふふふ、そうしてあげましょう」
俺もマリアに乗っかってシャルロットをいじる。
「ア、アンタ、後で覚えておきなさいよ」
「ふふふ、そんなこと言ったらマリアに
聞いちゃうよ…」
マリアに目配せしたらマリアも一瞬驚いたが笑顔で返してくれた。
俺もそんな、とびっきり綺麗な笑顔を返してくれると思ってなくて、つい見惚れてしまう…
どれくらいだろうか…
ほんの僅かな時間二人で見つめ合った…
でもその瞬間、時が止まった気がした…
「もう、アンタ達…
これで仲直り、出来たでしょ…」
「お姉ちゃん……」
俺はシャルロットにやはり敵わない。
マリアの騎士と言っていた。
とてもじゃないが、まだ敵いそうもない…
でもそれは…
「マリア、俺…
マリアのことがもっと知りたい…」
「え?」
「だって、今日だけでも
沢山素敵なマリアが見れた……」
「クリス……」
「だから、もっと…
マリアのことが知りたいんだ…」
きっと相手のことをもっと知ることから始まると思うんだ…
それが相手を理解して寄り添い合うことに繋がると俺は信じたい…
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