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お礼の輪輪輪

 

 モゾモゾと布団に潜り込んで日向くんを観察する。何やら真剣な表情でペンを走らせていた。おそらく学校で出た課題だろう。


(合法的に日向くんの横顔が見れる…………)


 今はそれを堪能できる程度には余裕があった。何かあっても日向くんが居るという安心感があるのも大きい。


(日向くんは私にとっての特効薬とも言える……)


 覗いていると日向くんが走らせていたペンを止めた。一段落付いたみたいだ。


「そうだ、ノート開いたついでだし今日休んだ分の授業内容見せとくよ」


「…………ど、どうやってですか? ……そのまだ勉強できるほどの体調では……ないですよ……?」


 日向くんにマンツーマンで勉強を教えてもらえるのなら、単に幸せという言葉では言い切れないほどの至福だが、悲しいことに今の私にはそれができない。


「いや写真でパシャっとする」


「……なるほどです」


 あったかもしれない日向くんとのマンツーマンが無くなるのは寂しいが休んだ分の内容を知れるのはありがたい。

 過去の私を考えると休んで内容を見せてもらえるような関係性の人が居るということが私にとっては緊急事態だ。


「うーん、やっぱ俺が撮ってメールで送ろうか」


 寝込んでいる私の状態を見て考えてくれたのだろう。


「……い、いえ、手間なので私のスマホ使って下さい……送る手間が無くなります」


 日向くんにスマホを手渡す。ほとんど日向くんが動いてやってくれたけど。


(……あ、二人にまだメールのお礼できてないや)


 メールという言葉を聞いて思い出した。返信しようとしたタイミングで電話が来たから返せていなかった。

 返信しようと思いもしたが私の体調と日向くんが看病に来てくれるという状態でそれどころではなかったからだ。


「…………あ、あの、メール……ありがとうございました……その、まだ返信できてなかったんですけど……凄く……本当に元気が出ました」


「そこまで喜んで貰えるなら送って良かったよ」


「……はい……嬉しかったですよ」


 私の希望的な見方かもしれないが日向くんも嬉しそうな反応をしてくれていそうだった。


(これが幸せの輪……)


 布団に包まり幸せに包まれていた。


「木陰、はいこれ、スマホ。ちゃんと撮れてると思うけど確認しといて」


 日向くんから私のスマホを手渡された。


「…………はい」


 フォルダを確認するとしっかりと今日分の授業内容をまとめたノートの写真があった。


(日向くんの文字だ……)


 日向くんの文字でまとめられた内容ならスルスルと覚えられそうな気がしてくる。

 写真の方も見やすく撮ってくれていたので完璧だ。


「……ありがとうございます。……大丈夫そうです」


「あと明日どうなるか分からないけど休むなら、また写真送るから授業のためにって無理しないように」


「……あ、ありがとうございます」


 確かに頼る人が居なかった私にとって授業を休むというのは内容をまるで分からなくなる危険なものだった。


(良いのかこんなにも良い扱いを受けて……)


 ただ寝て何もしていないのにこんなにも優しくしてもらえる。

 弱っているときに優しくされると惚れてしまう、なんて話があるが今の私に言わせてもらうと千年ぐらい惚れこんでしまうだろう。


(って私は何を変な妄想してるんだか……また体温が上がってしまう)


 深呼吸をして心を落ち着ける。

 熱で苦しいけど『私のために』日向くんが看病してくれてる。

 何か返さないとという気持ちが強くなる。


「……その、元気になったらお礼するって言いましたけど、お礼は倍返し……いや3倍返ししますね」


「この3倍ってどれぐらいだろう? あとそのお礼を倍返ししたら木陰はどうするのかな?」


「…………それは……その倍返しで……日向くんが一生お礼には困らないぐらいです」


「一生分のお礼って規模がデカイな」


「……日向くんが倍にするなら、私もそれぐらいしなきゃですよ」


「そっか。じゃあまず木陰の3倍規模のお礼を楽しみに待つよ」


「……任せてください! ……3倍でも凄いですよ!」


 日向くんとの軽口が進む。楽しい。ずっと話していたい。

 けどその会話が途切れてしまった。


 ぐぅ〜〜っ、と私のお腹が鳴ったからだ。


「かわいい音したね」


「…………ぅぅ」


 日向くんにバッチリ聞かれていた。恥ずかしくて死にそう。穴があったら入りたい。

 いやもう布団に隠れてはいるけど。


「…………す、すみません……今日何も食べてなくて日向くんが買って来てくれたものだけだったんです……」


「え、そうなの」


「……はい、何も作る気も無くて……」


「言ってくれたらいろいろ買って来れたのに。うーん、買いにいこうか?」


「……いえ、そんな、外は雨ですし……」


「別に気にしなくても。でも木陰、何か食べないと」


「……そうですよね……ちょっと配達の人には悪いかもしれないですけど出前も……」


「その体調で出前のもの食べれるの?」


「それは…………」


 盲点だった。出前といったらお寿司とかピザとか今の体調では辛いもののイメージが多い。


「お米ってまだある?」


「…………れ、冷凍だけですけど……あります」


「なら、俺が作ろうか? お粥ぐらいなら作れると……思う」


「…………い、良いんですか? ……ぜひお願いします」


「よし、任せて。キッチン借りるよ」


「…………はい、お、お願いします」


 まさかの日向くんの手料理。

 いつもとは反対の立場で、それも記憶に無い、私のために誰かが作ってくれる手料理。


(……手料理を振る舞ってもらう……そんなことあったかな……)


 初めてかもしれない。

 今日だけで病人の特権を余すことなく使っている。お礼しないといけないことがまた増えた。


(日向くんへのお礼…………ビックリさせるぐらい返そうっと……)



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(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに



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