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第14話 基本魔法

今日から我が家にマリア様がくる……なんて事は無い…

流石に王女であるため、いくら命の恩人とはいえ男爵の家に出向くことはできない。

そのため毎回、城内にある訓練施設に行くことになっている。

施設に着き、しばらくするとマリアと2名の護衛が到着した。




「おはよう!クリス、今日から宜しくお願いしますね!」



「おはようございます!マリア様!

こちらこそ宜しくお願いします!」



今日のマリアは公務ではないためカジュアルな装いだ。

白を基調とした私服もとても似合っており可愛らしい。




「ん?その腕輪、素敵ですね!」



「儀式後に使用人から頂いた鑑定の腕輪です」



「それは凄い。魔道具はとても高価です。

クリスは使用人からも慕われているのですね…」



「みんな、俺には勿体ない人ばかりです」



「そんなクリスだから慕ってくれるのですよ…

そしたら早速ですがクリスのステータスを鑑定してみましょう」




先日の儀式でスキルが付与がされた。

儀式を終えて腕輪にも表示されるらしい。

今日はその使い方も教えてくれることになった。




「鑑定と心に強く願ってみてください!あなたの状態や所得スキルが頭の中にイメージされるはずなので…」



「はい……」




『(鑑定……)』



すると俺の目の前に鑑定結果が文字として表示される。

前世で見たVRに近い反応だ。




名前:クリス・レガード Lv.5

MP:40

取得スキル:

休憩 Lv.1

 スキル使用によりMP全回復。

 使用回数 1日1回


取得魔法:なし




こんな形で表示された…

休憩のスキルレベルは1だ。

それとは別で自分自身のレベルも5と表示されている。

休憩は1日1回の使用制限がある。

そして内容を紙に書き出してマリアに見せる。




「それでは基本魔法から説明を始めますね!」




そこからマリアによる基本魔法についての講義が始まった。

どうやら火、水属性のLv.1魔法を基本魔法と呼ぶ。

何と基本魔法についてはスキル持ちでなくても発動可能なのだ。

しかし適正者に比べて威力が低い。

そしてこの半年間での目標は基本魔法の習得である。

俺に特筆した魔法スキルは無い。


それであれば学園試験合格に基本魔法は絶対に必要なのだ。




「火はファイアボール、水はウォーターショットと言います。

まずはイメージしやすいファイアボールから覚えましょう!」




前世は魔法が存在しない世界だった。

その分、早く魔法を使ってみたい衝動に駆られる…

マリアに注目していると周囲に赤い光が湧き出す。



「ファイアボール!」




呪文を詠唱すると目の前に火の玉が現れ鉄の壁に激突する。

とても適性が無いとは思えない威力だ…




「これが…魔法ですか…」




剣術クラスの授業は全て剣術、筋トレ、剣術、筋トレの繰り返しだった…

初めての魔法に目を輝かせてしまう…





「そう!頭の中で火が生まれるイメージを持って!

最初はできないかもしれないけど、根気強くやりましょう!」




「火が生まれるイメージですか?」



「どんな風に火が発生するかを具体的にイメージするのがコツと言われています」



火が付くイメージ…

例えば燃焼の原理とか?



「ファイアボール!」




予想もしながったが、手元から火の玉が発生してしまった…

まだコントロールは難しいが出たのだ。

まさか一発目で成功するとは思わなかった…




「ま、マリア様、出ました!」



「お、驚きました!まさか適正のない魔法を初めてで…」




マリアは目を見開き、驚嘆の声を発する。

お付きの護衛二人も驚いているようだ…

俺もテンションが上がりっぱなしだ!



「わ、忘れないうちにもう一回やりましょう!」




特にこの感覚は大事なので忘れさせたく無いらしい…

先ほどと同じように火を起こすイメージを浮かべる。




「ファイアボール!」




先ほどよりも火を、玉の形にして呼び出すことができた。





「素晴らしいですわ!これはすぐに基本魔法の習得ができそうですね」



「マリア様のおかげです!!

まさか俺も魔法が使えるなんて…」




2人でジャンプしながら喜ぶ、

気づけば手を繋いでジャンプしていた…




「「……あ!」」

「「ご、ごめんなさい」」



2人は驚きつつも手を離す…

2人とも頬が少し赤いのは魔法を使って暑かったからではなさそうだ…

マリアが照れて、チラッと上目遣いでクリスを見る。

クリスも真っ赤で照れてうなづいている…

少し甘い沈黙が流れたが、

耐えきれなくなった護衛の1人が、





「……ゴッホン!」




咳き込んだようだ。

もう1人の護衛は苦笑いしている。




「クリス、この調子で魔法を練習しましょう!」



「は、はい!マリア様」





そして気を取り直して魔法を唱えようと先ほどのイメージで唱える。




「ファイアボール!」




火の玉は出るが、先程は感じなかった気怠さと眩暈を感じる。

少しよろめいてしまった…




「クリス!!」



「すいません!少し目眩と立ちくらみが…」




「クリス、申し訳ありません!

失念していました!魔力量であるMPが尽きそうなのかもしれません…

鑑定してみてください」




初めてなのに魔法を連発したのだ。

その影響だろうか…

鑑定して確認してみよう…




名前:クリス・レガード Lv.5

MP:10

取得スキル:休憩 Lv.1

 スキル使用によりMP全回復。

 使用回数 1日1回


取得魔法:ファイアボール




残りのMPは10だった。

俺は3発のファイアボールを打った。

そして残りは10ということは1発当たり10ずつMPを消費したことになる。

後1発で枯渇していたのかよ…




「クリス、魔力量はMPと呼ばれています。

0になると命の危険もあるのです。

特に0からは生命力を燃やして魔法を使ってしまうため気をつけてください。

本当にそこから先は死んでしまいます…」





「MPはどのようにして上がるのですか?」



「それは枯渇に近い魔力を全回復した時に最大値が上がると言われています」



なるほど…

そしたらもしかして…




「あの…クリス…もし宜しければ休憩スキルを試してみませんか?」




マリアからの提案により、いよいよ休憩スキルを使ってみることになったのだが、その結果に2人とも恐ろしい可能性を感じるのであった…

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