表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第3話:動き出す者

前回のものに第2話を付け忘れてました。

失礼しました。

 白と黒、それ以外の存在しない世界。あらゆるものが存在し、何も存在しない世界。

 そこに一人の少女が立っていた。少女は黒衣服ブラックドレスを身にまとい、石造りの城に立っていた。

 

 「・・・めずらしいな。お前がここに来るなんて」


 後ろから聞こえたその声に対して、少女は振り返らない。


 「別に来たくて来たわけじゃないわ。それに正確に言えば私はここには居ない。ここに居るには唯の抜け殻よ」


 「抜け殻か・・・その言い方はあまり感心しないな」


 「本当の事よ。それじゃあ」


 「待て」


 立ち去ろうとしたところを後ろの奴が呼び止めてきた。


 「なによ、私は忙しいの正直に言えば、あんたの相手なんてしてる暇無いの」


 「一つだけ言わせてもらう。下手なことはするな。忘却エンドレス十字架クロスといえど、容赦はしないぞ」


 「分かってるわよ。私は何もしないわ。それと今の私は忘却の十字架じゃないわ。今は音無八雲おとなしやくもって呼ばれているの。それじゃ、今度こそバイバイ」


 言葉とともに八雲は煙のように消えた。


 (私は何もしない、か・・・)

 

 つまり他のもので手を出す、ということか。


 「ならば、そのコマを崩させてもらうとしよう」

  

 そこにいた者も音も無く消え、その場には誰も居なくなった。



                 ☆



 「頼む、一生のお願いだ!」


 何気ない昼休みの教室にその声は響き渡った。騒動の中心では俺、加賀美彰人かがみあきとが友人である亀田駿吾かめだしゅんごことカメラに向かって全力で土下座をしていた。

 

 「無理」


 「そこをなんとか!」


 「無理ったら無理!だいたいお前、友人に金借りるなんて恥ずかしくないんか?」


 そう、カメラの言うとおり俺はカメラから金を借りようとしていたのだ。

 

 「そんな事言われたって、無いんだから仕方ないだろ!」


 「無いって言うとるけどお前、先週までそこそこ金持っとったやろ。あの金はどこ行った?」


 「・・・いや、それを話すと長くなるんだけどね・・・」


 俺が金銭不足になった理由は唯一つ、先日、友人の烏丸燕からすまつばめさんにおごった、1ホール1万円もするゴールデンケーキだ。クラスメイトの橘真夏たちばなまなつにおごった分のダメージがやっと埋まりかけていたのに、第二波を受けた俺の財布はスッカラカン。学食・購買派の俺としては現在、昼食を取れるかどうかの状態なのだ。


 「まあ、そんな荒っぽい使い方すれば、あっという間にスッカラカンっていうのも納得いくわ」


 「分かってくれたんだね、じゃあお金借して・・・」


 「しかし金は借さんで」 

 

 「鬼!!」


 「そんなにピンチならおごった相手に借りればええやろ。真夏と烏丸やったか?その二人に借りればええやん」


 「だって、おごった身だろ?おごったのに金借りるって、なんか筋が通ってない気がして」


 「普通に考えたらそっちの方がよっぽど筋通っとるで」


 「そうか?」

 

