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第116話 日没

クリスは探知魔法を使い移動しているが、

次の回復の結界が中々見えて来ない。

それどころか同じ道を歩いている気がしてしまう。



「賢者、さっきも通った気が…」



「間違いない…

 あの木はさっき確実に見た」



賢者も同意するように同じ道を繰り返し歩いている。

このままでは日が暮れてしまう。



「夜になったらマズイぞ…

 灯りはないから死角だらけになる」



クリスは顔が青くなっていった。

このまま回復の結界まで辿り着けずに夜を迎えると死の山の強力なモンスター達の餌になってしまう。



「ど、どうしよう…

 賢者…」



「まぁ、落ち着け、

 こんな時は幻惑魔法か妨害魔法…

 どちらかの可能性が高い」



初めて名前の出た魔法、妨害魔法。

魔法の対象を変えたり発動を阻止する魔法である。



「お前の中で無効化できるのが、

 唯一あるじゃないか!」



「へ?」



「だが、リスクはある…」



リスクのある選択肢と言っているが、夜を迎える可能性があるのであれば賭けるしかない。



「賢者、その魔法は?」



「封印魔法だよ…」



クリスはバルガスとの戦いを思い出していた。

封印魔法を使われた瞬間、クリスのスキルは聖剣も含めて全て使えなくなってしまった。



「確かにリスクはあるけど、

 敵を捕捉できるなら使うべきですね」



そしてクリスは深呼吸して覚悟を決める。



「行きます!」



クリスは封印魔法を発動する。

そして辺りの景色は変わり目の前に居なかったはずの魔物が現れる。



「あれは、レイスだ」



賢者が説明した魔物は、黒のローブを身に纏った死霊モンスターだった。

レイスの得意とする精神魔法により幻覚を見せられていた。



「クリス、出来る限り、

 奴に近づいて解除しろ」



クリスは子供の姿になってしまい聖剣の輝きも失っている。

今はマリアとも接続が切れているが致し方ない。

子供の姿のまま全速力で駆け抜ける。



「クリス、なるべく早く!

 他の魔物が集まらないうちに行け!」



賢者の掛け声と共にレイスに向かって全速力で走る。

レイスも自らを認識したクリスに攻撃を仕掛けようと試みるが魔法が使えず困惑している。



「よし、封印魔法を解除しろ」



賢者の言葉を聞いた瞬間、封印魔法を解除する。

そして即座にスキルを全開放した

するとマリアの魔力が急速に流れてくるのを感じる



「マリア…

 無茶してないよね?」



心配で仕方ないマリアは勝負所と判断して、

精一杯魔力を流し込んだ。



「おかげで最高速度が出せる!」



レイスが精神魔法を発動する前に神速と聖剣技で攻撃を繰り出した。

そして見事にレイスを一刀両断する。



「よ…く…った、クリス」



気のせいか賢者の声が聞こえ難くなっている。

ノイズのようなものが走り出した。



「賢者?」



そして通信は途絶えてしまう。

魔物の妨害ではなく通信機器の故障のようだ。

前世で機械に強かったクリスには一目瞭然だった。



「こんな時に機材トラブルかよ…」



クリスは製作者にクレームを入れたくて仕方ないが、

前世でもこんなやり取りがあったのを思い出し苦笑いしてしまう。



「夜になる前に結界に行かないと!」



急いで探知魔法を発動して結界の場所を把握する。

しかし、レイスとの交戦で場所は遠く離れていた。

二つ目の結界に行くよりも三つ目の結界に行った方が早い。



「迷っている時間が惜しい…」



クリスは即座に三つ目の結界に向けて走り出した。

しかし賢者が伝え忘れていた事が二つある。



死の山の恐ろしさの一つとして、夕方から夜にかけての日の沈みが圧倒的に早い。

更にもう一つは、夜の方が魔物は強くなる。



「な、なんだ?

 いきなり速いスピードで日が沈んでいく?」



太陽が倍速で動いているかのように沈んでしまう。

信じられない光景にクリスは呆れていた。



「う、嘘だろ…

 こんな時にモンスターが寄ってきやがる」



そして冥界のゴブリンが2体現れた。

現れて欲しくない時に現れるのがゴブリンである。



「あ〜前世の時にも苛々したな…

 ゴブリンには…」



クリスはゴブリンの背後に周り一撃で撃破する。

しかし、もう一体は身体強化をかけて突進をしてきた。



「速い!

 それなら新たに取得したスキルだ」



強化格闘術・極を使用した。

すると相手の突進に上手く合うように蹴りでのカウンターが決まる。

ゴブリンは、回転しながら吹き飛んでいった。



「す、凄い」



自分の新たなスキルに酔いしれていたが、余裕が無いことを思い出し、クリスは全速力で走り出した。



「あ、後どれくらいで沈むんだ?」



相変わらず賢者からの声はない。

しかし、マリアから送られる魔力の量が増えている。



「俺って愛されてるのかもな…」



クリスは自分で言っていて恥ずかしくなっていた。

更に出発前のマリアとの会話を思い出す。



「無事に帰れたら、

 マリアからご褒美が貰えるんだった!」



そう思い出した途端に何故か身体の底から力が湧き上がる。

そして目の前にグールが3体現れた。



「邪魔だ!」



螺旋の炎を発生させて焼き尽くす。

グールはアンデットだったことを思い出し効果のある技を当てた。




「やばい、薄暗くなってきた…」




三つ目の回復の結界まで、まだ距離がある。

クリスは日没まで残り僅かだと肌で感じ取っていた。

夜の死の山は迷い人を死へと誘う。

クリスはマリアからのご褒美を貰うために必死に駆け抜けて行った…

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