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第19話 獣王剣

私は白狼族のベル。

白狼族の中でも特別に体が小さい。

剣の修行は人一倍してきたけれど、

同世代の子にはいつも力負けしてしまう…

儀式の日に私のスキルが開眼すると、

最初、里の皆んなは喜んでくれたが発動しない事を非難した…


私の親は既に二人とも亡くなっている。

母親は幼い時、盗賊によって殺され父親はその母を守って死んでしまった…

ずっと独りだったがそんな私にも大切な親友がいる…

同い年のサーシャだ…





「サーシャ…無事でいて…」





里に着くとそれは無惨な光景だった…

民家には火が放たれており、

周囲には男性の戦士と抵抗した女性の死体がある…





「サーシャどこなの……」




不安で仕方なく足が震える…

外の森から見つからないように回り込み、

物置小屋の影に身を隠す。

中央に設営された牢屋に女性が収容されているのが僅かだが見える。

残りの白狼族をおびき出すための罠かもしれない…






「あ!サーシャ!みんな…」





里の子供達、そして女性陣だ…

サーシャも見つけた…

怪我をして横になっている者もいる。

お腹を痛めつけられたのだろう…




許せない…

なんて事を…

皆んなを助けないと…




助けに行こうと走り出し始めた途端に、

偶然にも背後を巡回していた盗賊の一人に見つかり拘束されてしまう。




「こんな所にもいたのか!」




ベルの身体は小さく、一度拘束されてしまうとその非力な腕力では太刀打ちできない。




「へへへ…これはラッキーだな…

まだ他のやつには見つかってない…

おら!こっちの陰で楽しもうぜ…」



森の奥まで連れてこられベルの肌着の隙間に手を伸ばす…






いやだ…

こんな所で捕まって陵辱されるなんて…

こんな風にされるために生まれてきたわけじゃない…






「いや……やめて…」



「すぐに済むから大人しくしろよ…」





必死にもがき隠し持っていたナイフを相手の腕に刺した。





「あ゙あ゙〜いてぇ」




男が疼くまる瞬間に駆け足で森の奥に逃げる…

急いで少しでも遠くに…

ひたすらに走る…

足がもげても走れ…




しかし大人の脚力には敵わず追いつかれ髪の毛を掴まれてしまった…




「くそが…」

 



盗賊は持っていた毒の剣でベルの肩を貫いていく。




「大人しくしてれば可愛がってやろうと思っていたが、そのまま毒で死ね…」









意識が薄らいでいく…

私の人生は何だったのだろう…

親友を助けられず、こんな所で殺されてしまう…









死にたくない…










どれだけの時間が経っているのだろう…

私は恐らく死んだはずだ…

でも、何故だか身体が温かい…







「生きてるか?」





え???

この声は…




「クリス様?……」




「今にも死にそうなほどの怪我と毒だ…

 危険な状況には変わりはないからな…」




「これは回復魔法ですか?」



「ああ、レベル1のヒールだけどな」



身体中に毒が回り、言う事を聞かない…

声も掠れてて上手く出せない…




「クリス様…折角なのですが…

 私はもう……」




消え入りそうな声でクリスに伝える…

力を持たない、未熟な身体に生まれた自分が嫌いだ…

皆んなを守れない…

もういっその事ここで……




「ここで諦めるのか?

 俺は嫌だね…

 俺は欲張りで我儘なんだよ…

 お前も助けるし、奴らも全滅させる」



クリスはそのように言いながらも回復魔法をかけ続ける…




「でも、私を助けた所で皆んなを守る力なんて…」



 私はそう言いながらも涙が止まらなくなってしまった…




「もう嫌なのです…誰かを守れないのも…

 誰かを死なせてしまうのも…」




「それなら最後まで足掻いて見せろ…

 恥ずかしくても苦しくても……足掻いて見せろ……」






そしてクリスの魔力が限界まできて、クリスがよろけてしまう…





「く、りすさま…」



「よし…ここで俺のスキルにかけるしかない…

 回復魔法レベル2きてくれ…」



すると…

クリスの発動した休憩スキルの青い光が輝く…




「よし!覚えたぞ…」




「いくぞ…ベル……

 アンチポイズン…」




更に白い光にベルは包まれると同時に、

ベルの毒は消え去っていく。

急に体が軽くなっていくため驚きを隠せないでいる。




「クリス様…私の毒が…」



「ああ、お前の毒は消え去った…」



「クリス様…でも…」



「ベルの力、スキルを信じろ…」



「え?」



「獣王剣はベルの発育が未熟だから使えなかったわけじゃない…

ベルの魔力が足りなかったからだ…」



「魔力ですか?…なぜ…」



「獣王剣は魔力消費型の剣技だ…

 ベルは恐らく生まれてから魔法訓練していないはずだ。

 獣王剣に必要な魔力が圧倒的に足りていない…」



「私の魔力が足りない…」



「これから俺が魔力を送る…

 そしてイメージしろ…

 獣王剣のイメージを」



「獣王剣のイメージ…」



「そう…伝説の獣王ガルムは小さい身体ながらも民を守るためにその剣を振るった…」



「クリス様…熱い…クリス様の魔力が身体に…」



「その魔力を中心に集めるようなイメージでまとめるんだ…


そして獣王はこう願った…」




「【民を守れるほどに強く大きくなりたい】」




そしてクリスの送った魔力を媒介に獣王剣が発動される…

目の前には身体を大きく発育させたベルの姿がある。

まるで18歳くらいの容姿、身体に変わっている。

獣王の如く強く身体強化を行う剣技、獣王剣。

まさにここからベルの本当の戦いが始まる。

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