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第44話 目覚める力

魔女狩りと呼ばれる一味を倒し、森を進んでいる…

ユーリの精神状態も落ち着き、ようやく前進できるようになったのだ。



魔女狩りの目的は、何なんだ?

ユーリの隣には母上がいる…

母上がいる以上、戦力を揃えなければ自殺行為だ…

揺さぶり程度で、10人の要員を投入してくるとしたら、かなり恐ろしい組織だ…




「まあ!安心しなさい…この私がいるのよ。

 どんな敵でも一瞬で塵にしてやるわ」

 



二人とも不安が顔に出ていたのか、

俺とユーリを元気づけようと母上が言う。

だが、本当に塵にしてしまうと感じる母上の実力は、やはり規格外だ…



「ユーリ!ここを出たら美味いもの食おうぜ…

 クレアさんの奢りで…」



「な、何!あねごの奢り!

 何と幸せを感じる響き」



「お、おい」



いきなり元気を出すユーリ。

やはりクリスはアリスの兄だけに、

こんな時にどんな言葉を選べば良いのか、

経験で分かっているのだ…



「ここを出たら、山脈の前に確か小さな村があったような…」



ユーリが記憶を頼りに村を思い出す。

そこの名産で頭がいっぱいだ。



「わーかった!その村まで着いたら、

 何でも奢ってやる!」



「うお!太っ腹…」



「あねご、一生付いていきやす…」




すっかりいつもの調子を取り戻したユーリ!

奢ってくれると分かってから、目をキラキラさせている…

クリスもクレアをいじるくらいに距離を縮めることが出来て、内心喜んでいる…





そして一同が前向きに歩き出して1時間。

モンスターも出現したが難なく撃退できた。

ホーンラビットやゴブリン、ワイルドボアと出現したが、クリスとユーリだけでも対処できる相手ばかりだった。




しかし、クリスの覇王の波動を、

ある一定の強者であれば感じることができる。

それは賢者も例外ではなかった。

出会った瞬間に覇王持ちと認識したのだ。

そしてその強者は、ここにも存在する。

何しろここは、精霊の森なのだ。





「覇王持ちとは、何年ぶりだろう…

 しかも理を覆す者…」





「実力を確かめてやる…

 今すぐに向かおうじゃないか……」




そして、その間違いなく圧倒的な存在である強者は、

猛スピードでクリス達に接近していく…





ようやく一同も落ち着き始めていたところだが、

クレアは途轍もない魔力の波動を感知する。




「おい!お前たち…

 今すぐに私の後ろに隠れろ…」



「何が…クレアさん…」



クレアは久しぶりの強者の襲来に身震いする。

この感じ…数年前に対峙した龍と互角、

もしくはそれ以上…




「私が前衛でいく…

 お前たちは私を援護しろ」



「あねご…何が来るのさ?」




俺も、まさかここで出会ってしまうとは思ってもいなかった…

精霊の中でも圧倒的な存在である精霊王。

精霊王の中でも炎を操るのは唯一その者だけだ。

そして、その名は…





「精霊王イフリート…」





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




急激な速度で接近してくるイフリート。

あっという間にクリスたちの前に辿り着く。

容姿は獅子の顔をしており、身体は筋肉質で彫刻のような肉体をしている。




「ほう…お前が理を覆すものか…

 意外と小さいな…」




な、何なんだ…

理を覆す者?