 そんな風には思えんが。


 「しかし真夏と烏丸にゴールデンケーキを・・・念のため聞くが二人はその事知っとるのか?」


 「二人におごった事?いやたぶん知らないと思うけど」


 俺はその事についてあの二人には一切話してないし。


 「そうか二人とも知らんのか・・・烏丸って道場やっとるとこの烏丸か?」


 「そうだけど、お前烏丸のこと知ってたんだ」


 「本人の事はよう知らんけど、烏丸道場知らん奴はこの町にはおらんやろ」


 それもそうだ。


 「ただ気になるのが何で二人ともあんなにゴールデンケーキにこだわっていたんだろう?」


 高いケーキだから興味があるのはわかるけど、二人共は少し変だろ。


 「さあ、なんでやろな〜?(笑)」


 「何で最後に(笑)がつくんだ?」


 「さあ、なんでやろな〜?(笑)」


 「さっきとおんなじこと言ってるぞ。お前なんか知ってるだろ」


 「さあ、なんでやろな〜?(笑)」


 「・・・さっさと白状しろ!この変態が!!」


 「黙れゴラ!なめとんのかオラ!!しばくぞゴラァ!!!」


 「カメラが切れた!!」


 「だいたいテメエみたいな奴がおるから世の中が駄目になんねん!」


 なんだか話が飛び始めた。


 「まあそんなのど〜でもええ」


 そして勝手に終わった。


 「しゃあない、今日だけはおごったる」


 「ありがとうカメラ!!」


 「何言うとんねん。俺ら親友やろ(怒)」


 「親友ならなんで(怒)がつくんだ?」


 「そんなん気にすんな。とりあえず購買いくで」


 「おう!」


 こうして俺とカメラは購買に向かった。カメラにパンをおごってもらったが、飲み物はおごってもらえなかった。



                  

                   ☆



 出来事は3度目の特別課題だった。

 今回は偶然向こうで烏丸さんと真夏に出会い、一緒に行動していた。

 今回の課題は存在世界にいる怪物『ヒトデナシ』を10体倒せというものだった。

 9体目まで楽に倒し、10体目を倒そうとしたときだった。

 あいつが現れたのだ。


 「はい今日も今日とで始まりました深夜の特別課題〜〜〜・・・・」


 存在世界で俺は一人叫んでいた。正直寂しい。


 「彰人さん、また会えましたね」


 声を聞いて振り返ってみるとそこには巨乳三つ編み眼鏡っ子の烏丸燕からすまつばめさんだった。


 「あっ、烏丸さん」


 「ところで、どうして今叫んでたんですか?」


 「そこはあんまり触れないで・・・」


 理由は寂しかったからなんです。


 「あれ?彰人?その女の子誰?」


 今度は肩ぐらいの長さの髪のクラスメイト(貧乳)、橘真夏たちばなまなつだった。

 何か今回は知り合いに良く会うな〜。


 「彰人、今失礼な紹介された気がするんだけど」


 「気のせいじゃない?」


 コイツはエスパーなのか?


 「彰人さん、あの子は知り合いの子ですか?」


 そういやこの二人初対面だった。


 「えっと、こっちはクラスメイトの橘真夏、でこの子は烏丸燕、二人とも仲良くしてください」


 「「・・・・・」」


 ・・・え?何?二人から感じるこの威圧感は。


 「・・・烏丸燕です。よろしく、真夏さん」


 「・・・橘真夏。よろしく」


 俺、今全力でここから立ち去りたいです。


 「えっと、今日の課題は『ヒトデナシ』を10体倒せだったよね!?2人ともちゃっちゃと終わらせちゃおうよ!!」


 終わりたいのは俺です。


 「そうしますか」


 「まっ、その方がいいしね」


 そういうと俺たちは走り出した。・・・あの2人、やっぱ仲悪いのかな・・・?




 ・・・・・数分後


 「これで、9体目!」


 俺は威勢の良い掛け声を出しながら本日9体目のヒトデナシを両断した。


 「楽勝だぜ!!」


 「どこぞの特撮ヒーローみたいな言い方だね、それ」


 「いいだろ、俺が何言ったって。それより真夏、お前休みすぎだろ」


 「1対目にとどめさしたら何もしなくていいって言ったの彰人じゃん!」


 そういえばそうでした。


 「けどさ、烏丸さんの事も考えてよ。俺のサポートとかヒトデナシ倒すのとかしてたせいですっかりバテバっどぶおお!!」


 無言で真夏に殴られた。

 しかも恐竜帽子かぶった状態で。(詳しくは第1話を読んでね!)

 

 「ま、真夏さん?ワタクシ何かしましたか・・・?」                

     

 「知らない!」


 吹っ飛ばされた俺の質問に対して真夏はそっけない態度だった。

 ・・・やっぱ2人の様子が変だ。


 「彰人さん、早く10体目探しましょう」


 「そうだね。真夏、最後はお前も手伝えよ」


 「え〜。・・・しょうがないな〜わかった」


 真夏の参戦も決定したし、10体目を探すか。


 「その必要は無いぜ」


 俺の後ろで誰かがそう言った。烏丸さんでも真夏でもない。男の声だった。


 「なぜならお前らはここでリタイアだからだ」


 男の姿は明らかに俺たちとは違った。まず服装が学生服じゃない、マントを羽織っていてドッカの旅人みたいな感じだ。

 髪は短く切ってあるが黒い髪の部分部分は赤や黄色に染められている。

 そしてなにより、俺たちを見る目は、血に飢えていた。


 「誰だお前!」


 「お前らに名乗る名は無いがそうだな、腐った世界の清掃員、とでも言っておこうか」


 「ふざけんな!!」


 俺は自転車の鍵を一振りして付属物の大きな鈴を鳴らした。

 その瞬間、俺のサブウエポンが効果を発揮し、俺の身体能力を飛躍的にアップさせた。

 男の傍まで一気に近付き、拳を振るう。

 目の前にいた男は消え、拳は空を切った。


 「へ?」

 

