熱と電話
(熱い…………)
熱にうなされて目が覚めた。それなのに身体は寒気がする。
「……何時だろ……?」
時計を確認すると時刻は3時の少し過ぎを指していた。時間が経って体温をもう一度測ってみても、まだ38度台で朝と変わりはなかった
(……日向くんと会話のチャンスが)
気まずいままになってしまった。しかしどうすることもできない。
「……お腹空いたな」
お昼もとっくに回っているが、そもそも朝食を取って居ないのでさらにお腹が空いていた。
辛い身体をなんとか起こす。めまいがしながらもなんとか立てた。
「……ご飯何かあったかな」
嫌な予感がしながらも、壁を伝いながら歩いてキッチンまで行く。いつもなら簡単に行ける道も、今の体調ではかなり苦労した。
「…………やっぱり」
冷蔵庫を開けても作り置きは何も無かった。それどころか、昨日の日向くんとの食事で冷蔵庫の中身は空っぽになっていた。
「……どうしよう」
何かないか、とキッチンの周りを探ってみるもどれも食べるのにひと手間以上かかるものばかりだ。
(最近、さらに料理にハマったから……料理しないと食べるものが無いな)
日向くんが私の手料理を美味しいと食べてくれるので、より凝ったものをと料理をするようになったのが裏目に出ている。
外を見ると雨が今も降っており、この体調で外に出るなんて無理があった。
「……最悪……出前になるかな」
人とコミュニケーションを取るのが苦手な私には高過ぎるハードルで、手を出したことが無かった。それに電話も怖い私には何か吹っ切れないと無理なことだ。
今の体調的にもさらにつらい。精神的にかなり負担がかかりそうで後ずさりしてしまう。
「……お腹空いたけど後で考えよう、まだギリギリ我慢できる」
空腹よりも、電話と受け渡しのコミュニケーションでの気苦労が辛い。後回しにすることにした。
「……ついでに氷まくらっと……あれどこだ?」
家の冷蔵庫にあるはずなのに見つからない。
「あれ……どうして?」
あれこれと探しても見つからない。
「……そもそも最後に使ったのいつだ……?」
思いつかない。思い出せない。
「……無理だ」
平常時ならもっと探せたが今は熱に空腹と、私のコンディションが悪すぎる。
「……なら頭に貼るやつは……?」
頭に貼ってひんやりするヤツを探す。これは前に使ったので簡単に見つかった。
「……あれ? 空っぽ……?」
箱を逆さまにしても何も落ちて来なかった。
「……なんで私買ってないの」
ただゲームのやり過ぎで頭が熱いからって理由だけで使った過去の私と、空になっても買いたしていない私を引っ叩きたい。
「……寝よう」
必死に壁を伝って行ったのにただの徒労に終わった。肉体的にも精神的にも疲労感が凄い。
また壁を伝って自分の部屋に戻る。行きよりも帰りの方が辛かった。なんとかふんばって部屋帰れた。
「……どうしよう……お父さん…………」
こういうときぐらいお父さんに頼ろうも思ったが、定時すら終わってないうえに2日前にさらに忙しくなると言って仕事に行った。
それを考えると頼っても私を看病できないと思えた。やること考えること全てが八方塞がりだ。
「……辛い…………しんどい」
布団の上でうずくまって弱音を吐く。
「……そうだメール!」
夜に日向くんに送ったメール、それの返信が届いていてもおかしくない。辛い今その日向くんからのメールを見て元気を出そうとスマホを手に取る。
「……やっぱり」
予想通り日向くんからメールが帰って来ていた。
「……あれ……でも?」
それにもう一通、美冬ちゃんからもメールが届いていた。
『木陰ちゃん、熱大丈夫〜〜? 早く一緒にご飯食べたいよ〜〜』
(……私も一緒に食べたい)
日向くんからは
『体調大丈夫? ちゃんと寝て元気になってね』
とメールが来ていた。
「……ありがとう……二人とも」
嬉しさのあまり涙が滲む。こんなときに心配してもらえることなんかなかった分、さらに嬉しさが増す。辛かった身体にも少し元気が出てきた。
「……メール返さないと」
二人への返信を考えているとスマホが鳴った。
「……なに、で、電話、ひ、日向くん……何ごと!?」
私のスマホに電話がかかって来たのだ。それも相手は日向くんからだ。
「…………も、もしもし」
『もしもし日向です』
「…………こ、木陰です」
『あ、木陰。体調大丈夫? 熱出したって聞いたけど』
「…………はい。…………ち、ちょっと熱は辛いですけど、い、今は少しずつましに、なって来ました……」
焦りのあまり吃りまくりだが何とか返事する。二人のメールのおかげで少し元気にもなったのは事実だ。
『本当? 良かった』
「…………あ、あの、日向くん、その私を心配してくれるんですか……?」
『うん、もちろん』
「…………あ、ありがとうございます」
こんな私が心配してもらえるなんて、辛さが吹き飛んでしまいそうなぐらい嬉しい。熱にかかわらず顔がだらしなくなってしまう。
『あと青木先生から今日の書類大事だからって預かってるんだけど、下のポストに入れればいいかな? 修学旅行の書類なんだけど』
「……書類ですか、そうですね…………お願いします」
返事は返したものの、このまま会話が終わってほしくない。今の体調だと一人で居るのが怖い。
「…………あ、あの」
必死に何か言わないと話を繋げないと、熱で回らない頭を使い考える。しかし、何も思いつかない。
「………………」
『木陰大丈夫?』
「……あの、その、大丈夫………………じゃないです」
本音が漏れてしまった。
「…………寂しいです。熱が辛いです。一人が怖いです」
日向くんにそのまま吐き出してしまう。体調が辛い今、日向くんに甘えたくなってしまった。
『分かった。風邪なのに一人って辛いよね。俺で良いなら木陰の家に行くよ』
「……ほ、本当ですか!?」
『何か欲しいものとかある?』
「……え、えっと、飲み物と頭に貼る冷たいやつお願いします」
『了解、すぐ行く。ちょっと待っててね』
そう言って日向くんとの電話が切れた。
(夢……?)
ほっぺたをつねっても痛い。夢じゃなかった。
(日向くんが熱を出した私のために家に来てくれる……)
熱が辛いけど夢のような事態に浮かれた心を抑え切れなかった。
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