第18話 白狼族ベル
白狼族の特徴としては銀色の耳に白い髪だ。
顔は人族に近い印象だが人族よりも美しく育つ傾向がある。
銀色のまつ毛、白い髪の毛も艶がありスタイルも良い。
曲線美を感じるような骨格だ。
剣技に長けた種族であり主君への忠誠心をなによりも大切にする。
そのため容姿に長けた種族を奴隷にしようと狙う者がいる。
特にエルフ、白狼族は狙われやすい種族である。
法律上は認められないが無理矢理に拘束して奴隷にする違法奴隷がルミナスにも蔓延っている…
俺の前にウエイトレスが紅茶を置く。
リーナ、白狼族の娘の前にも置かれている…
喫茶店スカーレットは小さい頃から家族と一緒に利用している馴染みの店だ…
この店の紅茶は特に美味い。
淹れ方に拘りがあり店主の親父は本当にうるさい。
よく部下を注意しているのを覚えている。
「まずは自己紹介からしよう…
俺はクリス・レガード、
隣にいるのは使用人のリーナだ」
「先程はありがとうございました…
私は白狼族のベルと申します。
あの…こんな見た目ですが、
年齢は今年で12歳になりました」
ベルは元々華奢で容姿も幼く見える。
背丈からも8歳くらいに感じていた。
茶色の目は大きくクリクリとしている。
まつ毛と眉毛、犬の耳は銀色。
そして髪は白く綺麗な艶をしている。
まさに白狼族の美少女といったところだ。
「俺と同い年か…すると儀式でスキルを得たのか?」
「はい…私もスキルを得ました…
それが少し変わったスキルだったのです…」
「聞いても大丈夫かな?」
「はい………
私のスキルは…
………獣王剣です」
「じゅ、獣王って…凄いスキルだな…」
「そうなのです…
でも、どうしてかスキルが発動しないのです…
里の皆んなからはお前が小さく未熟だからだって…」
「そうか…それで王立図書館でスキル発動の手がかりを探していたのか…」
王立図書館には魔法資料、学園資料、スキル資料と貴重資料の宝庫だ。
しかしまだ獣人差別が蔓延る中、王立図書館はリスクがあった。
「私も…わかってはいました…
でも、近日内に私の里が襲われるって…
お前は半端者だからスキルが使えるまで帰ってくるなって…」
「それで追い出されて仕方なく図書館にってわけね…」
「あの……どうか資料を探すお手伝いをして頂けないでしょうか……」
するとベルは深々と頭を下げる…
「いいよ…探しに行くよ…
その代わりここで待っててよ…
またジョニーみたいな奴がいるとも限らないんだ…」
「わ、分かりました…
ここで静かに待ってます…」
獣人差別による人間の欲望は凄まじい。
そのため今も静かに暮らす白狼族やエルフ族を狙う輩が多い。
そんな事は王国騎士団に勤めるゲイルからも聞いていた。
ゲイルはその犯罪組織を壊滅すべく日夜勤務しているのだ。
将来は自分も騎士団と考えていた時期もあった。
「乗りかかった船だ…
スキルの資料を見つけるまでは手伝うよ…」
「ほ、本当にありがとうございます…
この御恩は一生忘れません…」
そして俺達はベルと一時的に別れ王立図書館に戻ったのである。
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「魔法の本どころでなくなってしまいましたね…」
「まあ…あそこまで切羽詰まった顔をされると放っておけなくなるからな…」
「クリス様はお優しいですから…」
「さてっと、今度こそ受付の女性に聞こう!」
そして受付の女性に資料の場所を教えてもらった…
元々獣人のスキルであり資料自体がない可能性も高かった…
見つからないとは思ってはいたが、ベルの悲壮感あふれる顔を思い出してしまい、かなりの時間を使って探した。
その努力の結果、ついに資料を見つけたのだ…
既に日も暮れようとしている。
疲労しきった俺たちは喫茶店スカーレットへ戻る…
すると周りを見渡してもベルの姿がない…
「親父さん、ここに居た白狼族の女の子知りませんか?」
「あ〜あのちっこい子かい?」
「そうそう!多分その子!」
「他の客がね、白狼族の里が襲われたという噂を言っててな…
血相変えて出てったぞ…」
「!!!!」
さっき襲撃があっただと…
くそ…一足遅かったのか…
「親父さん、出ていったのはどれくらい前?」
「そ、そんなに時間は経ってないぞ…」
「ありがとう!
リーナ、今すぐに父さんに連絡しに行って!
俺はベルの里に向かう!」
「クリス様、一人では危険です!」
「いや、攻撃スキルを持つ俺が行くべきだろう…
リーナ…頼む…」
「わ、分かりました。
すぐにでも増援に向かいますので、絶対に危険な真似はなさらないでください…」
「必ず帰ってくる…じゃあ、後でね…」
そう言い残し俺は喫茶店スカーレットを後にする…
王都を出て東に向かうと里があると言う…
白狼族の少女ベル。
出会った人を死なせてしまうのは嫌だ…
全速力で駆け抜ける。
必ず救ってみせると心に誓い更に前に走り出した…




