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第117話 夜道

魔界の死の山で修行をする事になったクリス。

日没まで残り僅かであり死の山を全速力で駆ける。

登り始めた時は軽い雪だったが夜になると、山は表情を変えていく。



「何で暗くなると吹雪くのかね…」



辺りは少しずつ薄暗くなった。

そして雪も吹雪いており気温もだいぶ下がっている。

火魔法を使い道を照らすが、Lv.1のため照らせる範囲は限られてしまう。



「やばい、やばい…」



走る速度を上げていくと視界が狭まっているため、

モンスターの攻撃を認識できなくなる。



「危ない!」



クリスの目の前にオーガが迫っていたが気付くのに遅れてしまった。

至近距離で斧を振り回してくるが、即座に神速で回避して聖剣で撃破する。



スキルがレベルアップしました。



「はぁ…はぁ

 立ち止まったら駄目だ…」



山を登れば登る程、敵の強さも増してくる。

更にモンスターの鳴き声も迫力を増して恐怖を増長させた。



「死の山の夜道って…

 怖すぎでしょ…」



薄暗かった景色も気付けば真っ暗になっている。

もう微かな火魔法と探知で進むしかない。

張り詰めた空気の中、ゆっくりと気配を消して歩く。

雪も積もってきており、足を取られたら確実にモンスターの餌食になってしまう。



「明日には、アンデットになってました…

 なんていうのは嫌だぞ…」



クリスは、あえて冗談を言いながら心を保とうと努めている。

しかし、残酷にもここに来て一番大きな魔物の鳴き声が聞こえてしまう。



「な、何…

 今のドラゴンみたいな鳴き声」



クリスは顔が真っ青になっているが決して雪のせいではない。

間違いなく巨大モンスターが生息しているのが分かり頭痛に悩まされていた。



「と、とにかく進むしかない…」



そして突如のことだった。

背後からモンスターの気配を感じて振り向く。

すると白いお面を被ったモンスターが真後ろにいたことに気づく。



「な、なに!」



更に鋭く尖った鎌が振り下ろされる。

咄嗟のことだったが神速で大きく距離を移動して回避に成功した。

しかし急に方向転換したため足を挫いてしまう。



「く、くそ…

 こんな時に…」



敵に火魔法を照らすと死神のような容姿だと認識した。

気配に気づかなかったのは宙に浮かびながら移動しているからだ。



「やばい、やばい」



視界が狭い中、正体不明の敵が迫りくる。

間違いなく死の山での絶対絶命の危機を迎えている。


クリスは挫いた足に回復魔法を急いでかけていく。

いっそのこと捻挫が回復してから行動しようと心に決めた。



「よし、何とか動けるようになった!」



そして死神は目の前まで迫ってきた。

丁度足の怪我も回復でき、相手を倒すまでの行動を即座に計算する。



「やっぱりこれだよな…」



螺旋の炎を発生させて守りを固める。

正体不明ならば絶対防御の炎で様子を見ていく。



だがクリスは愚策を選んでしまったと後悔する。

確かに死神がアンデットであれば効果は抜群だ。

しかし夜行性のモンスターは光に集まる習性がある。

気づけば強すぎる炎の灯りのせいで新たなモンスター10匹に囲まれてしまった。



「………」



死の山は、夜になると強いモンスターが徘徊する。

目の前にいる者たちは強者揃いだ。




このままでは、確実に死ぬ…

そうクリスは感じていた。

しかし必死に思考を張り巡らせていくと、

この危機を乗り越えるためのアイデアを思いつく。



「申し訳無いけど

 絶対に死んでやらない…」



そして幻惑魔法を発動し死神と身体を入れ替える。

すると自分の姿をした死神に向かって敵全員が突っ込んでいく。

必死に死神も攻撃を繰り出すがそれも叶わない。

瞬く間に魔物の大群の波に飲み込まれてしまった。



「魔力を送りたいけど、

 気づかれたら元も子もないからな…」



下心が出てしまうが今は逃げる事に専念する。



死の山の夜道は危険極まりない。

聖剣技によって魔力は消耗し続けている。

次の回復の結界の位置を探知魔法で確認し、

微かな火魔法の灯りを頼りに進んでいった…

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