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第43話 友達

翌日になり港町ミゲルの入り口まで歩く。

待ち合わせの時間だ。

門にはクレア、ユーリと既に到着している。

さてこれからどんな旅になるのだろうか…

母上との旅を今は心ゆくまで楽しもう。



「おはよう、クリス!」



「おっすー、クリス!」



「お二人とも、おはようございます」




これから、ミゲルを出て道路を歩く…

この先は森へと続く。

でも、なぜ…




「あの、ところで…

 何で海から行かないのでしょうか?」



「あ〜クリスは知らなかったのか…

 1週間前にクラーケンが出てね。

 ミゲルの船は殆ど壊滅…」



「え……」



クラーケンなんているの?

海で遭遇したら一瞬で沈没じゃないか…

前回は遭遇しなくて本当に良かった…



「だから陸路からしか道はないの…」



「そういうことですか…」



陸路だと、どんな経路なんだろう。

俺達だと日数は、どれくらいなのかな。



「ちなみにどう言うルートで行くんですか?」



「そうね…

 まずこの精霊の森を抜けて、

 ジルコット山脈、更に迷いの森を抜けた先に

 エルフの里があるわ。」



なるほど…

精霊の森→ジルコット山脈→迷いの森

この3つが主なルートになるわけね…



「あの…お二人はどこが目的地なのですか?」



「………」



急に黙ってしまうユーリ。

クレアも少し考える素振りを見せると、

口を開く。



「そうね…今は秘密…

 もうちょっとしたら、教えてあげる…」



「は、はい…」



「………」



何か話したくないことでもあるのだろうか…

一旦は聞かないほうが良さそうだ…





しばらくすると森の奥からモンスターが現れる。

ワイルドボアが2匹だ…



「ちょうど良い、クリス、ユーリ、

 お前達で戦ってみろ…」



モンスターが現れたことで戦闘開始になる…

俺とユーリで一体ずつ相手をして闘う…



「さて、クリスのスキルと戦い方を見せてもらうぞ」



ワイルドボア一体が俺に突進してくる。

俺は強化格闘術でいなしていく、

距離ができると同時に足に向けて水魔法の弾丸を二発飛ばす。

足の自由を奪った所で、強化格闘術の蹴りをお見舞いする…



「まあ…こんな感じですね…

 水魔法と強化格闘術です」



「クリス、やるじゃないか!

 最小限の動きでまとめているし、

 誰かに師事しているのが分かる!」



「まぁ、そんなところです…」



貴方の弟子に師事してるんだよ…

と言いたい…

でも、この時代のフィリアはまだ小さな子供だろうけど…



「ユーリも!ユーリも!」



次はユーリの番だ。

俺が先ほどの猪を倒したせいで怒っている。

そのままユーリに向けて突進を繰り出してきた。



「アイシクル!」



ユーリの魔力により、地面が凍る。

突進を繰り出してきたワイルドボアはそのまま滑ってしまい、止まることができない。

木に正面衝突してしまう。


その後、ユーリは氷の槍を呼び出して、

ワイルドボアにとどめを刺していく…



「おお!凄い…」


氷魔法なんて初めて見た。

簡単に槍の形状に変えたのを見ると、

魔力制御のレベルの高さが窺える…



「ユーリ!天才!天才!」



物凄く嬉しそうにドヤ顔をしている…



「ふふふ!見たか!あねご…」



「まあ…あんたにしては効率的に出来たじゃない…」



「あ、あ…あねごが誉めた……」



クレアが珍しく誉めてくれた事が、

予想外だったのか驚いているようだ…




「わ、私だって褒めるわよ…」




クレアは心外ね…といった表情をしている。

だが顔を少し赤くしている。




「2人とも良くやったわ…

 ワイルドボアも効率的に狩れてるわ。

 2人とも弱点を突いたのが素晴らしいわ」





そして、2人の力の確認を終えると共に、

クレアの空気が一瞬変わる…





「クリス、気づいてる?」



「はい…後方から5人尾行してきています…」



クレアは町からの尾行に気づいていたため、

極力戦闘には参加せずに後方への警戒を強めていた…




「でも、前からも5人歩いてきているようね…」



「…………」



人間が現れるとユーリの様子が少し硬くなる。

微妙な変化にクリスは気づく。




「あのー、人探しをしてるんですけど…」



「誰を探している?

