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第1話:春休みの出来事

 ありふれた町にあるありふれた高校。近くにコンビニやら本屋やらが立ち並ぶごく普通の高校に俺、加賀美彰人かがみあきとは通っている。

 いや、通っていた。と言ったほうがいいだろう。

 別に高校を退学になったわけではない。


 通っていたのがありふれた高校だったのは、少し前の話だ。


            ☆


 遡ること数日前、3月14日の事だった。


「アメアメ、降れ降れ、甘いアメ〜♪」 

 幼稚な替え歌を歌いながら俺はいつもどおりに高校へ通っていた。

 俺が通うのは東大合格者を何人も出している高校でもなければ、昔有名人が通っていたわけでもない。本当にどこにでもある普通の高校だ。

 いつもの様に下駄箱に靴を入れ、いつもの様に階段を上り、いつもの様に自分のクラスの自分の席に着いた。

 

 「おはよう彰人、今日は早かったね」


 そういって話しかけてきたのは、クラスメイトの橘真夏たちばなまなつだった。肩まで届きそうな髪に気が強そうなつりあがった目が特徴の女の子だ。男としての欲を言うと、胸が無いのが無いのが少し残念だ。


 「ま、たまにはいいかなと思ってさ」

  

 「ね〜それよりもアメ持ってない?あたしお腹すいてて」

 

自分から話題をふっといてそんなこととはなんだ。


「しょうがねぇな、ほらよ」


 そう思いつつも、俺はそういってポケットに手を突っ込み、入っていたアメを真夏に放り投げた。

真夏は見事空中キャッチを決めるとアメを包みから出し、口へ放り込んだ。


 「いつも思うけど、彰人って本ッッ当にアメ好きだよね」


 「当たり前だろ、なに分かりきったこと言ってんだよ」


 「かばんの中にアメ玉いっぱい入れてるくらいだしね」


 俺がうるさいと言い返そうとしたその時、臨時の放送が入った。内容は全校生徒すぐに体育館に来いというものだった。

 

 「なんだろ?」


 首をかしげながら真夏が俺に聞いてきた。


 「俺に聞くな。どうせ、最近不審者が多いから気をつけろ。とかそんなこと言うだけだろ」


 「つまり、彰人みたいな奴には気をつけろってことだよね」


 「しばかれてぇのか貴様は!」


 そんな会話をしながら、俺達は他の生徒にまぎれて体育館へと向かった。


                  ☆


 体育館に入ってまず思ったことは、知っている教師が一人もいないということだった。ハゲで眼鏡の谷先生たにやんも、ヤクザ顔負けなゴツイ山谷先生ゴリラも、ウチのクラスの担任橋本先生(美人)も、誰一人いなかった。

 

 「ねえ、彰人はどう思う?」


 「毎回思うがナゼ俺に聞く!?そりゃぁ確かに変だとは思うけど・・・」


 「ソコの生徒!口をつつしみなさい!」


 そう言って俺達を叱ってきたのも全く知らない教師だった。

 改めて周りを見回してみると生徒の周りを歩いているのは全員知らない教師だった。今まで一度も会ったことが無いとかではなく本当に知らない教師ばかりなのだ。

 

 (確かに変だよな・・・)


 そんなことを考え始めたときだった。

 

 「はいはーい、皆さん静かにしてくださいね〜〜、今から集会を始めますよ〜」


 スピーカーを通して聞こえたその声に体育館にいた生徒全員が黙った。なんだ、今の子供の声は?

 

 「ちょっと待ってくださいね〜、今行きますよ〜」


 ふと壇上を見てみると舞台袖から誰か出てきた。

 

 ドテッ!!(転ぶ音)


 そして顔面から思いっきり転んだ。痛そ〜。

 舞台袖から出てきたのは小学生くらいの髪の長い女の子だった。

 

 「なんだ?なんだ?」

 

 「なに、あのちびっ子?」

 

 「「かわいい〜〜〜」」


 体育館中からそんな声が聞こえ始めた。いやどうでもいいんだよ、そんなことは。

 女の子はそのまま舞台の真ん中まで行くと、再び喋り始めた。

 

 「えっと、皆さん始めまして、今日から新しい校長になることになりました、音無八雲おとなしやくもです。よろしくお願いします。」


 ああ、なるほど、新しい校長だから舞台の上に立ってるのか、納得なっと・・・・・・・校長?


