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第49話 覚悟

辺り一面に光が溢れていく…

この光と波動、まさにおとぎ話で聞かされた、

初代国王のスキル、覇王。



「クリス……お前、まさか」



クレア自身も宮廷魔術師の一人。

覇王を発現させるために、

王族が何を繰り返してきたかを把握している。

ルミナスの中でも最重要スキル、

覇王を使用している人物が、今まさに目の前にいる…



姿を変えているクリス。

その容姿は気高くも美しい。

ユーリは気付けばクリスに見惚れていた…

そして愛してやまないクレアにどこか似ている気がする。



全身に身体強化を施したクリスは、

全速力で駆けていき、

カートとメデューサの間に割り込む。



「貴様…

 何者だ……」



「言う意味は無いだろう……」



「何!」



「この一撃で、終わらせるからだ…」



クリスの右手に覇王の光が集まっていく。

目前で覇王の固有スキルを発動させる。


【覇王の一撃】


溢れる光の一撃を放つ…

至近距離からの一撃は回避することはできない。

強力な一撃がメデューサに直撃する。



メデューサの悲鳴が山道に響いていく。

その一撃に誰もが驚愕する…



「クリス、お前…」



目の前で覇王スキルを放ったクリスに、

カートは驚愕している…

さらに姿を変えたクリスを見て、

自分は夢でも見ているのかと思ってしまう。



「カートさん、今のうちに回復します…」



カートの身体に手を当て回復魔法をかけるクリス。

回復魔法レベル2、アンチポイズン。

カートの身体から毒の症状が少しずつ消えていく。

毒の効果も強いため、完治までは少し時間がかかる…



「クリス…すまない…」


「カートさん、

 まだ戦いは終わっていないようです…」



光の一撃を喰らって弾き飛ばしたが、

その方面から動き出す気配を感じる。



正面から確実に仕留めたはずだ…

なぜまだ生きているんだ…



クリスは疑問に思いながら、

向かってくる気配の方角を見る。

そこからメデューサが歩いてくる…



「まさか、この波動は覇王かしら…

 私も運が良すぎるわ…

 貴方を倒せば一気に四天王入りね…」



四天王という単語に身体が反応してしまうクリス。

ユーリも同じ反応をしていたようだ。



「魔王軍なのか…」



カートは目の前の敵がそれ程までに大物だとは思わなかった。

それであれば毒の雨という脅威的な魔法も頷ける。

広範囲の毒魔法は、今まで見たこともない。



「私は魔族の中でも最も四天王に近い存在。

 私を前に貴方達こそ生きて帰れるかしら…」



まさか、この山脈で魔王軍と対峙するとは思いもしない…

しかし、このやり取りの中で指を咥えて見ているわけがない人物がいる。

そう、クレアだ。



「私を前に……生きて帰った魔族もいないぞ」



クレアは神速スキルを発動させ、

メデューサを認識できる位置に移動した…

そして光の剣30本を上空へと呼び出していく。



「なに…」



逃れられない光の剣に、

メデューサは跡形もなく消滅する。

そのようにクレアは確信していた…


上空に作り出した光の剣を放つ瞬間に、

メデューサの赤い瞳が怪しく輝く…

すると瞬く間にクレアの右腕が石化してしまう…



「せ、石化だと…」



「奴の目を見るな!

