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第119話 愛のために

これは死の山でクリスが目を覚ます前の話である。

賢者による手術が終わり、クレアはゆっくりと目を開いていく。

しばらく閉じていた影響で眩しさを感じてしまうが、徐々に光に馴染んでいくと世界が変わった。



「目の調子はどうだ?」



「師匠、凄い…」



クレアに施された手術、それは時の魔眼の移植だ。

その技術は古の時代に失われていたが、

賢者はその技術を保管し守っていた。



「手術が失敗して失明する可能性もあった

 だから片目だけの魔眼だ…」



クレアは事前に聞かされてはいたが、

その強力な力を授かり驚愕している。



「まだ馴染むまで無理するなよ…

 後は本に書いてある通りに、

 鍛錬を行うんだ…」



賢者はクレアに一言告げてクリスの部屋に戻る。

クリスが目を覚ましたら残り2日間で最後の結界までの支援をしなければならない。

最優先はクリスと考えていた。



しかし、この時賢者は知らない。

クリスが旅立ってから今日が3日後であり、

新たな陰謀が蠢いていたことに…



そして、残酷な瞬間が訪れてしまう。



「ユーリを見なかったか!

 どこにもいないんだ!」



カートが慌てて部屋に入って来た。

賢者は念のためクレアとユーリを守るようにカートへ指示をしていた。



「な、なんだって…」



賢者はあらゆる事態を想定していたが、

まさかユーリが失踪するとは思いもしない。

クレアを見ると居ても立っても居られない様子だ。



「待て、探知で探す…」



賢者の探知魔法により、ユーリは水の神殿にいると反応が出ている。

この結果から賢者は今起きている事態の予測をする。



「まさか…

 儀式に紛れて利用されたか?」



賢者の予測は、ほとんど当たっている。

しかし、現状で戦える者は少ない。



「クレア、よく聞くんだ…」



その瞬間、賢者の空気が変わる。

そして信頼する愛弟子に一声かけていく。



「今のお前の魔眼だと、

 3回が限界だ…

 それ以上は著しく視力が低下する」



クレアは、息を呑んで賢者の話を聞いている。

それだけにこれから戦う相手は格上の可能性がある。

まだ訓練できていない状態で臨まなければならない。



「カート…

 アリスを起こして来い…」



そしてカートは急足で部屋を出て別館で眠るアリスを起こしにいった。



「よし、途中からクリスには

 1人で帰ってもらうよう伝える。

 明日までは持ち堪えてくれ」



最後にクレアに一言告げる…

それは優しい師からの言葉だった。







「私は、お前を信じている…

 必ずお前ならユーリを救える!」






賢者からの言葉にクレアは涙が溢れてしまう。

そして大切な家族を必ず救ってみせると、

クレアは自分を鼓舞しながら前を向いた。





「今のお前なら、たとえ奴が出て来ても、

 互角に渡り合える…」




賢者の中で唯一自分を出し抜いて、

契約の腕輪を持ち去る事ができる人物を考えていた。




「四天王を統率し、

 魔王の側近として君臨してきた…

 その者の名は…」




賢者は昔を思い出すような口ぶりで話し続ける。

しかしそれは良い思い出ではなく、

思い出したくない過去と賢者の表情が物語っている。









「魔王の副官ゼノ」








賢者の声と共にその場に集まる者は静まり返る。

そして更にその者の特徴を伝えた。





「奴の能力は…」





その情報を聞き、クレアは真剣な眼差しで水の神殿へと向かった。

そして後からアリスとカートも向かうことになる。








賢者は遠距離メガネからクリスを見て呟く。



「信じるしかない…

 後はクリスにかかっている…」



そして時間がないと感じた賢者は、

クリスへの呼びかけを再開する。




「クリス、しっかりしろ!」




「おい、クリス!」






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





死の山での修行は早くも4日目を迎えている。

賢者はクリスに事情を伝えるか迷っていた。

しかし、いつかは伝えなければならない。

それであれば、今伝えるべきだと判断した。



「クリス、よく聞くんだ」



クリスは賢者の様子がいつもと違うと気づいた。

表情は険しく真剣な眼差しに緊張してしまう。



「実はユーリが、

 危険に晒されている可能性がある」



「な、何だって!」



クリスは意味が分からないでいた。

ユーリはルミナスにいるはずだが何故危険に晒されているのか理解できない。



「話すと長くなるから、簡潔に話そう」



そして賢者は一通りの事実を伝え、

水の神殿にクレア、カート、アリスが向かっていることも告げた。



「母上が向かっているのですね…」



クリスはクレアが助けに行ったのであればと安堵していた。



「すまないね…

 万が一の可能性だが敵は、

 クレアよりも強い可能性がある…」



クリスは事実を信じられないでいた。

しかし賢者の言葉から嘘は全く感じられない。



「クリス、何としても2日で帰って来い…

 そして最終日は…

 1人で結界に辿り着いてもらう」



賢者の言う言葉を聞きクリスは決心する。

賢者の命令は最もだが、それでユーリに万が一のことがあれば納得ができない。

クリスはユーリも愛しているのだ。




「賢者、それなら…

 必ず1日で帰ってみせる!」




賢者はクリスの言葉を聞き心を奪われる。

通信機器越しで聞いた言葉だが、

かつて500年前に肩を並べた人物の言葉のように思ってしまう。





「クリス、お前…」





「途中の敵は、全て切り捨てる」






そしてクリスは再度覇王を発動し聖剣を握りしめる。

その想いに呼応するように覇王の輝きが死の山に溢れていく。





「賢者、俺を導いてくれ…」





更に、全ての身体強化を施していく。








「全速力で駆け抜ける!」







賢者はクリスに全ての事実を打ち明けた。

しかしクリスから予想を超える言葉が返ってくる。

その言葉に賢者は心が揺さぶられてしまう。

そしてユーリがテティス内で捕まったと聞き、

クリスは動揺したが、必ずユーリを守ると誓い、

死の山を全速力で駆け抜けていく…

いつもお読み頂き心から感謝です。

読者の皆様と毎日一緒に冒険しているのが楽しくて仕方ありません(T ^ T)

ここからクライマックスへと進みますが、

少しでも面白くできるよう努めます。


もし気に入って頂けましたら、

ブックマークの登録や評価をして頂けると幸いです。

今後の執筆の励みになります。

宜しくお願い致しますm(_ _)m

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