 「「「校長おおおおおおおおおおお!?(全校生徒の声)」」」


 そのときのみんなの声ッたら、もううるさいこと。


 「みっ、みなさん!?そんなに驚かないで下さい!それから静かにしてください!今は集会中ですよ!!」


 そんなこと言ったって、見るからに小学校5年生くらいの女の子が新しい校長だというのだ、あのちびっ子が校長?ばかげてるにも程がある。きっと、本物の校長たちが俺達を脅かそうとしてるんだ。そうに違いない!どこだ?どこに隠れている?


 「えっと、念のために言いますけど・・・」


 俺が校長達の捜索に全力を注いでいたとき、新校長がまた喋りだした。


 「今までいた先生達は全員やめてもらいましたから、どれだけ探してもいませんよ〜」


 「・・・・・・・・へ?」


 「「「なにいいいいいいいいい!!!!(全校生徒の声)」」」


 今日一日であと何回驚けばいいのだろうか。

 しかし、これでようやく前の校長や先生達がいなかった理由がはっきりした。解雇されたのならこの場にいるわけが無い。

 

 「彼らには申し訳ないと思ってますが、これからすることのために、彼らにはやめてもらう必要があったんです。あっご心配なく、死んではいませんから」


 いやそんなこと言われたって・・・・・・


 「ではこれから、みなさんに集まってもらった理由を教えますよ。別に私の自己紹介のために呼んだんじゃありませんからね」


 考えがまとまる前に話は進んでしまった。ちょっと待ってくれよ、まだ前の校長がいない理由までしか理解してないんだから。

 

 「みなさんには、これから特別課題を受けてもらうことが決定しました」

 

 その一言で全校生徒から「え〜〜」という嘆きの声が聞こえた。そらそうだろ、特別課題受けろって言われて、「やった〜〜」なんていう奴がこのよにいるわけが無い、もしいたら俺が殴ってソイツの目を覚まさせてやる。

 

 「新一・三年生は毎朝授業前に一時間みっちり勉強してもらいますからね」


 新一・三年から苦痛の声が聞こえてきた。

 残念でしたね新一・三年の皆さん、今の校長の話だと二年は特別課題を受けなくても良さそうだ。よかった〜、新二年で。


 「新二年生の人たちは、新一・三年生の人より特別な特別課題を受けてもらいま〜す」


 なんてこった。


 「一・三年生の皆さんは教室に帰っていいですよ〜、ここからは二年生だけに話がありますから」


 そして一・三年の奴らは「めんどくせーなー」とか言いながら教室に帰ってた。


 (めんどくせーのはこっちだよ、あーなんで俺、こんなトコにいんだろ・・・)

 

 実はまだ学校自体は春休みの途中で本来ならこんなトコにいるはずは無いのだ。

 特に部活にも入っていない俺は、この後どうしよー。とかそんなことを考えていた。


 「新二年生のみなさ〜ん、だいじょ〜ぶですよ〜。ほんのちょっと話したら終わりますから〜」

 

 では一秒でも早くそのほんのちょっとを終わらせてくれ。


 「では、二年生の特別課題について話しますね〜。皆さんに受けてもらう課題は午前0時から開始されるもので〜す。詳しくは後ほど!以上、解散〜」


 ・・・・・・・・・わけも分からないうちに、マジで、ホントに、あっという間に、校長の話は終わった。



                   ☆

 

 校長の話も終わって俺たちは教室に戻っていた。


 「でさ〜、彰人はどう思う?」


 「何が?」


 「二年の特別課題」

 

 「深夜0時から開始されるって言ってたあれか?ふざけんなとしか言いようがないわ」


 「何やるんだろうね〜」


 「お前・・・もしかして楽しみにしてるんじゃないか?」


 「真夏が楽しみにするのも当たり前やろ!!」


 俺と真夏の会話に入ってきた関西弁はクラスメイトの亀田駿悟かめだしゅんご、通称カメラだ。


 「突然の教師全員交代、深夜0時から始まる特別課題!そしてロリな校長!!新聞部にとってこれ程のネタはないやろ!!!」


 ちなみにこいつは新聞部所属でちょっとした事でも新聞のネタにしようとする奴だ。


 「ってか、なんでロリな校長がラストなんだよ!」


 「そら、ロリがメインやからに決まっとるやろ!!」


 このロリコンが。


「彰人はロリの破壊力を知らんからそんなことが言えんねん!あの威力を目の当たりにすれば、二度とそんなこと言えんようなるで!!」


 じゃあ、知らんでもいいや。


 「はいはい、男同士の話はそろそろやめて、もう帰るよ」

 

