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第41話 出会い

潮風の匂いがする…

波の音、カモメの鳴き声。

手には砂の感触がある。

ここは………海だ。



どれくらい経っているのだろうか。

そして無事に過去へと時を遡ったのだろうか…






「フィリア…」





強烈な別れだったため、俺の脳裏にフィリアの最後の笑顔が焼き付いて離れない。







「クリス君……

 貴方のこと、愛しています…」







フィリアとの口づけの感触を思い出す…

気づけば頬を涙が落ちる。

今までは気づかなかったフィリアへの想いで胸が苦しくなる。

締め付けられるほどの痛みを堪える。




そして最後にフィリアが微かに言っていた言葉も思い出す…




「クリス君…

 必ず帰ってきて…

 そして………」





「貴方に…もう一度、会いたい」






フィリアは、俺にそう告げて消えていった…





「フィリア…ずるいよ…

 そんな風に言われたら…」





「俺だって……

 会いたくなるに決まってるじゃないか…」





心にフィリアの笑顔と言葉が深く刻まれる…

フィリアの存在がこれ程に大きくなっていた事に気付かなかった…





「俺も…次に会った時に伝えよう…

 フィリア、覚悟しておけよ…」





塞いでいた気持ちも少しずつ落ち着いてきた…

幸い、まだ二人とも救える…

全ては俺次第ってわけか…








「10年前なんだよな?」




「ここはどこだ?」





辺り一面に広がる砂浜、海。

俺は行ったことが人生で一度きりしかないが、

確かここは……





「ここはミゲルか?」





港町ミゲル。

公爵達と出会った場所であり、ここから船でエルフの里まで向かう事になった。




ひとまず町に向かおう…

歩き始めると、一人の少女が倒れていることに気づく…





「え?」





大丈夫か?

死んでないよね?




「おい!大丈夫か?」




「っう………」




脈拍はある…

毒にもかかってないし、魔力も枯渇してなさそうだ…




「おい!」





「お………」






「ん?」





「…………お、お腹すいた…」





「はい?」




少女は青の髪をしている。

そして年齢は同じくらいか?

目は彫りも深く、10代前半にしては顔が整っている。

間違いなく美形なのだが、それも少女の耳を見ると納得する。

そう……この耳は間違いなくエルフだ。

だが何故ミゲルから少し離れた浜辺に?




「腹減ってるなら飯食わしてやろうか?」




「ほ、ほんと〜!」




目から星が出るのではないかと思うくらいに目を輝かせながら飛び上がる。

それくらいに飯の単語に食いついた。




「いや、持ってるお金で足りたらね。」



「ゴブリンの指でもオークの足でも、

 何でも良いので…食べさせてください…」



「いきなり食欲無くなりそうな事を言わないで…」




エルフの髪色で青は珍しいな…

大体緑か金色、茶髪だった気がする。



「名前は何ていうの?」




「私、ユーリ!」



「俺はクリスだ!」



この出会いが未来に大きな影響を及ぼす。

歴史を変えてしまうほどの出会いだとは全く思わないだろう…




「クリス!早く飯!」



「はいはい!」



ちょうどミゲルまで行きたかったから、

このまま飯行くか…





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




港町ミゲル…

以前来た時はすぐに町を出てしまったな。

公爵の家に挨拶に行っただけだから、

じっくり町を見学できなかった。

10年前だけど人は多い。

港町だから栄えてるようだ。



「クリス、クリス!

 串焼きにしよう!」



「おお!海鮮串焼きか!」



海の幸をそのまま塩で食べる串焼き。

魚、イカ、タコ、様々だ。

これは美味そうだ。

食材の良さを引き出すように、

余計な味付けは、しないようだ。



「クリス!早く!早く!」



まるでリズムを取るように急かす。

小動物のように可愛らしい。

同い年くらいだろうが背は低い方だろう。




「おっちゃん、串焼き2本!」



「はいよ!」



硬貨は10年前と共通で助かった…

ひとまず食いっぱぐれないで済みそうだ。



「はぁ〜〜」



串焼きを渡そうとすると、

目の前でハートマークが出そうな顔をしたユーリが見ている。

串焼きをだが。



「涎垂らすなよ」



俺が笑いながら言うと、

ユーリはじゅるっと涎を拭く。



「早く!早く!早く!」



もう我慢の限界のようだ…

早く食べさせてあげよう。

浜辺でもだいぶ餓死寸前だったようだし…



「はい!ゆっくり噛んで食えよ…」



「がぶっ」



本当に美味しそうに食べるな…

食べっぷりを見てるだけで幸せになる。

結婚の理由にそんなことを言ってる人がいると聞いたことがある。

それは目の前のユーリの食べっぷりを見ると、

あながち嘘でもないと思ってしまう。



「美味しい〜」



目をキラキラ輝かせながら食べている。

今度は目から沢山の星がキラキラ出てきそうな勢いだ。



「良かったな」



こいつの笑顔を見てると、

何か優しい気持ちになる…




「ところで、お前どこから来たんだ?

 誰か知り合いいるのか?」




「あ…」




何か思い出したような顔をしたと思うと、

次には思い出した事に唖然としている。

油断したせいか最後の一口を地面に落としてしまう…



「は〜〜〜」



そして今度は、この世の終わりの顔をしている…




「はははは…

 ほら!やるよ!」




「へーーー!

 クリスの良いの?」




「いいよ、食え!」




機嫌を良くしたユーリはまた食べ始める…

クリスの食べかけでも気にせず、

嬉し過ぎて目を輝かせている。




よほどお腹すいてたのかな…

ん?さっき何か思い出したみたいだけど…

大丈夫なのかな?




「さて、そろそろ食べ終わった事だし、

 行くかな!」




「クリス!串焼きおいしかった!」






そして、そろそろ俺はユーリと別れようと思っていた最中、丁度ユーリを探していた人物が現れる…





「あ〜〜!やっと見つけた!」




「やべ!あねごだ!」




「あねご言うなって言ってんだろ!」




そう言うと、その女性はげんこつをユーリの上に落とす。

ごちんと音がした。

とても痛そうにしているユーリを見てると、

こちらも痛みを感じるようだ。




「あ〜イタタタ…

 酷いよ〜暴力女…」




「あ〜そんなこと言ったら夕飯抜き!」




「うそうそ!

 あねごは超美人で、超優しい!」




夕飯抜きと言われた途端に、急にご機嫌取りを始めるユーリ。分かりやすいくらいに現金である。






「ところであんた…

 どっかで私と会ったことある?」







「……………」








「ねえ…、聞いてるの?」







「……………」







「ねえ………


 …………何で…

 

 何で、あんた泣いてるのよ?」








「………母上」








そうだ…この出会いの可能性を、

何故俺は考えていなかったのだろう…

10年前に過去を遡るのであれば…

出会う可能性だってあったはずだ。




目の前にいる女性は、

俺が2歳の時に亡くなった…

世界で俺にとって一人しかいない母親。




クレア・レガードだ…

いつも応援してくださり本当にありがとうございますm(_ _)m

基本は毎日更新、明日も10時更新を目指します。

休日は17時にもう1話更新するかもです。

もし宜しければブックマークの登録といいねをしてくださると、執筆のエネルギーになります。

今後とも宜しくお願い致しますm(__)m

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