看病開始
日向くんが私のために家に来てくれる。私のための買い出しも頼んでしまった。
(手間をかけさせてしまって悪い気がする。でも緊急事態だったと割り切って今度お礼しよう……)
楽しみを前に時間が経つのが長く感じたが、オートロックのベルが鳴った。
「開けないと……」
重い身体を何とか持ち上げてオートロックを開ける。そして玄関の鍵を開けるために玄関に向かう。
「……つら」
鍵は開けたものの息が上がる。息を整えている間に玄関のベルが鳴った。
「…………は、はーい」
上手く話せるようにと深呼吸して玄関を開けた。
「こんにちは」
「…………こ、こんにちは」
日向くんが本当に来てくれた。寝巻を見られるのが恥ずかしいけどそんなことは言ってられない。
「木陰体調は大丈夫?」
「…………だいぶ良くなったと思います」
「その状態で!? ずっと壁に貼り付いたままだし、ちゃんと休まないと」
身体は重く扉は開けたもののずっと壁にもたれ掛かっていた。
「歩けそう?」
「…………は、はい」
返事をして日向くんを招き入れようとするもフラフラとして倒れそうになる。
「……ご、ごめんなさい」
「ほら手貸すから」
私が歩きやすいようてを貸してくれた。
「…………ありがとうございます」
日向くんに手を貸りて何とか部屋に着いた。私は日向くんに誘導されるままベッドで横になる。
「体温どれぐらいだった?」
「……えっと、さ、さっきは38.4度で……今は分かりません……」
「もう一回測っとこう、心配だし」
「……はい……あれ体温計どこ……朝に測ったんですけど…………」
前はベッドで使ったのでベッド周りを探すがすぐには見つからない。
「……すみません…………見当たらないです………………」
「うーん、じゃあ前髪上げておでこ出して」
「ぇ、ええ、はい……」
日向くんの発言にドキッとしてしまう。もしかしたらと期待が高まる。
前髪を上げて顔を出すなんて恥ずかしいが期待せずにはいられず言われるがままおでこを出した。
(も、もしかして……おでことおでこを合わせる…………的な!?)
ピトッと触れ合いおでこで日向くんの体温を感じる。だんだんと自分の体温が上がっていくのが分かる。
「だいぶ熱いね」
「……そ、そうですか」
そっと目を開けるとおでこに触れていたのは日向くんの手。少し残念に思ってしまう。
(さ、さすがにね、おでこ同士はね……ないよね)
浮足立つ心を深呼吸して落ち着ける。
「これ木陰に頼まれて買ってきたやつ」
レジ袋から取り出されたのは私の頼んだ頭に貼る冷却シートだった。
「……あ、ありがとうございます」
「一人で貼れる?」
「……うーん?」
片手で前髪を上げて片手で貼るのは難しい。
決して、決して日向くんに貼ってほしいから返事を濁した訳ではない。
「じゃまたおでこ出して」
「…………はい」
再び前髪を上げる。恥ずかしくて目を瞑っていたがヒンヤリしたものがおでこから伝わる。
「……ありがとうございます」
「あとこれ。飲み物とゼリーとか体調悪くても摂りやすいものいろいろ買って来たから」
「……ほ、ほんとですか!? ……ありがとうございます。……あ、お金は後で払います」
風邪に対する準備をしていなかったので本当に助かった。
「お金はいいよ、いつもご飯作ってもらってるし」
「……そ、そうですか……お言葉に甘えて……」
料理で恩返しすれば良いや、と日向くんが買って来てくれたものに手を伸ばす。
「はい、飲み物」
私が飲み物に手を伸ばすのを悟ってくれて、わざわざペットボトルのフタを開けて手渡してくれた。
「……ありがとうございます」
さっきから日向くんにありがとうしか言っていない。今度お礼しなければそう思いながら飲み物に口をつける。
「…………い、生き返る」
満足いくまで飲み終えてペットボトルを机に置こうとする。
「ほら無理しないで」
そう言って日向くんがペットボトルを受け取って机に置いた。
「……ありがとうございます」
(あれ……もしかして私ものすごく良い身分……?)
だってクラスメイトのそれも日向くんにこんなにも辛いときに看病してもらえてる。それに日向くんが逐一私のことを気にかけてくれている。
(……い、良いのだろうか…………ここまでしてもらって……しんどいのは確かだけど……)
看病する経験もしてもらう経験も無い私はどうすれば良いのか分からない。このまま休んでれば良いのか、それとも会話を繋いだ方が良いのか。
「…………あ、あの……ゼリーの方も貰えません……か?」
「ほら」
また日向くんは私のためにフタを開けて渡してくれる。
「……ありがとうございます」
日向くんが買ってきたと言ったときから空腹の私にはこれが食べたくて仕方がなかった。
恥ずかしいぐらいがっついてゼリーを飲み込む。
「……ご、ごちそうさまです」
日向くんが手を出してくれたので食べ殻を渡して処理してもらう。
(ほ、本当にどこまでしてくれるの……?)
どこまで甘えて良いのか分からない。距離感を読み間違えたら気まずくなる。失敗しないようにしないと。
「落ち着いた? 落ち着いたら俺を気にせず横になって」
「…………はい」
言われるがまま横になる。ただ恥ずかしいので日向くんとは反対方向で壁側を向いて寝る。
でもすぐそこに日向くんが居る、それだけで凄く安心できた。
「……あ、あの……い、いつまで居てくれます……か?」
「うーん木陰が心配だし、いつも時間より少し遅いぐらいかな」
「……あ、ありがとうございます」
つまりだいたい9時過ぎとか10時前とかになるだろう。今が5時過ぎぐらいだから相当な時間一緒に過ごしてもらえる。
(だ、だめだ……違う意味で倒れそう……)
日向くんが私を心配していつもより遅めな時間まで一緒に居てくれる、それも丁寧な看病付き。この世の幸福を全て集めたような状態かもしれない。
「…………お、お礼は今度……絶対にします」
「今はそんなこと気にしなくて良いのに。でもじゃあ今度のカレーは楽しみにしとこうかな」
「……はい、任せてください……いつも以上に丹精込めます」
「楽しみだね。じゃあ、まずは体調を良くするところからだね」
言いくるめられた。
「…………そうですね」
日向くんに背を向けてベッドに横になる。
(早く体調良くして日向くんにお礼しないと……)
まだ夕方にもなっていない。日向くんに看病してもらう時間はまだまだあった。
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