 石化される…」



俺は神話通りの石化攻撃を失念していた…

思い返せば有名な石化攻撃があったはずだ…



クレアは右腕を石化されてもなお光の剣をメデューサへと放っていく。

しかし思うように制御できず動く標的に当たらない。



「ふふふ…

 自慢の攻撃も当たらなければ意味がないわ…」



クレアは苛立っていた…

魔王軍に多くの知り合いが殺されている。

そしてそれはユーリも同じだ。

ユーリを不安にさせる訳にはいかない。

その想いからクレアは焦っていた…



「早く私を倒さないと、

 石化が進行するわよ…」



毒や石化魔法は、時間の経過と共に症状が進行する…



だが、クリスはこのタイミングで、

カートの治療を終える。

毒の効果も完全に消え去った。



「カートさん、ユーリが心配だ。

ユーリの傍で守ってあげてください…」



そうクリスは告げると、

クレアとメデューサが交戦する方へと駆けていく…



「クレアさん!」



「ふふふ、遅いわ…」



メデューサは怪しく笑みを浮かべる。

身体の周りに魔力が集まり、毒魔法を放っていく…



毒水の塊をクレアへと放つ…

石化が進行しているクレアは回避できない。

正面から毒魔法を受けてしまう。



その毒から膝をついてしまうクレア。

クリスは生死に関わる母親の元へ、

持っている身体強化を全て使い駆けつける。



「絶体絶命ね…

 時間がくれば石化が解けなくなる…」



怪しい笑みを浮かべつつ迫る。

クリスはこの状況の中で唯一覆せる方法を思いついている…

回復魔法レベル3、キュア。

マリアが使っていたこの魔法こそ、

石化を治すことができる魔法。



休憩スキルに賭けるしかない…



クレアに手を当てて回復魔法をかけるクリス。

必死に治療を行い毒を和らげる。




「残念だけど…

 もう回復させてあげないわ…」




メデューサがクリスへと毒魔法を放とうとした瞬間に、メデューサの足元が凍りつく…

ユーリの氷魔法によるものだ。



ユーリは、家族を魔王軍に殺されている。

その魔族を前に手足が震えて思うように動かなかった…

しかし、クレアを失ってしまう…

それだけは認めることができない。

気づけば瞳は涙で溢れていた…




「何だと…」



そして次々に地面から氷柱が立ち、

メデューサへと向かっていく…

氷魔法レベル4、コキュートス。


以前にイフリートに放った時よりも、

さらに威力は上がっている…

大切な人を失いたくない、

その想いから力が溢れていく。



「ユーリ…」



クレアはまさか、自分の危機をユーリに救われるとは思っていなかった。

今までは魔女狩りや魔族を前にすると、

手足が震えて呼吸混乱すら起こしていた。

しかし、今は勇敢にも魔族に立ち向かっている。

そのユーリの成長に心から感動している…




この瞬間をクリスは見逃さなかった…

回復魔法にありったけの魔力を注ぎ込む。

魔力を使い尽くしたクリスは、

子供の姿へと戻ってしまう…



「クリス、お前…」



「大丈夫……」




今なら分かる…

俺にまだ、足りていなかった…

皆んなを守り切る、その覚悟が…




俺の全てをかけて、

大切な皆んなを守ってみせる。





そして覚悟を決めたクリス。

クリスの身体に休憩スキルの光が溢れていく…




スキルがレベルアップしました。

回復魔法Lv.2 →回復魔法Lv.3




クリスは、力を得た瞬間に確信する…

そして目の前のクレアに回復魔法をかける。

石化が消え去っていくことにクレアは驚愕する…



「クリス…お前

 石化が…」



クレアは動揺していた…

先程は治せなかった石化さえ治してしまう。

クリスのスキルに驚きを隠せない。





「今は…まだ全てを話せないかもしれない…」





「クリス?」





「でも…今、伝えたいことがある…」




「え?」




クリスは石化が解けたクレアに、

ありったけの想いを伝えていく…





「俺にとって貴方は…

 かけがえのない大切な人…」






「…………」






「必ず、守ってみせる…」






「クリス…」





そしてクリスは、姿を変えて覇王を発動する。

自分の全てをかけて皆んなを守り切る。

覚悟を決めたクリスは、メデューサへと立ち向かっていく…

いつも応援頂き、心から感謝申し上げます。

毎日更新、10時更新を今後も続けられるように精一杯頑張ります…

休日は17時にもう1話公開する日もあるかもしれません。

今後も精一杯頑張りますので、宜しければいいね、ブックマークの登録をして下さると励みになります。

今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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