第45話 決着
禍々しい炎の渦の中心部で、
炎の精霊王イフリートと対峙する。
何人たりとも入る事を許されない炎の牢獄。
結界のようにクリス、イフリートのみを覆っている…
「後悔させてやるよ…
イフリート…」
口から自然と出た言葉だ…
こんな規格外の相手であれば一刻も早く逃げ出そうと考えるはずが、全く恐怖を感じない…
それどころか俺自身が戦いたいと願っている…
クリスは水魔法、バブルバレットを使用する。
魔力は更に強まっており、弾丸の速度も速くなっている…
「なに…」
先程とのギャップに驚いたようだ。
遠距離からの牽制を行った後、クリスはイフリートに向かって一気に加速する。
イフリートの大きな身体に対して、
クリスはスピードという点で大きく上回る。
目前まで迫った後に、セシルすら退けた剣撃を繰り出していく…
【覇王の一撃】
至近距離からの一撃にイフリートは螺旋の炎で、
防御のタイミングを合わせていく…
覇王の一撃とイフリートの炎が衝突し螺旋の炎が消滅する…
絶対防御が消え去る瞬間、
この時をクリスは待っていた…
ありったけの魔力を流し込んで、
バブルバレットを連射する…
至近距離から弱点を突いた攻撃。
流石のイフリートも深傷を負う…
弱っているところを強化格闘術で蹴り飛ばす。
弾き飛んでいくイフリート…
一方的にクリスが押していく。
「なるほど…面白い…」
イフリートはクリスの力を認める…
これは過去に合間見えた覇王持ち同様、
自分を超えていく者だと確信する…
イフリートはここで本気を出すと決心した。
炎の精霊王の名にかけて、このままでは終われない…
イフリートの雄叫びが森に響き渡り、
そして炎の出力が上がっていく…
制限していた力を全て解放する。
まさに精霊王の本気。
イフリートの外見も変化していく…
先程は綺麗な彫刻のような肉体だったが、
所々で骨が飛び出て更に硬化し身体が変化する。
そして筋肉も一回り大きくなった。
「いくぞ…まだ楽しませてくれよ…」
イフリートが助走をして加速する。
すると先程はスピードで利のあったクリスだが、イフリートに先手を取られてしまう。
イフリートの回し蹴りがクリスを弾き飛ばす…
「消し飛べ」
強力な火柱がクリスを襲う…
無詠唱で繰り出されるインフェルノ。
覚醒しているイフリートの魔力は跳ね上がっており、
このインフェルノを喰らって無事では済まないだろう…
炎が消えた先には、クリスの姿がない…
イフリートは一瞬だがクリスを見失う。
「捕まえたぞ…」
クリスはイフリートを背後から掴む。
身体強化系のスキルを最大まで注いで移動に費やした。
クリスはこの決戦の中、新しい戦い方を試みたかった。魔力をイフリートへ流し込んでいく…
イフリートは急に自分へと流れてくる魔力に困惑する…
覇王持ちの魔力のため、強力な魔力には違いない。
しかし、何故敵である自分に魔力を送り込むのか全く理解できない。
そして、魔力を流し込んだ事でイフリートを囲む螺旋の炎が復活していく…
クリスは先ほどと同様、身体強化を全力でかけて高速移動で距離を取る。
イフリートから距離を取ったクリス。
ほとんどの魔力を使い果たし、元の姿へと戻ってしまう…
「ふははは…血迷ったかと思えば力を使い果たしたか…」
イフリートは再度、インフェルノをクリスに放つ…
これでトドメを刺すつもりだ。
その瞬間、クリスの身体から休憩スキルの光が溢れる…
「やはりな…
正直ずるいと思ってるよ…」
クリスの足元に強烈な火柱が発生するが、
今度は回避せずにそのまま立ち尽くす…
覚醒したイフリートのインフェルノをまともに喰らったのだ。
イフリートは勝利を確信した。
この直撃は必ず相手を死に至らしめたと。
炎が消えゆく中で、少しずつ…
少しずつだがクリスの姿が見えてくる…
そして、イフリートは自らの目を疑う…
「ま、まさか…その力は…」
インフェルノの炎が消えゆく中で、
姿を大人へと変えているクリス…
そして更にクリスの周りを螺旋状に回転していく炎が見える…
「そう……お前の絶対防御だよ…」
クリスが何の意味もなく魔力を、
イフリートに送っていたわけではない…
クリスの休憩スキルの中で能力が一つある。
【相手のスキルを取得する】
条件は相手に魔力を送り、
相手が魔力消費系スキル使うと取得できる。
それはつまり、戦闘時においても例外ではない…
クリスはそれをイフリート相手にやってのけたのだ。
「貴様、魔力を送ってきたのは、
そういうことか…」
クリスは勝利を確信する笑みを浮かべる。
これで相手の炎を完全に防ぐ手段を得たのだ。
「これでお前だけの固有スキルでは無くなった…」
イフリートは、急転してピンチに陥っている…
現状では、螺旋の炎を打ち破る手は一つのみ。
イフリートの固有スキル【地獄の業火】だ。
しかし、それを放っても高速で移動するクリスには当たらないだろう。
そして自らが放つ炎は、螺旋の炎で全て防がれてしまう…
格闘術で戦う事もできるが、螺旋の炎で防御された後に覇王の一撃が決まってしまう…
「まさか、我がスキルに追い込まれるとはな…」
そして、クリスは覇王の一撃を繰り出す。
更にイフリートに急接近していく…
目前に迫ったところで、再度覇王の一撃を放つ。
そして、イフリートがその追撃を螺旋の炎で守った瞬間、防御がガラ空きになってしまう…
【地獄の業火…】
クリスはイフリートの固有スキル、
地獄の業火をイフリートに炸裂させる…
途轍もない爆音と衝撃がイフリートを襲う…
イフリートは目を見開き、まさかこの瞬間に大技を決められるとは思いもしなかった…
地獄の業火の強力な一撃は、炎の精霊王であっても無事では済まない。
無防備で受けたため倒れ込んでしまう…
覇王の一撃との連続攻撃がクリスを勝利へと導いた…
「我の完敗だ…」
クリスの周りに舞う炎も消えていく…
覇王は絶対的存在。
王と呼べる存在は二人は要らない。
そのように言っているかのように覇王スキルは、
王と名のつくものを喰らっていく…
そしてクリスは姿を元に戻す…
周りの牢獄の炎が少しずつ弱まっていく。
そろそろクレアとユーリが迎えにきてくれるだろう。
きっとイフリートに勝ったなんて言ったら、
どんな顔をするだろうか…
今からその二人の驚く顔を想像すると、
何だか笑ってしまうクリスなのだった…
いつも応援頂き、心から感謝申し上げます。
毎日更新、10時更新を今後も続けられるように精一杯頑張ります…
休日は17時にもう1話公開する日もあるかもしれません。
今後も精一杯頑張りますので、宜しければいいね、ブックマークの登録をして下さると励みになります。
今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m




