マスク編 ～チャールズが語る～
私は、チャールズという者だ。
昔、戦争で死に損なった男だ。
今は役所で働いている。
地球での任務が完了して無事に帰還した彼が提出した報告書をまとめながら読んで、私が代わりに経緯を説明したいと思う。
この男の名前は、マスク。
アルファ星人だ。
この報告書を書いた人物である。
喋ることが非常に苦手な男だ。
マスクは、宇宙船のパイロットである。
惑星間で活動を行う専門員を現場まで運ぶ宇宙船を運転する仕事をしている。
マスクは優秀なパイロットだ。
腕前は、なかなかのものだ。
今回の仕事は、白石葉月救出の為に地球へ行く事だ。
道中は順調だった。
専門員のソフィアは、最初は優しく喋ってくれる女の子だったそうだ。
しかし次第に態度がきつくなっていったそうだ。
それは彼が無口で不愛想な男だからだ。
……要するに仲良くは、なれなかったのだろう。
地球に到着する直前、船内でこんな会話があったそうだ。
「マスク。地球に着いたら二手に分かれて葉月ちゃんを探すわよ」
「……………………俺も…………探すのか？」
「当たり前でしょ。あんた任務内容ちゃんと読んだ？」
「……………………地球に…………行く」
「違うわよ。地球で暮らしてる葉月ちゃんっの命がかかってるの。大事な仕事よ」
「……………………俺……パイロット……」
「二人で協力して任務を遂行するようにって書いてあるでしょ。運転だけじゃなくて、あんたも葉月ちゃん探しなさい」
「……………………そういう……意味なのか……？」
いつものパイロットとしての運転任務だと思っていたのに、人探しを手伝う事に戸惑ったそうだ。
地球に到着したら、彼らは二手に分かれた。
マスクも瞬間移動装置ミステルで街中に移動したが、なかなか人に声をかけられない。
「……………………白石葉月を知っているか？」
やっと声をかけて白石葉月の居場所を聞こうとするが、ほとんどの人に気味悪がられる。
ついに住人から警察に不審者として通報されてしまう。
通報を受けた警察は、うろついていたマスクを発見して職務質問する。
「君。ちょっと職務質問させてくれるかな？」
「……………………」
「名前は？」
「…………………………マスク」
「マスク？外国の人？旅行できたの？パスポート見せてくれる？何か身分を証明できるものある？」
質問攻めにされた彼は、その場から耐えきれず逃げ出してしまった。
なんとか逃げ切った。
だがそれから警察の巡回が強化されて、何度も見つかって追いかけられた。
彼は、歩いていた若い男に声をかけた。
「………………白石葉月を知っているか？」
その若い男は、白石葉月を知っているみたいだったので詳しく話を聞こうとするが、また警察に見つかってしまい、追いかけられる。
その逃走中、ミステル、マグナを落としてしまう。
しばらくの間、うろうろして橋のところにいた時、若い男に再び出会った。
そのタイミングでソフィアから白石葉月の住む家を突き止め、家族に事情を話したという連絡があった。
そしてソフィアと合流した。
彼が声をかけた若い男は、名前を緑田幸一と言う。
白石葉月の幼馴染であり、関係の深い人物であった。
そして白石葉月を保護して、アルファ星へ連れて帰ってきた。
こういった経緯だったようだ。
……ま、まあアレだな。
彼も彼なりに頑張っていたのだ。
ミステル、マグナの紛失の責任については、あまり深く追求されることはないだろう。
地球人には扱えないし、ただの石ころにしかならないからだ。
まあ現場も徐々に慣れていってくれるとありがたい。
次の任務での彼の活躍を祈る。
