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第120話 救う者

水の神殿は、女神教の歴史的遺産である。

各国に名が轟く程に美しく観光客も訪れる。

外観はレンガを積み立てたような建築様式で、

特徴的なのは扉が水魔法であることだ。

水の扉が魔力に反応して入場者を判断する。

更に侵入者から神殿の遺産を守るために水の扉が道を塞ぐ場合もある。




そして儀式の間に教皇ラグナ、サラ、ユーリがいる。



「さぁ、ユーリさん、

 その杖を持つんだ…」



ユーリは突然のことでよく分からないでいる。

聖剣の儀式の手伝いと言われて神殿に来た。

しかし言われるがまま従うと何故か儀式で使う衣装を着せられている。



「あの、私は一体何を…」



ユーリは、祭壇の前に立たされて杖を持っている。

この衣装と杖は聖女が身につける物だ。

しかし、これではまるでユーリ自身が儀式をするかのように見えてしまう。



「リハーサルだよ…

 試してみるだけ良いじゃないか

 ひとまずその祭壇に立ってくれ」



ユーリは教皇の言葉に流されている気がした。

しかしここまで教皇と聖女に付いてきて、

今更帰ると言えない空気がある。

そして、そのまま付き従い祭壇に立ってしまう。



「ふははは!」



ユーリが祭壇に立った途端ラグナは声をだして笑う。



「馬鹿め…

 その祭壇は水魔法の結界により、

 抜け出せない牢獄になるんだよ」



ラグナがそう発言したと同時に、

ユーリの周りを水魔法の壁が覆ってしまい、

水の牢獄に閉じ込められてしまった。



「な、なんで!」



ユーリはまさか罠に嵌められるとは思いもしない。

そして自分が利用される理由が分からないでいた。




「聖女の姿にして誘き出すのさ」




「え?」




ラグナは邪悪な笑みを浮かべる。

そして、隣のサラに命令した。



「サラ、やれ!」



すると回復魔法のプロテクションを発動させる。

水魔法の壁の上に結界を被せて、

物理攻撃でも破壊出来ない結界へと強化した。



「それなら、私も魔法で」



「無駄だよ」



ユーリが氷魔法を発動しようとした瞬間、

祭壇の床に描かれた魔法陣が光る。



「発動した魔法は全て祭壇に吸収される

 祭壇に立った時点で、

 お前は魔法が使えない」



ユーリは氷魔法を封じられて驚愕している。

魔法を封じられた時の攻撃手段を持ち得ない。



「何のためにお前を利用するのか…

 それはな、丁度良かったからだよ…」



更にラグナは笑顔を向けながらも声を放つ。

その声は高らかに笑いながら発せられる。



「サラには別の儀式がある…

 死なれては困るんだ」



そして声を発した直後、天井から爆発音が鳴る。

ラグナは魔族から襲撃されるのを予測していた。

それを示すかのように口元が綻ぶ。

そして、最後にラグナは宣言する。










「魔族に心臓を喰われて死ね」









気づけばユーリの瞳は涙で溢れていた。

こんなことのために生まれてきたわけではない。

ラグナの言うことが今も信じられないでいる。

しかし、自分の置かれている状況では檻に閉じ込められて何も出来ず殺されてしまう。



「クリス、あねご…

 ごめんなさい…」



涙が頬を落ちてしまう。

もう愛する者たちに二度と会えず死んでしまう。

後悔で頭が一杯になってしまった。




そしてラグナたちは別の部屋へ移動していく。

死が刻々と迫る中、ユーリはクリスとの幸せな日々を思い出していた、

全てがユーリの中では色鮮やかだった。

いっそのこと、このまま幕引きをするか考える。



しかし、きっとクリスを悲しませてしまう。

そう思った瞬間、ユーリは手に持っている杖で必死に水魔法の壁を叩いていく。

手が赤く腫れても必死に、泣きながら叩き続けた。



「いや…だ…

 死に…たくない…よ」



涙が溢れてしまい止まらない。

ユーリはもう既に愛する家族との日々が、

何よりも大切だった。





そして、残酷な瞬間が訪れてしまう。

儀式の間に早くも現れた人物が、

表情を笑顔のまま声を発していく。




「女性1人取り残し、泣かせている…

 随分と非常識な輩がいる訳だ」




そう言い放ち現れたのは、

黒い正装に身を包んだ老人。




「だが、聖女が1人でいるのは、

 我々にとっては幸運だ…」




そして鋭い目つきへと変わり声を発していく。

その姿を見たユーリは、一瞬で老人が只者ではないと察知した。




「奪えと言うのであれば、

 喜んで奪ってやろう」



ゆっくりと歩きながら近づいてくる。

結界へと手を伸ばそうとした瞬間、

回復魔法の結界により弾かれる。



「ほう、なかなか練度の高い魔法だ

 だがまだ詰めが甘い…」



左手に装着していた腕輪が光る。

ウンディーネの契約の腕輪により、

魔力が吸収される。


そしてプロテクションだけでなく、

水の結界までも跡形もなく消え去った。





「い、いやだ…」




「ふふふ、これは良い…

 私も長生きするものだ」





そして、ついにユーリに魔の手が伸びる瞬間、

急速に近づき駆けつけた人物がいる。











「私のユーリに手を出す者は、

 誰であろうと例外なく塵にする」










ユーリにとって大切な家族の1人、

クレア・レガードだ。

賢者から授かった力で必ずユーリを救うと誓う。

しかしゼノの能力は四天王を上回る程に強烈だった。

そしてその戦いは熾烈を極めていく。

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