 真夏にそう言われた俺とカメラは会話をやめて、帰宅準備を始めた。

 結局、特別課題についてはなにもわからなかった。




 そして迎えた3月30日、現在時刻は午後11時55分。あの校長が言っていた特別課題の第一回目だ。うちの親もよく深夜に学校行くの許可してくれたな・・・。


 「当たり前なんだろうけど、やっぱ深夜の学校って、なんか不気味だよなぁ」


 まっすぐと暗闇に続く廊下はいつも通っている場所だとは思えないほど不気味だった。 恐怖で逃げたくなる心に鞭を打ちながら、俺は目的の教室にたどり着いた。

 教室に入った俺はこれからすることを確認するために、あの日、帰る直前に渡されたプリントを取り出した。プリントには、印刷された字で、こう書かれていた。


 『その一、特別課題当日は好きな物を4つ持ってくること(勉強道具でなくても良し)』

 『その二、課題5分前には必ず指定された教室にいること』

 『その三、家に帰るまでが特別課題です』

 

 ・・・・・・・・なんも分からん!!

 ちなみに、持ってこいといわれて俺が持ってきたものは、アメ玉(好物)、手さげカバン(荷物しまう用に)、MDプレーヤー(ずっと聴いてて)、自転車の鍵(偶然ポケットに)。

 ・・・・・・・俺は一体何がしたいんだろう?

と、そんなことを考えてる間に午前0時まであと1分、俺以外の奴は一人もいない。


「他の奴らはどうしたんだろ?・・・まさか!?これは俺を脅かすためのドッキリだったのか!?ちくしょー!!そういうことかよ!帰ってやる!!」


 キレ気味に教室を出ようとしたときだった。午前0時の鐘が校内に鳴り響いた。

 そして、俺の知る世界は、姿を変えた。

                   

                  ☆


 一言で言うなら、そこは白と黒の世界だった。二つの色以外に色の存在しない世界。

 どう考えたってふざけてる。

 俺がいたのは学校の教室だったはずだ。しかし、今いるのは石造りの巨大な部屋、おそらく城かなにかの中だろう。

 理解できない。どうして俺はこんなところにいるんだ。

 そしてふと、ポケットから落ちたプリントに目をやった。俺は目を疑った。


 (プリントの内容が変わってる・・・!?)


 『加賀美彰人君、ようこそ存在世界へ、そっそくだが君に特別課題についての簡単な説明をしよう。』

 『まず、今回の課題だが、そこにいる怪物を倒してもらいたい。そのために君には武器が渡してあるはずだ。怪物を倒せば課題クリアだ。クリアするまで、そこから出ることは出来ない。』

 『次に君に渡してあるという武器だが、この世界に来るにあたって君は何か物を4つ持ってきているはずだ。そのうちのひとつをメインウエポンとし残りの3つはサブウエポンとして使ってもらう。この世界に入った段階で、4つの道具にはそれぞれ特有の能力がつけられた。ちなみに、君のメインウエポンは『アメ玉』だ。それらを駆使して課題クリアに全力を尽くしてくれたまえ。ちなみに今回の課題ではメインウエポンしか使えないので注意するように。』

 『そして君のメインウエポンであるアメ玉の能力だが・・・・・』


 「・・・・・・・・・」


 プリントに一通り目を通し終えても俺は少しの間、黙り続けた。

 ふざけてやがる。存在世界?怪物を倒せ?そんなこと知ったこっちゃない。

 課題クリアさせたいなら俺以外の誰かにしてくれ。

 ・・・でもここからは早く出たいし。


 「しゃあねぇ、ちゃっちゃと終わらせて、とっとと帰るか」

 

 そういって歩き始めたとき、誰かが部屋に飛び込んできた。

 敵かと思い俺は身構えた、しかし入ってきたのは・・・。

 

 「真夏!?」


 「彰人!?」


 「お前、何でここにいんだよ!教室にはいなかったはずだろ!」


 「彰人こそ教室にいなかったじゃない!ひとりぼっちで暗い教室って、不気味なんだからね!」


 どうやらコイツは別の教室にいたらしい。なるほど、どおりで誰も来なかった訳だ。


 「って、そんなこと話してる場合じゃなかった!逃げて彰人!全力で!!」


 「はぁ?いきなり出てきて、なに言ってん・・・・!」

 

