第124話 女神
突如としてアリスの乱入により、
副官ゼノに麻痺を与えることができた。
しかし、過去に遭遇した敵であれば動揺していた様子が、ゼノからは感じられない。
その余裕ある振る舞いにクレアは嫌な予感がしていた。
「これは、雷の魔法か…」
アリスだけの固有魔法のはずが、
ゼノはその魔法を口にした。
そして更に、アリスを狙い始める。
「それならば、
まずは厄介な魔法を止めよう」
身体強化をかけて突進を仕掛けてくる。
そしてそれをクレアは許さない。
「読んでいたよ、この瞳でな」
魔眼で行動を先読みして光の剣を当てていく。
アリスへの危機を察知して早めに動いていた。
しかし、強力な光の剣はゼノに当たったが、
致命傷にはならず不敵な笑みを浮かべている。
「魔眼の使用直後を狙うのだよ…」
ふと契約の腕輪をかざし眷属を召喚した、
1000体ほどの彫刻の騎士隊が現れる。
そして即座にユーリへと集中させた。
「ユーリ!」
眷属を呼び出す可能性は賢者から聞いていた。
すぐに撃破出来るのは、クレアしかいない。
しかし、クレアの魔眼に対してゼノは経験で補う戦いを見せていく。
「早くしないと二人とも死ぬぞ」
すると、ゼノは速度が落ちているにも関わらず、
アリスへと突進を繰り出してきた。
身体強化は魔法で二重にしているため、
決して遅いわけではない。
クレアはまさか意識を二方向に分散されるとは思わなかった。
直前でアリスへ攻撃を仕掛けたのは、
魔眼を使用させて一瞬の隙を突くためだった。
「ふふふ、まずは雷使いから死ね!」
アリスは強者との戦いで物怖じしない。
自分よりも遥かに格上達との戦いの中で、
着実に才能を開花させてきた。
そして、雷の魔法での身体強化をかけて、
神速を再現する。
「な、何、神速だと?」
クレアの動きを常に見てきたアリスは、
死角から雷の剣を当てて見せた。
その戦いはまさに母親の戦い方を再現している。
「ふふふ、ははは」
ゼノは、目の前の小さな子供の才能を見て、
自分よりも遥かに年下だが実力を認め始めていた。
「その才能、
人間には惜しい程だ」
そして魔王の副官として君臨した力の一部を見せる。
固有スキルである血の代償を使い、
血を媒介にして身体能力を引き上げた。
「これで追いかけっこも終わりだ」
ゼノの恐るべき攻撃がアリスに迫る。
そしてユーリにも彫刻の騎士隊が襲い掛かる。
危機的状況にクレアは焦っていた。
しかし形勢が傾き始めていた時、異変が起きる。
地震とも感じる程の大きな揺れが発生した。
「な、なんだ…」
そして爆発音と共に祭壇の床が崩れていく。
咄嗟の事だったが即座にクレアは、
神速でユーリを救いに駆け抜けた。
同時にアリスもクレアの傍に高速移動している。
「この波動、まさか…
教皇め、やってくれる」
祭壇が崩れ落ちると神々しい光が溢れていく。
その光からクレアはかつて感じたことがない圧力を感じていた。
そして、少しずつ光の中を浮かびながら移動する人物が見える。
「神聖な神殿に、
ゴミが紛れているな…」
クレアが聞いたことがないほどに邪悪な声色で話しをしている人物がいる。
その人物は、女神教の教皇だ。
「教皇、貴様…
まさか…」
ゼノは、この波動を感知して何が起きたのか、
思考を張り巡らしていた。
そして、少しずつ光の中からサラが姿を表していく。
「な、何だ…
この魔力の質と光は…」
クレアとユーリは驚きを隠せないでいた。
そして只者ならない風格のサラを警戒している。
「あの魔力は危険だ…
出来る限り距離を取るぞ!」
クレアは、魔眼を使ってはいないが、
感覚的にサラの近くに留まってはいけないと察知した。
教皇は笑みを浮かべながら声を発する。
「お前ら、今より私が王となる。
その瞬間に立ち会えるのだ」
すると、隣のサラの姿が少しずつ変わっていく。
白を基調としたローブを身に纏い、
その髪の色が青から金色へと変化した。
更に神々しい程の光を発している。
誰しもがサラの変わった姿に驚き言葉を失う。
「な、何だと…
この姿はまるで…」
教皇はサラの首輪を嫌らしくなぞる。
そして驚愕の事実を口にした。
「魔族を泳がせ、
この日のために利用していたんだよ…」
そして、サラに神々しい光の魔力が溢れていく。
急速に集まる魔力量は圧倒的で、
人に扱える量を超えている。
「隷属の首輪を作らせて、
ある対象を操るために…」
教皇は髪をオールバックに掻き上げて、
高らかに宣言した。
「その対象は、
海の女神、テティスだよ」
その声を発した瞬間、サラに乗り移る女神テティスは手を振り下ろす。
光の光線は、跡形もなく彫刻の騎士隊を消滅させた。
一瞬の出来事にクレア達も、ゼノでさえも驚愕している。
突如として現れた海の女神テティス。
隷属の首輪で操られている。
しかし、女神の裁きと言われる光の破壊力は、
人の領域を超えていた。
更に教皇から発せられる言葉に、
クレア達は言葉を失う事になる…
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