第04話 レガード家
幼く可愛い声が聞こえてくる。
先程は頭に響いたが今は正確に聞き取れた。
「おはようございます
クリスお兄様…」
「おはよう、アリス。
でも今は夜みたいだけどな」
窓の外は既に暗い。
だいぶ寝たおかげで頭の痛みも取れた。
「お兄様、頭は痛みますか?」
「大丈夫だよ、アリス。
俺はレガード家の長男だぞ!
父上にも厳しく鍛えられてるんだ…」
「お兄様、良かった…
良かったよ〜」
号泣する妹、鼻水が出ている…
双子なのでかなりの美少女だと思うが、
とても酷い顔をしている。
こんな顔を見たら騎士学園の生徒も引くだろう。
俺もアリスも騎士学園小等部に通っている。
そして明後日のスキル鑑定を受けて騎士学園と魔法学園どちらに進むか決まる。
我らレガード家も例外ではない。
「アリス、そういえば夕食は食べたのか?」
「まだです!お兄様より先に食べるなど、
わたしには出来ません!」
はーっとため息が出そうになる。
父上からまた怒られるな…
「アリス、待っていてくれてありがとう。
父上はどこにいるの?」
「父上はお食事中です」
少し立ちくらみがするが、
父上のところに行かねばならない。
夕食もしっかりと食べよう…
「お、お兄様…
急に立ち上がるとお身体が…」
「アリス…
お腹空いて今にも倒れそうなんだ!
飯を食いにいくぞ」
「お待ちください、お兄様!」
レガードの屋敷は広い。
男爵家だが客間も合わせて多すぎる程だ。
それでも維持が出来ているのは、
レガード家が剣聖を出した家系だからだ。
それだけに剣聖の地位は認められている。
ルミナス王国に剣聖は1人だけしかいない。
今の剣聖は女性で目にも止まらぬ高速剣の使い手と聞く。
会ったことは無いが風の噂で聞いたのだ。
ルミナス王国は近隣国に比べて人口が多く、
騎士学園と魔法学園の教育レベルは他国に比べて高い。
それだけに親は子を入学させようと躍起になる。
我が家は剣聖の家系のため実力で小等部に入れた。
「父上、失礼します…」
居間のドアを開き、父親に挨拶する。
やはり夕食を食べていたようだ。
「ようやく起きたか…」
髪は白髪のオールバック、黒目である。
発せられる空気から威厳が感じられる。
「先程はお見苦しい姿を見せてしまい、
申し訳ございません…」
「当たり前だ…
妹に負ける次期当主がいるか…
情けなくて呆れるわ…」
父上の厳しい視線が突き刺さる。
そして妹に負けて、悔しくて堪らない…
「しっかりと体力を戻しておけ、
明日の朝は最後の追い込みだ」
夕食を食べ終えた父親は足早に席を立つ。
そしてテーブルに俺とアリスの食事が運ばれた。
アリスも影で俺と父上の様子を窺っていたようだ。
「アリス!そこに隠れてないで飯を食うぞ」
さっきは泣いていたのも、
忘れるくらいに満面の笑顔だ。
2人で夕飯を食べながら明日の訓練のことや騎士学園のクラスメイトのことを話していた。
そして先程のアリスの酷い泣き顔を揶揄いながら、いつも通りの楽しい夕食を過ごした。
俺に母親はいない。
母上は小さい頃に亡くなり、
銀髪と赤目は母上から引き継いだと聞く。
とても美しい人だったとメイド長が話していた。
母上が生きていたら、きっと楽しかったのだろう。
そして食事を終えた俺は、自室に戻った。
今はベッドに腰掛けリーナに回復魔法をかけて貰っている。
「クリス様、痛みは感じませんか?」
「ああ、大分取れたよ…
身体も回復した気がする」
リーナは基本優しいが、今日は特に優しい…
心配かけたということかな。
「今日は早くお休みください…」
「ああ…
明日に備えてゆっくり休むよ!」
今日は回復魔法のおかげで深い眠りにつけた。
そして俺は思いもしなかった…
明日起こるトラブルを…