 「遅い」


 いつの間にか男は俺の後ろにいた。そしてめんどくさそうに俺に裏拳を決める。

 俺は5メートル近く吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

 「彰人さん!」


 「彰人!」


 「さて、次はお嬢さん方か・・・やりづらいなぁ」


 男はブツブツ喋りながら2人に近付いてゆく。

 

 「っさせっかよぉ!!」


 起き上がった俺が今度はメインウエポンを発動させ、風の刃をマントの野郎に飛ばした。

 しかし

 

 「・・・しつこい!!」


 マントが振るった裏拳で風の刃が相殺された。そして俺のすぐ横まで高速移動し


 「寝てな」

 

 頭上に拳を食らった俺の意識はそのまま遠ざかっていった。


 「ったく、後はこいつらだけ、ちゃっちゃと終わらせるか」


 意識が完全に落ちる寸前に男がそう言っているのが聞こえた。



             

                 ☆


 

 正直勝てない気がした。

 父から剣を教えてもらっていたせいか、私は自分より強い相手が何となく分かるようになっていた。

 その直感が言っていた。勝てない、こいつとは戦ってはいけない、と。

 けど目の前で彰人さんがやられた。目の前にいるこいつが許せない。

 私はゆっくりと刀を抜いた。

 真夏さんも臨戦態勢に入っていた。


 「・・・君達もやる気なの?やだな〜何か弱いものいじめしてるみたいで」


 「・・・刀を向けられてるのにえらく余裕ですね」


 「当たり前でしょ。だって俺」


 男はポケットからスーパーボールのようなものと取り出した。


 「まだ武器使ってないもん」


 「ッ!!・・・・」


 その言葉にショックを受けた。今あいつは武器を使っていないと言った。つまりあの動きもあの力も武器の能力ではなくあの男自身の力という事になる。


 「んなもん知るかああ!!」


 ドガアアアアア!!

 真夏さんが拳で地面を砕いた。


 「ッあぶな!威勢良すぎでしょ帽子のお嬢さん!!」


 「いま少しいらっッときてるの!そんなの聞く義務ないの!!」


 「・・・こわ・・・」


 「ほら燕も!!」


 「!?は、はい!!」


 私は刀を天に向け男の頭上に雷を落とした。

 なんか久しぶりに名前を聞いた気が。


 「やったか!?」


 「真夏さん、なんかコッチが悪者みたいな気がしてきたんですけど」


 「ん〜、あたってるような、外れてるようなだね」


 「「!!」」


 「あ〜びっくりするのも無理ないわな。雷くらってぴんぴんしてる奴なんて、俺でもびっくりするもん」


 「どうやって避けたんですか・・・あの雷を」


 「これ」


 男は指の間に挟んだスーパーボールをこちらに見せた。


 「雷が当たる直前、軌道上にコイツを投げたんだよ。音速の速さでね。するとコース上に真空の道ができる。雷はその道を伝い、別のコースに行く。だから無傷」


 そんな人間離れしたこと、できるわけ


 「あっ、ちなみにスーパーボールの速さは」


 男が腕を振るったその瞬間。

 私の体が真横に吹き飛んだ。反対側からとてつもない衝撃を受けて。

 

 「こんなもんかな」


 「ゲホッゲホ!!」


 「これで2人脱落」


 「!?」


 真夏さんのほうを見ると壁に激突した真夏さんが気絶していた。


 「帽子の娘大丈夫かな〜?3つは当たってたし」


 「・・・くも・・・」


 「お嬢さん、早いとこ降参してよ。俺だってこんなことしたくないんだから」


 「よくも!!」


 怒りに任せて振るった刀は男に届かない。

 私の怒りに全く興味を示していない男は私の意識より速く、私の横を通過した。


 「これで3人」


 男が通過した直後、私は意識を失くし、深い闇へと堕ちていった。



   

