第123話 自信
死の山の修行では、最後の結界を目指しており、
既にクリスの魔力は回復を終えて出発していた。
「賢者、このまま行くと、
後どれくらいで到着できる?」
「問題がなければ、
ざっと1時間ってところだろう」
上手くいけば日没前には結界に着ける。
予想よりも早いペースで進んでいることに、
賢者もマリアも驚きを隠せないでいた。
そして、目前に獣人らしき人影が見えて、
その人物について賢者が口を開いた。
「クリス、気をつけろ!
奴はかなりの実力者だ」
更に賢者は、500年前にその人物を知っていたからこそ警笛を鳴らす。
「やつは、獣人の中でも王に位置する。
その国では伝説級に崇められていた。
その身は小さくてもスキルを使い、
どの建物よりも大きくなった」
「け、賢者、まさか…」
俺は賢者の話から今もお世話になっているスキルを思い出していた。
図書館で調べた時に出てきた名前に違いない。
「そうだよ…
今は亡き獣王ガルムだ」
まさかベルのために図書館で知った過去の偉人に出くわすとは思いもしない。
獣王ガルムの容姿は、ワニのような顔、
肌もウロコに覆われていている。
そして身体全体は薄い黒色だ。
そしてまだガルムとの距離も離れており、
ガルムは俺を補足していない。
今の状況を考えて賢者に最善策を提案した。
「賢者、マリアを連れて母上の元に、
先に行ってくれ!」
「お前、大丈夫なのか?」
元々最終日、一人で帰る予定だったため、
最後の相手は俺一人で戦うことに決めた。
「マリアも一人に出来ないしね…
そういえば…」
俺はシャルロットが気になっていた。
一緒にユーリの元へ助けに行ったのか分からない。
それを賢者に問いかけた。
「ふふふ、魔導具を用意したのさ…
今それを取りに行っている。
直に到着するだろう」
「なるほど…準備は万全って事ね。
後、ちょっとだけマリアと話したい…
代わってもらっていいかな?」
ここから間違いなく強者との戦いに向かう。
そのため、マリアと話がしたかった。
「マリア、ありがとう…」
「え?」
俺にはマリアの気持ちがわかっていた。
マリアは今もユーリが心配で堪らなく、
心から助けたいと願っている。
魔力はその想いに溢れていた。
「マリアから、ユーリを助けたい気持ちが
溢れてくるんだよ…」
「だって、狙われて嫌な気持ちは、
一番分かるつもりだし…
それに…」
しかし魔力だけで全てが分かるわけじゃない。
俺はこの時、マリアの本当の想いを知った。
「私もユーリさんと仲良くしたいし…
だって、二人とも…
お、お奥さんになるんだし…」
通話越しに恥ずかしがる声が愛しくて堪らない。
「一緒にクリスを支えられれば、
クリスも色々専念できるでしょ?」
「マリア…」
俺は考えてみれば余裕がなくて目先のことしか考えてなかったのかもしれない。
ユーリを助けたら二人に伝えないといけない。
「マリア、ユーリを助けたら…
二人に伝えたいことがあるんだ」
俺は心に決めた。
二人は、既に俺の婚約者だ。
てもまだ俺は自分から結婚してほしいと、
言葉にして伝えていない。
ユーリを助けた後、その気持ちを二人に伝えたい。
「私も、心の準備をしておくね…」
そして、マリアとの会話も終えて、
賢者との通話に戻る。
「クリス、結界に入ったら、
転移先を思い浮かべろ
場所は、水の神殿の前だ!」
転移結界は、その場所を指定できる。
水の神殿を思い浮かべると即座に転移する。
「分かった…
賢者、みんなを頼む」
「あぁ、任せておきな!」
賢者との接続が切れて会話が終わった。
今からマリアを連れて水の神殿に向かうだろう
俺もすぐに神殿に向かわなければならない。
そして、俺は目を瞑り呼吸を整える。
必ずみんなを守り、ルミナスへ帰る…
その覚悟を決めて、全ての身体強化を施していく。
「いくぞ、獣王ガルム…」
俺は覇王を発動して全速力で駆け出した。
ガルムは、俺に気づくと獣王剣を発動してその身体を大きくする。
瞬く間に5階建てのビル程の大きさに変化した。
「大きくなりすぎでしょ」
巨大化に近い変化を遂げたガルム。
伝説のスキルを目の当たりにして驚愕する。
「でも、大きすぎるその身体では、
俺の速度には追いつけない」
神速スキルでガルムの背後に周り、
その大きな足に魔力を送る。
そしてそのまま足に向けて聖剣の一撃を繰り出した。
するとガルムは、巨体を支え切れず倒れてしまう。
今のクリスはレベルアップを繰り返し、
魔力の質も向上している。
その聖剣の一撃は獣王であっても防ぎ切れない
「悪いな、時間がないんだ…
すぐに終わらせてもらう」
更に倒れる獣王めがけて駆け上がり胴体を貫く。
すると、その巨体から大きな悲鳴が鳴り響いた。
「楽しみで仕方ないんだ…
マリアとユーリとの結婚生活が」
何もできない獣王に度重なる斬撃を浴びせる。
しばらくの間、攻撃を繰り返していき、
ガルムは光の粒子となり消えていった。
ガルムを倒したことで、
レベルアップを繰り返していく。
スキルがレベルアップしました。
スキルがレベルアップしました。
スキルがレベルアップしました。
スキルがカンストして新スキルの獲得に成功。
そして俺は鑑定の腕輪を使い、結果を確認する。
名前:クリス・レガード Lv.142
MP:84600
取得スキル:
休憩 Lv.3
覇王Lv.8
聖剣技Lv.3 →Lv.4
獣王剣Lv.9
強化格闘術Lv.9
強化格闘術・極Lv.3→Lv.5
地獄の業火Lv.8
神速Lv.7
従属化Lv.6→Lv.8
探知Lv.7
取得魔法:火魔法Lv.2→Lv.3
回復魔法Lv.3
水魔法Lv.8→Lv.9
水魔法・極Lv.1
融合魔法Lv.6 →Lv.7
幻惑魔法Lv.6
封印魔法Lv.6
ついに水魔法がカンストして、
新しいスキル水魔法・極を獲得した。
聖剣技も順調にレベルアップ出来ている。
「これなら誰にも負けない…」
溢れる力を実感して、それが自信となり、
魔力を通してマリアからも同じ反応が返ってきた。
そして遠くを見ると、結界の光が見える。
きっとこの先には強敵が待ち受けているだろう。
でも、負ける気が全くしない。
何故なら愛する二人のためなら、
何でも出来てしまう気がするからだ。
その未来のために俺は走り続けていく。
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読者の皆様と毎日一緒に冒険しているのが楽しくて仕方ありません(T ^ T)
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