 私たちと面識はないようだが…」




装い自体は、普通の村人に見える。

だが、不気味な笑みと口調から怪しさを感じる。




「俺たちが探しているのは、魔女なんですよ…」




「ま、魔女………」



魔女という単語を聞いた途端に動揺するユーリ。

まるで発作のように身体を震わせる。

そして立つのも苦しくなり、

身体を抑えながらうずくまってしまう…




「ユーリ!聞くな!」



クレアは大声を張り上げる…

しかし発作に苦しむユーリに届かない…




「私のユーリに酷いことをするなら、

 ただで済まないぞ…」



「俺たちはな…

 魔女狩りだよ…」



魔女狩りという単語に、更に震えるユーリ。

そしてクレアは怒りに震えている…



「これ以上…

 その下衆な声を聞かせるな!」




クレアは光の剣を20本呼び出し、話しかけてきた前方の者たちを一撃で全滅させる…



「ふははは…素晴らしい…」



「おまえら…」



クリスは、ユーリに駆け寄り背中をさする…

出会ってから妹のように接してきた、

ユーリの苦しむ姿を放っておけない…



「クリス……わたしは…」



「ユーリ!大丈夫だ…

 俺はここにいる…」



ユーリに友達は1人もいない。

家族すら親しいものは既に亡くなっている。

生まれてこの方一人で生きていかざるを得なくなった。

そこを任務で旅をしていたクレアに拾われたのだ。

そして唯一だが友達と呼べる相手を見つけた。

それが……クリスなのだ。



「クリス…わたしを、

 きらいにならないで…」



震えながら涙を流す…

やっと友達になれるかと思った、

クリスが離れてしまう事にユーリは耐えられない…



「あははは…

 魔女に友達か…

 出来るわけないだろ…

 お前に流れてるんだから…


 魔女の血がな…」




「いや……ク…リス、

 きか…ないで…」




魔女の血が流れている、という事実に、

ユーリは生まれてから苦しんできた…

そしてせっかく親しくなれる者に1番聞かれたくなかった事実。



【魔女】という単語が何なのか、クリスには分からない…

だが、差別される存在であったとしても、

ユーリが苦しむ必要はないはずだ…



「お前ら、言ったはずだ…

 これ以上……

 その汚らしい声を聞かせるな」



そして更にクレアは光の剣を20本呼び出して、

後方の者達へと向けて飛ばしていく…

一瞬にして全滅させる…



「ユーリ!もう大丈夫だ…

 やつらは全滅させた…」



クレアはユーリを抱きしめる…

そして抱きしめた腕に力をこめて、

言葉を告げていく…



「ユーリ…お前は既に私の家族だ…

 だから、必ず見捨てたりなんかしない…」



ユーリは、涙を流しながらクレアへと抱きつく。

無言だがゆっくりとクレアの声に頷いていく…

その姿を見て、俺はユーリの事を全く知らなかったと痛感する…



ユーリは普段ふざけてクレアに突っかかっていた。

それは、一緒にいてくれるクレアへの愛情表現だった。

そしてクレアもそれを理解していため、

いつも本気では怒らずに優しい表情を浮かべながら接してきていたのだ。





「ユーリ…

 俺のことも忘れるなよ…」





魔女がどんな意味なのか俺には分からない。

それに今はまだ聞くべきではない…






「……クリス?」





他の誰が何と言おうと関係ない…

俺が誰と友達になろうと文句は言わせない…








「もう既に……俺たちは友達だよ…」





その言葉を聞いた、ユーリは涙は流していても、

今までで1番綺麗な笑顔をしていた…

いつも応援頂き、心から感謝申し上げます。

毎日更新、10時更新を今後も続けられるように精一杯頑張ります…

休日は17時にもう1話公開する日もあるかもしれません。

今後も精一杯頑張りますので、宜しければいいね、ブックマークの登録をして下さると励みになります。

今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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