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「……えっ、えぇ!!!???」


 訂正する間もなく日向くんにお姫様抱っこされて運ばれる。まさかの事態に理解が追いつかない。


「危ないから暴れない」


「……は、はい!」


 日向くんに静止され一旦冷静になる。冷静になればなるほど今の状況が天国すぎて飲み込めない。


「……い、いいんですか…………」


「病人は大人しく甘えていればいいんだよ」


「……あ、ありがとうございます」


 冷静になると今度はさっきの重大な言い間違えを訂正していないことに気づいて身体から汗が滲み出る。


「……そ、そのさっき言ったのは間違いで…………その……なんというか……」


「熱のせいだもんね?」


 そんな私の心配事すらも日向くんは逃げ道を用意してくれる。私はそこに導かれるままに飛びつく。


「……ッ! ……そうです! ……全部熱のせいです! ……だから……その……さっきのは気にしない方向で……お願いします……」


「分かったよ」


(……よかった……変な誤解されなくてすんだ……)


 言い間違えの問題を解決したことで安心する。しかし今の状況では他にも色々と乙女の問題があるわけで、今度はそれが気になりはじめる。


「……あと……その……重くないですか?」


「全然軽いよ」


「……ほ、本当ですか、う、嘘無しですよ」


「本当、本当だって」


「……よ、よかったです」


「熱あるんだからそんなこと心配しなくても」


「……お、乙女はいつでも気になるんですよ」


 太ってると思われないだろうか、そんな不安も日向くんに取り除いてもらう。そこまで来てようやく日向くんにお姫様抱っこしてもらっているという、最高のシチュエーションを実感できるようになる。


(……日向くんが……近い……そもそも抱えられてるし……顔から火が噴きそう……)


 日向くんに運んでもらうという密着状態が心臓の音を速くする。


(それにこんなアングルから日向くんを眺められるなんて……)


 そんな無限に体感したい幸福な時間もすぐに終わりが来てしまう。


「じゃあ、ゆっくり下ろすよ」


「…………はい」


 そもそもお姫様抱っこの距離はリビングから部屋までの短い距離な訳で、名残惜しいけどすぐに終わってしまう。


「……あ、ありがとうございました」


「うん、力作業なら任せて」


「……私を運ぶのは力作業ってことですか?」


「あ、今のは誤解だって」


「……冗談ですよ……運んでくれてありがとうございます」


 名残惜しいと思っていたのに日向くんの一言で吹き飛んでしまう。日向くんは日向くんで横になった私のために身の回りに私の必要そうなものを持ってきてくれる。


「あと必要そうなのはある?」


「……ないと思います。……全部日向くんが用意してくれましたし……ありがとうございます」


「じゃあ後はゆっくり休むだけだね」


「……そうですね」


 机の上にあった体温計を日向くんが見つけた。


「体温もう一度測っとこうか」


「……はい」


 言われるがまま手渡されたものを挟んで体温を計る。自分的には前回計ったときよりも体調が良くなっていると思う。計り終えた体温計を見ると37.8度で想像していたとおりだった。


「だいぶ下がったね」


「……そうですね、日向くんのおかげです」


 体温が下がったのは日向くんが看病してくれたからだろう。


(…………今度お礼しないとね)


「木陰もだいぶ落ち着いて時間もちょうど良いしそろそろ帰るよ」


 時計を確認すると20時半を少し過ぎて、普段日向くんが帰る時間よりも少し遅いぐらいになっていた。 


「……えっ、あ……そ、そうですよね……ほ、本当にありがとうございました」


「無理しないように安静にね」


「………………はい」


(……そうだよね帰っちゃうよね)


 喪失感が胸を締め付ける。

 それと裏腹にテキパキと帰り支度を済ませている姿を見ると徐々に寂しさが膨れ上がってきた。


 熱が下がったとはいえ不安になってしまう。


「何かあったらメールでも電話でも連絡して。できるだけすぐ来るから」


「…………ありがとうございます」


(……あ、あぁ帰っちゃう)


「……ま、待って」


 咄嗟に日向くんのズボンを掴んで引き止めてしまった。頭で考えるよりも心が動いてしまった。


「ん、どうかした?」


「……あ、ええとその…………」


 他に何か理由も思いつかず引き止めてしまったのならいっそ本心をと、自分の心に従って話すことにした。



「……も、もう少し……私と一緒に居てください……」



「……め、迷惑なのも分かってるんですけど……ひ、一人は怖いし……寂しいですし……ね、寝るまで! ……私がね、寝るまで一緒に居てくれませか……」


 怖くて日向くんの顔を見れない。俯いて日向くんを掴んだまま返答を祈るように待つ。


「分かった、木陰が寂しがるなら居ようかな」


「……ほ、本当にいいんですか? ……か、家族が心配したりしないですか?」


 私のわがままに付き合わせてしまった。迷惑をかけてしまうかもしれない。


「ちゃんとメール送るから平気だよ」


「……そうですか……ありがとうございます」


「でも寝たあとの戸締まりとかはどうすればいい?」


 日向くんは着々と私が寝たあとに備えて話を進めてくれる。そんな会話が私のわがままを受け入れてくれたと思わしてくれる。


「……戸締まりのあと鍵をポストのに入れてくれれば……」


「分かった、忘れないように戸締まりしたらメール送るよ」


「……あ、ありがとうございます、よろしくお願いします」


「木陰は安心して横になってて」


「……は、はい」


 私は安心して日向くんを掴んでいた手を離した。



 ◆◇◆◇◆◇ 

面白いと思った方、続きが気になると思った方は



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(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに



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