 俺が言い切る前にそいつは来た。

 色は銀色、形状は人間ヒューマン。見た目は骨格標本を銀紙で包んだような感じだ。赤く光る両目は確実にこちらを認識している。


 「あれがプリントに書いてあった怪物か・・・・・・えげつねぇ見た目してんな」


 「そんなこと言ってないで、彰人も逃げるよ!」


 「なに言ってんだ、アイツを倒せば課題クリアで元の場所に戻れるんだぞ、さっさと倒しちまおうぜ」


 「だって、アイツ・・・・・」


 銀色のそいつは俺に向かって拳を振り下ろしてきた。そこそこケンカ慣れしている俺は相手の攻撃を避けながら怪物との距離をとる。

 振り下ろされた拳が地面を砕いた。


 「めっちゃ力強いよ」

 

 「逃げるぞ」


 そういって俺は全力で走り出した。真夏も後ろからついてきた。


 「彰人、さっきのセリフは何だったの!?さっさと倒すんじゃなかったの!?」


 「うるせえ!あんなバカ力とまともにやり合ったらこっちが負けるに決まってんだろ!!」


 「男の子なんだから少しはかっこいいとこ見せてよ!血糖値高いのばっか見せられても困るんだよ!」


 「俺の血糖値は普通だ!!」


 真夏と口げんかをしながら俺は奴の姿を確認した。

 追ってきてはいるがそれほど早くは無い、パワーはあってもスピードには欠けている。


 「ところで、真夏は何の武器にしたんだ?逃げてるってことは、武器は効かなかったんだよな」


 「あっ、そっか、その事すっかり忘れてた」

 

 おいコラ、このやろう。


 「じゃあ武器使って戦えばいいだろ!それで課題は終了だ」


 それを聞いて真夏はう〜んと言いながら何かを考え始めた。この状況で何を考え事してんだこいつは!

 

 「・・・ハッピー・ヘヴン」


 「はあ!?」


 「帰ったらハッピー・ヘヴンのゴールデンケーキ、1ホールおごってね」

 

 「なっ!?ってめ、ふざけんなよ!あの店のあのケーキ、1ホール1万円すんだぞ!!」


 毎回思うがナゼあのケーキ屋のあのケーキだけはあんなに高いのだろう?


 「じゃあ、武器使わなーい」

 

 「こ、このやろ〜」

 

 「それが嫌なら、彰人が武器使えばいいじゃん」


 「お、俺の武器は使うのに条件があんだよ・・・今の状況じゃ使えねえ」


 「ふ〜ん、じゃあ、ゴールデンケーキね♪」


 「くっ!!・・・・・・しょうがねえ、分かったよ!!」


 「よっしゃあ!交渉成立!!約束、絶対守ってね!」


 そう言うと真夏はカバンから帽子を出してかぶった。そして奴のほうへ向き直り、走り出した。

 それに気づいた奴は近づいてくる真夏に向かって拳を振るった。


 「がおおおおおおおおおおおおおお!!」


 しかし、奴の攻撃が届くよりも早く、真夏は雄たけびを上げながら拳を振るっていた。真夏の攻撃を浴び、奴は後方へと吹っ飛んだ。

 真夏のかぶっている帽子は恐竜のデザインだった。


 「す、すげぇ・・・・・・」


 後ろで見ていた俺はそう言うしかなかった。 後ろで呆然としている俺に真夏が満面の笑みでVサインをしていた。


 「ゴールデンケーキね♪」


 ・・・・・・マジでおごるのか・・・。


 「そんなことより、早くアイツにとどめさせよ」


 「ほいほーい、ってあれ?」


 「あ?どうした?」


 「あの銀マネキン何か様子が変だよ」


 「銀マネキンて・・・いや、それより、様子が変ってどんな風にだ?」


 「なんか燃えてる」


 「率直な意見どうもありがとう」


 俺も奴の姿を確認すると確かに人型の炎が苦しそうにうごめいている。

 

 「真夏がやったんじゃないのか?」

 

 「ううん、違うよ。さっきの攻撃にそんな力ないもん」


 「じゃあ、一体誰が・・・」


 

 そのときだった。


 「ッ!!真夏!避けろ!!」


 「へ!?」


 俺の言葉に反応し切れなかった真夏を俺が突き飛ばした。その直後、真夏が立っていた場所を炎弾が通過した。間一髪とはこのことだろう。

 俺は燃える人型の炎の奥に赤く光る目を見た。その目の周りには複数の火の玉が飛んでいた。

 

 「彰人、もしかしてだけど」

 

 「ああ、たぶんそうだろうな」


 「アイツが本当のターゲットだ」


 今度は銀色の獣、見た目からしておそらく、狼だろう。燃えカスとなった人型の奴を口に銜えていた。相当強いんだろう。

 だが


 「真夏、選手交代だ。今度は俺がやる」


 たった今、俺の武器の発動条件が満たされた。今の俺の敵ではない!