「意味が分からないようだな…

 まあ良い…我が炎、その身に刻め…」



イフリートの周りに螺旋状の炎が現れる…

シャルロットが使っていた絶対防御の炎だ。



「燃え尽きろ…」



イフリートが声を発すると共に、

俺たち三人の足元に魔法陣が生まれる…



そして強烈な火柱を発生させる…



全員、何とか回避したが、

クリスとユーリは間一髪での回避だった…



「インフェルノ…だと」



クレアはインフェルノを高速で三発打ってきたイフリートの力に唖然としている。

ルミナスでも、過去に使える者は一人しかいなかった…

それを難なく挨拶代わりにやってのけだのだ。




「全員回避したか…

 どこまで続くかな…」



更にイフリートは、クリスの前に急接近する。

目前で殴りかかってくる…



「クリス!」



意外にも一番最初に反応したのは、ユーリだった…

ユーリの氷魔法による壁が、クリスとイフリートの間に現れる。

イフリートの拳による攻撃を氷の壁で防いでいく。



「良くやった、ユーリ!」



ユーリには間違いなく魔法の才能がある。

唯一の固有魔法である氷魔法に加えて、

卓越した魔力制御、戦闘においては意外と冷静な状況判断。

魔女狩り絡みの件は置いておくと、

間違いなく逸材なのだ…



クリスは反撃のチャンスを狙っていた。

手に魔力を溜め込んでいる。

溜めた魔力で水の弾丸を何発も作る。

訓練中にフィリアから教えてもらった、

水魔法レベル3バブルバレッド…



しかしイフリートの螺旋状の炎により全て防がれてしまう…

高熱にあたった弾丸は、いとも簡単に消滅してしまう。




「っく…」



「ほう…水魔法を使うとはな…

 だが我の炎に、その程度の威力では無意味」




イフリートの周りに炎のオーラが溢れていく…

真紅の色が徐々に青色へと変化する。



「なんて魔力の密度なんだ…」



「ユーリ…お前は先ほどの氷の壁をいつでも発動できるように準備しておけ!」




クレアの危機察知能力は高い。

間違いなく、この密度の魔力だ。

恐らくこれから高位の魔法が放たれる…

ユーリに先ほどの氷の壁で防ぐように指示する。




「この魔法まで防げるかな…」




イフリートを纏う青い炎の魔力が魔法へ変換される。

炎魔法レベル7、火炎流。



全てを焼き尽くす炎の竜巻がクリスを襲う…

狙いは最初からクリスなのだ。



「クリスが狙われる…」



「クリス…」



ユーリは目の前でクリスを失ってしまう事を想像してしまう…

また亡くなった家族のように、

自分の傍から居なくなってしまう…

せっかく出来た初めての友人を失う。

絶対に失いたくない強い感情が、

ユーリに眠っている力を目覚めさせる…




「私には……


 たった一人しかいない…」




目に涙を溜めているが、先程とは違う。

ユーリの目には戦う意志がある。



「コキュートス」




放たれた魔法から先ほどの氷の壁よりも、

密度のある氷の柱が連続で地面に立っていく。

その氷の柱が炎の竜巻に向かう…



「ほう…素晴らしい魔法だが、

 まだ練度が足りないな…」



氷の柱を少しずつ飲み込んでいく炎の竜巻…

このままではクリスまで届いてしまう。



「私を…舐めるなよ…」



クレアの身体の周りにも光のオーラが溢れ出す。

そして上空に巨大な光の剣を出現させる…



クリスは、母親の圧倒的な力に驚愕する。

小剣100本ならまだしも、巨大な光の剣を出してしまったことに驚きを隠せない。



その巨大な光の剣を炎の竜巻へとぶつけていく。

その凄まじい衝撃と破壊力により竜巻は消滅する…



イフリートはこの場に居合わせた強者達に高揚している。

精霊の森は、別名精霊術師の訓練場とも呼ばれる。

普段は新人の精霊術師しか足を踏み入れない。

しかし、やっと待ちに待った強者達が現れたのだ…



「素晴らしいぞ…其方達…」



巨大な光の剣を出してみせたクレア、

固有魔法で強力な魔法を覚醒させたユーリ、

この場に居合わせる者達の力には満足している。

しかし、今度は目の前にいる覇王の力を体感したい…

更に覇王への興味が強まっていく…





「そうか、ならば邪魔者が入らぬようにしてやろう…」






再度改めてイフリートの周りに青い炎のオーラが現れる。

今までよりも更に強さを増していく…





「無限牢獄」





そしてその魔力は禍々しい炎となり、

クリスとイフリートを囲っていく…

何人たりとも入れない炎の牢獄…

結界のようにクリスとイフリートを囲んでおり、中がどうなっているのか分からない…





「クリス!」





クレアは大声で叫ぶが燃え盛る炎の音に、

その声はかき消されてしまう…






「やってくれたな…

 イフリート……」





目の前の精霊王を前にして全く恐怖していない…

クリスは炎の牢獄に閉じ込められていても、

何故か自分自身が戦いたいと願っている…

そう心が、覇王が突き動かしている…






「見せてみろ…

 お前の本当の力を…」






イフリートが声を発すると同時に、

クリスの姿が変化する…

そして覇王を発動していく…

目の前の精霊王へと共鳴するかのように、

クリスの覇王が進化する…





スキルがレベルアップしました。

覇王Lv.1 → 覇王Lv.2









「覇王を持つ者よ…

 全力でかかって来い……」









「後悔させてやるよ…

 イフリート……」








そして、更なる覇王の力に目覚めたクリスと

精霊王イフリートの戦いが幕を開ける…

いつも応援頂き、心から感謝申し上げます。

毎日更新、10時更新を今後も続けられるように精一杯頑張ります…

休日は17時にもう1話公開する日もあるかもしれません。

今後も精一杯頑張りますので、宜しければいいね、ブックマークの登録をして下さると励みになります。

今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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