                 ☆



 俺の意識が戻ったのは、烏丸さんが地面に倒れた直後だった。

 

 「烏丸さん!」


 考えるよりも先に言葉が出た。そうだ、俺はあの男と戦ってそれで・・・


 「おお少年、意識戻っちゃったのか。敗者復活ってとこか?」


 「!お前・・・」


 「おっとストップ!これ以上やっても意味無いよ。おれ自身もう帰りたいし」


 「知るか!」


 「・・・しゃあねえな、面倒な仕事引き受けちまったもんだぜ、分かった、やってやるよ。少年、名は?」


 「加賀美彰人」


 「そうか、俺はアラクネ。彰人、じゃあやるか、本当の戦いを」

 

 男いやアラクネは懐から8つのスーパーボールを取り出し、それぞれの指の間に挟んだ。


 「行くぜ彰人、そこの嬢ちゃんたちみたいに一発で沈んでくれんなよっ!!」


 思いっきり振るわれた腕から8つの弾が射出される。

 俺も奥歯でアメ玉を噛み砕き宣言する。


 「操るは『風』!強制突風!!」


 俺に当たりそうになる弾の起動を風の力で無理矢理変える。

 

 「やるな彰人、んじゃもうちょい威力上げてみっか!!」


 更に強力な力で弾丸が風の壁にぶつかる。さすがにこれ以上は防御しきれない。


 「だったら攻めるのみ!!」


 障壁を解除し風の力を脚力補強に移す。


 「似たような手でさっき負けただろ」


 真っ直ぐ振るった俺の拳にタイミングを合わせ、アラクネが俺の真横に移動する。


 「待ってたぜこの瞬間を!!」


 移動の直後で動けないアラクネに体当たりをかました。風の強制方向転換だ。


 「何!?」


 さすがにこの動きは読めなかったらしく、アラクネが壁にぶつかる。


 「ゴハッ!!」


 「どうだ!!」


 さっきの攻撃のリスクとして俺にも少しダメージはあったが、あんまし気にしない。


 「・・・やるな彰人。正直予想外だよ。俺はお前に敬意を表する、よってメインを使い貴様を倒す」


 「なっ!?」


 メインを使い?つまり、あいつが今まで使っててのはサブだったって事か!?


 「いくぞ、彰人」


 そう言った途端、アラクネのマントから8つの蜘蛛の腕が現れた。


 「っく、加速!!」


 しかし加速は起きず、俺はその場に倒れた。

 タイムリミットの5分が経ってしまったのだ。


 「・・・やっば・・・」


 ポケットを探ってみたがこれまた最悪の展開が起こっていた。アメのストックが切れた。


 「おいおいどうした、急に逃げ腰じゃねえか!」


 「くっそおおお!アメさえあればあんな腕!一撃でぶちぎって・・・あっ!!」


 そうだたしか胸ポケットに1個・・・あった!

 再び奥歯で噛み砕き宣言す・・・これハッカ味だ!!


 「ぶえっく!ッッ母さんあれ程ハッカはだめって言ったのに・・・・」


 「何言ってんだ、ほれいくぞ!」


 8つの腕の同時攻撃が始まる。コッチだって。


 「操るは『風』!用途は『切断』!これで終わりだ!!」


 風の刃をつけた状態で8本の腕と激突した。

 俺の体が蜘蛛の腕に吹き飛ばされた。


 「・・・今度こそ終わりだ」


 「っく・・・そ・・・・」


 「お前は本当に良くやったよ。俺相手にここまでできたんだから」


 「うる・・・せ・・・・え」


 「だからごほうびだ。お前らあと1体倒すとか言ってただろ、ほれ、やっておいてやったぞ」


 「よけ・・・な・・・・・こ・・・・」


 「今は命がある事に感謝しな。ほんで、今度会う時はもっと強くなってろ。俺が本気を出せるくらいに」


 アラクネの姿は消え、俺はいつもの教室に倒れていた。しかし、一つだけいつもと違った。


 「・・・・ちく・・・・しょ・・・」


 涙も流れず、俺はただ、その場に倒れたままだった。

 負けたんだ、俺たちは。完全な・・・負けだ。

やっと投稿できました。部分的に1話を読まないと分かりづらくなっております。(すんませんほんとに)あと本文で触れることができなかったのですが谷口君が生きてます。(2話参照)

ご意見ありましたらお待ちしております。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