第127話 愛をこめて
突如として賢者の次元結界が俺とユーリを囲った。
そして外からは何も見えない。
その中で俺たちは従属化のレベルが上がるまで口付けを交わすことになった。
「ユーリ…」
俺はユーリとの口付けは一度しかしていないことに気づいた。
こんなに好きと言ってくれたのに、
俺は過去で助けた時しかしていない。
何故だろう…
確かにレベル上げのために口付けをしなくてはならない。
でもその理由のためだけにするというのは嫌だと思ってしまった。
だから、気持ちを込めたいんだ。
「ユーリ…」
こんなに可愛くて、
おちゃらけてて、
しかも食いしん坊で…
「一緒にいると、
楽しくて仕方ないんだ」
今、無理なのは分かっていても、
やっぱり…
「ユーリの言葉も聞きたいよ…」
どうして、10年も待ってくれたんだよ…
長すぎて辛かったと思う。
寂しかったと思う。
そして…
「俺は、やっぱり
笑っているユーリが好きなんだよ…」
いつも人を元気にさせる笑顔。
怒っている時も悲しい時も、
忘れてしまうほど綺麗な笑顔なんだ。
「最初は妹みたいな存在だった…」
頭を撫でたり、手をひいたり、
なんだか妹みたいだなって思っていた。
「たくさん辛い思いをして生きてきて、
一見ガサツそうに見えるけど、」
「ユーリは、誰よりも優しいんだ…」
俺は知っている…
だから、
「俺は、そんなユーリが好きなんだよ…」
気づいたら俺も涙が溢れていた。
「ユーリ、やっぱりお前の声が聞きたいよ」
俺はそう言いながら、ユーリに口付けを交わす。
するとユーリの瞳も涙で溢れていた。
きっとユーリも本当は伝えたくて、
でも言葉にできなくて…
そんな切ない思いが溢れている気がした。
その表情を見て、
俺は気づいたらユーリを抱きしめる。
「帰ったら、
たくさん出来なかったことをしよう」
お祭りもろくに二人で回れなかった。
買い物だって出来ていない。
それに二人の時間も作れていなかった。
「そうか……
まだ伝えてなかったよね」
そう言いながら、ユーリの瞳の涙を拭い、
じっくりとユーリの瞳を見つめる。
「俺のお嫁さんになってください…」
精一杯の気持ちをこめて、
ユーリに口付けを交わす。
「ユーリ、愛してる…」
その後も俺は、ひたすら気持ちを込めて、
愛をこめて口付けを交わした。
そして、ユーリの瞳に正気が戻る。
「くり……す」
俺は嬉しくて仕方がない…
ユーリに気持ちが伝わった気がした。
「ユーリ…」
そして俺にお返しをするように、
ユーリから口付けをされる。
その瞬間、奇跡が起きた。
次元の結界の中にいて、景色は変わらず、
水の神殿の床下は変わらない。
しかし、まるで俺達を祝福するかのように、
俺達の周りに虹色の光が溢れていく。
それは新たなスキルが覚醒した瞬間だった。
「私も…
クリスを」
光の中でユーリが俺に言葉を告げる。
「クリスを愛しています…」
そして俺達は何度も口付けを交わした。
お互いに夢中に求め合い時間を忘れていた。
今は、スキルのためなんかじゃない、
相手をただ求めて、愛を確かめ合っていた。
そう、時間を忘れてしまっていたんだ。
その時、まだかと待ち焦がれた、
賢者から連絡があった。
「おい、クリス、そろそろ大丈夫か?」
「あ、賢者、ごめん…」
忘れていたとは言えない。
通信機越しに女神と攻防しながら連絡してくれているようだ。
「全く、お前達には驚かされたよ…
まさか忠誠を獲得するとはね…」
「へ?」
賢者が忠誠スキルについて説明した。
このスキルは、魔王の部下が忠誠を誓うように、
従属させた関係ではなく自らの意思で従うスキル。
「忠誠は、魔族の契約スキルの中で頂点さ!
魔力は直接繋がり、送れるんだよ」
俺は驚きを隠せない。
そんなスキルがあるとは思いもしない。
「これで女神にも勝てるかもしれない
ユーリの魔力を聖剣技に上乗せするんだ」
賢者の言う忠誠スキルを使い、聖剣技を強化する。
そしてユーリに準備はいいか尋ねてみた。
するとその問いに、無言で頷く。
「賢者、いけるよ!
後はマリアと合流して、
俺達の聖剣技で女神を打つ!」
そして俺は覇王を発動して聖剣を握りしめる。
賢者が結界を解除したと同時に、
ユーリの手を引き、俺達は前へ歩き出した。
生気を失ったユーリを救うことが出来た。
そしてこれから、マリアと合流して三人の聖剣技を
女神に放つ。
その重なる想いが女神の裁きを退けていく。
いつも小説をお読み頂き心から感謝いたします。
皆様の応援のおかげで毎日投稿が継続できております。
そしてカクヨムでも投稿を開始しております。
ですが、ただの書き直しではなく、
第109話から別シナリオで書いてまいります。
小説家になろう、カクヨム共に必死に悩みながら
シナリオを考えておりますので、
両作品とも読んで頂けると幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。