 「どうしたの彰人、急に強気になっちゃって、頭どうかなっちゃったの?」


 「失礼だぞお前!!」

 

 人がせっかくやる気になったのに!


 「それだけの大口叩くってことは、勝てる自信があるんだよね」


 「当然だろ」

 

 「じゃあ、言って来い!」


 「おう!!」


 こっからが俺の、本当の初バトルだ!!


           

                 ☆



 真夏が物陰に隠れたのを確認し、俺は銀の獣と向き合った。

 プリントにも書いてあったが俺の武器はアメ玉だ。普通なら武器として使わないし使ったとしても何の役にも立たないだろう。

 しかし、この場では違う。

 獣が俺に向かって迫ってくる。その間も奴は炎弾を飛ばし続けてきた。俺は全ての炎弾を避けながらポケットに手を突っ込んだ。

 取り出すのはひとつのアメ。

 

 「まずアメを口に放り込む!」


 俺はプリントに書いてあった使用法を復唱しながら。


 「奥歯でアメを噛み砕き!」


 能力発動の手順を踏み。


 「そして唱える!!」


 発動の条件を満たした。


 「操るは『炎』!」


 「用途は『爆発』!」


 「そのまま吹っ飛べ!!」


 俺の言葉とともに獣の周りを飛んでいた火の玉が獣を巻き込みながら爆発した。

 コレが俺の武器の能力。アメを噛み砕いてから5分間、俺から半径10メートルの中に存在するこの世の万物1つ、操る力。

 しかし奴もそう簡単にやられてはくれない。おそらく奴自体が炎に強いのだろう。

 怒りに燃える目でこちらを見ながら大量の炎弾を一斉に放った。

 数にして約20弱。

 初撃にコレが来ていたらおそらくやられていただろう。

 しかし

 

 「用途は『操作』」


 今の俺には通用しない!

 全ての炎弾は俺に当たる前に空中で静止した。

 

 「合わせの用途『切断』」


 そして俺は役に止めを刺すべく言葉を放つ。


 「形状は『剣』!!」


 言葉とともに静止していた炎が紅蓮の刃へと姿を変える。

 それを確認した俺は獣に向かって走り出した。獣の周りを飛んでいた火の玉はさっきの攻撃で全て飛ばしまっている。今奴を守る物は何も無い。

 俺は獣のふところにもぐりこみ、そして。

 銀の獣めがけ一気に炎剣を振るった。

 銀の獣は真っ二つにわかれ、べチャリと音を立てて地面に落ちた。

 

 これが、特別課題第一回目終了の瞬間だった。


  

                ☆


 目が覚めた時、俺は自分の部屋の自分のベッドの上で寝ていた。

 枕元のデジタル時計に目をやると現在時刻は3月31日の午前10時30分。

 元気の良い子は外で遊んでいる、俺みたいな奴はぐ〜たらしている時間だ。

 

 「夢・・・なわけねーよな」


 あの獣を倒した後の話だが、気が着いた時、俺は最初に入った教室にいた。もうやることもないし帰ろうと思って校舎の外に出てみたら校門の前で真夏が待っていて、まあ夜も遅かったし、しょうがない送ってくか、とか思ったので、俺は真夏を家まで送り届けてから家に帰った(ちなみに真夏はあの獣をギンネコと名づけた)。そして俺は自分の部屋に入ってすぐ、眠りに着いたのだ。

 つまりこの状態で寝てることこそが俺が深夜に学校へ行ったことを証拠付けているのだ。

 まあ、それ自体も夢だったという可能性も否めないが。

 それを確認するすべが一つある。


 「お〜〜〜い彰人〜〜〜〜朝だぞ〜〜〜〜」


 ・・・・・・外から真夏の声が聞こえてくる。アイツの目的はただ一つ。

 昨夜約束したゴールデンケーキだ。


 「・・・やっぱり、夢じゃないんだな・・・・・・」


 ため息をつきながら俺は部屋のカーテンを開けた。明日になればきっとあの戦いの事も分かるだろう。

 明日から新学期だ。

はじめまして、雪無サンタです。

初めての投稿で緊張しまくりです。

感想などいただけたらうれしいかぎりです。

これからもがんばって更新したいと思います。


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