第125話 光
水の神殿の祭壇が崩れ落ちて、
その開いた穴から光の柱が立っている。
そして光の中を教皇ラグナと女神テティスが浮きあがる。
女神は白を基調としたローブを身に纏い、
その髪の色は金色に変化した。
更に海の女神と言われているだけに、
その瞳は海のように澄んで綺麗に輝く、
そしてラグナが声を発した瞬間、
サラに乗り移る女神テティスは手を振り下ろす。
光の光線は、跡形もなく彫刻の騎士隊を消滅させた。
その場に居合わせた者は開いた口が塞がらない。
ラグナの目的は、女神の力を手にすることだった。
そして、この瞬間に賢者とカートが合流する。
波動を感知した賢者は、
水の神殿の入り口にマリアを待機させた。
「な、なんだ、この波動…
まさか!」
「師匠、近寄ってはダメだ!」
新たな訪問者をラグナは確認したが、
標的はクレアとゼノに絞り女神に命令をする。
「ふはははは、ひれ伏せ」
女神が再度手を振り下ろすと、
クレアとゼノに光線が放たれた。
「あ、あねご!」
「だ、大丈夫だ!」
しかしクレアは衝突の瞬間を読み、
神速で回避してみせた。
そしてゼノにも向かうが間一髪で回避している。
「ふふふ、逃げるのに精一杯じゃないか」
女神の裁きの威力を見ると、
一発受けてしまうと無事では済まない。
「これは序章に過ぎない
まずはルミナスにいるエルフを操り、
そして各地の神を手に入れる!」
その場にいる者たち全てに衝撃が走った。
そしてラグナは、目の前にいるユーリを、
嫌らしく見つめる。
「まずはそのエルフに首輪を付けて、
最初の贄にしてやろう…」
その時、クレアの中で何かが弾けた。
ユーリに向けた害意に対して許せない。
そして目の前のラグナへの憎しみが溢れる。
「その、汚らしい声を聞かせるな!」
クレアは神速で教皇に向かって移動し光の剣を放つ。
魔眼で見えるその未来には、
ラグナを殺す未来が見えている。
しかしラグナの前に水魔法の壁が立つ。
光の剣は、高密度の水の壁に遮られて消滅した。
「くそ!」
魔眼の力が一瞬女神の瞳の力に遮られた。
後少しでラグナまで光の剣が辿り着けたため、
クレアは悔しさを隠せない。
「惜しいな…
狙いは良いが女神の瞳に邪魔されたな」
ラグナが憎たらしい声を発する。
そしてこの瞬間、クレアの一度目の魔眼の効力が切れてしまう。
「め、目がぼやける」
左目の視力が一時的に定まらない。
そしてラグナにその一瞬の隙を狙われてしまう。
「そのまま死ね」
光の光線がクレアを襲う瞬間、
予想外の行動を見せた人物がいる。
「な、何故だ!
何故、お前が…」
ゼノがクレアを庇い左腕を負傷したのだ。
その腕から大量の血液が流れる。
「勘違いするな、
今ここでその魔眼を失えば、
私の勝機もなくなる」
ゼノは経験上、戦いの展開を読める。
その頭脳をかわれて副官の地位まで昇り詰めた。
そして今、目の前でクレアが死ねば、
次に狙いを自分に絞られてしまう。
この状況では、死を意味していた。
「なんてことになってるんだ…
まさか、女神が操られるなんて」
賢者には目の前の出来事が信じられない。
過去500年でこのような事例はなかった。
そして、頭の中で解決できる方法を考えた。
「これしか…
クリスが来たら賭けるしかない」
賢者には策があった。
しかし、クリスが来るまで持ち堪えなければならない。
「クレア、私に考えがある…
後30分だけ時間を稼げ!
そうすれば、クリスが来る!」
そしてクレアは覚悟を決めて魔眼を発動させる。
この状況で自分しか相手を引きつけられる者はいないと判断した。
「アリス、ユーリを頼む…
お前が何としても守れ!」
アリスはクレアの言葉に無言で頷く。
そして、賢者の方を見るとカートが、
しっかりと付いて守っている。
その様子を見たクレアは、嫌がるカートを無理矢理
連れてきて良かったと心から思っていた。
ラグナと女神は、光の柱から地面へと降り立つ。
そして、それを見たクレアは遠距離からの攻撃を、
ラグナに放ち続ける。
「ユーリ!
お前も教皇をねらえ!」
女神の光を回避できる距離を見極めて、
遠距離から攻撃をし続ける作戦に出た。
「良い戦い方だ!」
ゼノもその意図に気づき場内を駆け回り攪乱する。
徐々に形勢は変わりつつあった。
女神の攻撃を回避しながら時間を稼いでいる。
「クソが!」
思い通りに進まなくなり教皇は苛ついていた。
冷静でない思考が徐々に判断力を鈍らせる。
攻撃のことで頭が一杯で防御が疎かになっていた。
その一瞬の隙をクレアが突いた。
光の剣を死角からラグナへと向かわせた。
そして一撃がついに女神の守りを掻い潜り、
ラグナの胸を貫いた。
「な、何だと…」
ふらつきながら、踏ん張っている。
たしかに貫いたが致命傷にはならなかった。
「あ、危ない…
女神よ、回復しろ」
元々は、サラの肉体のため回復魔法を持っている。
そのためラグナの胸は瞬く間に回復してしまう。
「惜しかったな、
殺せなかったことを後悔するが良い」
そうラグナが言い放ったが、
賢者は愛してやまない人物の波動を感知した。
その瞬間、賢者はニヤリと笑みを浮かべる。
「ふふふ、アイツが、
ようやく魔界から帰ってきたようだ」
そしてその者が水の神殿の入り口に転移し、
この場所に全速力で向かっている。
「これで…
お前を止められるよ、ラグナ」
その人物は、入り口で待機していたマリアを、
抱えてこの場所に現れた。
数日前よりも遥かに魔力が高まり、
ゼノでさえも威圧感を感じている。
「待ちくたびれたよ、
どんだけ待たせるんだい」
賢者の笑みは喜びに溢れている。
待ち焦がれた人物が目の前に現れたからだ。
「ごめん、
これでも飛ばしたんだけど…」
「遅れたお詫びにクリス…
女神退治といこうじゃないか!」
クリス・レガード、覇王を持つ聖剣の契約者が現れる
周りを見渡し危機的状況に陥っていると認識した。
そして賢者は、クリスの持つスキルで女神の攻略を指示していく。
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読者の皆様と毎日一緒に冒険しているのが楽しくて仕方ありません(T ^ T)
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