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第109話 強者

クリス達が研究所で事件を解決した後、

クレア達も食事処で昼食を済ませていた。



「はぁ〜美味しかった」



ユーリの目は、ハートのようになっており、

まさに至福の時を過ごしたようだ。

その様子を見てクレアとカートは苦笑いしている。


なぜなら三人で訪れた店で大食いチャレンジメニューが宣伝されており、ユーリはデカ盛り海鮮丼を見事に平らげて会計が無料になった。

クレアは店主の苛立つ顔を忘れられない。

店頭の看板で散々客を煽っていたが今日ユーリによって達成されたのだ。



「まさか…

 昼飯代がタダになってしまうとは」



クレアは予想外だが嬉しい誤算と思うことにした。

そして腹ごしらえを終えて歩き始めると、

前方から一人の人物が近づいてくる。



「すいません…

 道に迷ってしまいまして…」



黒い正装を身に纏う老人が助けを求めてきたが、

クレアは目の前の男が遥か格上の存在だと感覚的に察知した。

隙を見せたら一瞬で殺されると緊張感で張り詰める。



「あの、何処に行かれたいのですか?」



カートは純粋に困る人を助けようと返事をした。

すると老人は表情を笑顔のまま言葉を発する。



「水の神殿を探しているのです」



賢者が事前にカートへ神殿の場所を知らせていたため老人の質問に答えることが出来た。

老人は笑顔でお礼を言うとそのまま立ち去って行く。

そしてその老人の姿が見えなくなると、

クレアは張り詰めていた緊張の糸が切れる。



「ば、化け物め」



強者であるからこそ老人の圧倒的な力を察知できる。

クレアは既にその領域へと足を踏み入れ始めていた。



「どうしたんだ、クレア」



クレアは気にしなくて良いと手で合図をしたが、

これ程の強者を目の前にするとは思いもしない。



そして一同は寝床となる宿屋を探そうと歩き出した。



クレア達と離れて水の神殿に向かう老人は独り言を呟く。

先程まで笑顔だったが、今はまるで別人のような鋭い目つきへと変化している。



「あの青い髪がターゲットのハイエルフか…

 聞いていたよりも意外と髪が短い

 それと…」



老人は不敵な笑みを浮かべる。



「500年ぶりに強き若者を見た…

 この時代でもそれなりに楽しめそうだ」



この瞬間、圧倒的な強者がクレアとユーリを捕捉してしまった瞬間だった。



「我らも準備を始めようじゃないか…」



そのまま老人は水の神殿へと向かう。

そして、その腕に装備された契約の腕輪は怪しく光っていた…




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




研究者達を救出して教会本部へと送り届けた。

そして一件落着と思えたが賢者の指示により、

再度クリスは研究所に来ている。



「賢者様、何で研究所に戻ってるんですか?」



賢者は捕まっていた研究者達の前で魔導具を根こそぎ貰うのは心が痛かった。

そのため本部へ送り届けてから舞い戻ったのだ。



「万が一のこともある…

 今は少しでも力を身につけておきたい」



賢者は未来を予知する能力まで持っていないが、

危機を察知する嗅覚に関しては人並み外れていた。



「11階以降で古代魔導具を探す。

 どうせ研究者には価値も分からんからな」



古代魔導具はその効果を知っているかで価値が変わってしまう。

古代の知識がある賢者だからこそ生かせる物がある。



そして賢者と共にしらみつぶしに探していくと、

賢者の満足する魔導具が複数見つかった。



「よし、これは良い収穫だ…

 本部に戻ったら魔導具の開発も提案しよう」



来たる襲撃に備えて賢者は教皇ラグナに、

魔導具の開発、量産を提案することにした。



「さぁ、本部に戻るぞ」



そしてクリス達は本部で待つマリア達と合流するために研究所を出たのであった。



本部へ向かう道中で賢者は、契約の腕輪を回収できる人物を考えていた。

恐らく魔族の中でも限られている。



「まさか…

 奴が復活してる?」



賢者は魔王以外の人物の顔を思い浮かべていた。

魔王の側近であり実力は四天王を凌駕する。

考えすぎかと思ったが、このような予感は的中していたのを思い出した。



「戻ったら修行するぞ」



万が一を考えてクリスへ修行を提案した。

来たる襲撃に備えて万全に準備したい。

賢者は改めて気を引き締めたのであった。



それぞれの思惑が行き交う中襲撃の日は刻々と迫る。

そして強者達を退けるための修行が行われ、クリス達は更に力を付けていく。

その修行はクリスを色々と悩ませてしまうのであった。


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