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隣が居ない日

 

「だはっ、間に合った」


 息を荒げた秋人が下駄箱で時間を確認して言う。いつも通りの時間に家を出たら、雨のせいで思いのほか時間がかかってしまった。

 秋人と教室にたどり着き扉を開けて教室に入る。


「まあ、ギリギリセーフだな」


 俺たち二人を見て青木先生が睨むように言った。教室を見渡すとみんなはもう席に着いていた。

 俺と秋人もペコリと頭を下げて席に付く。


「二人ともおはよう」


 前田さんから挨拶が飛んできた。三人で待ち合わせしていたが雨なので前田さんは先に学校に行っていた。


「おう」

「おはよう」


 挨拶を返して席に着く。秋人の方は挨拶を返したのか何とも言えない返事だ。


「危なかったな」


 朝のホームルームが始まるまでのほんの少しの時間で秋人と軽口を交わす。


「日向、もっとちょっと早く家出てくれよ」


「いやー、ごめんごめん。いつもの癖で」


 待ち合わせ時間には遅れていなかったが、雨の中での登校を少し遅かった。

 本当はもっと家を早く出る予定だったのだがとある理由で遅れてしまった。


(朝から木陰のメールの確認と返信に時間がかかってしまった……)


 木陰からのメールを無視したまま、学校で顔を合わせるのは居心地が悪かったので返信した。


(学校で木陰とのメールの内容を話せないし)


 メールのことを秋人に言える訳もなく少し遅れてしまった。

 一応、秋人には先に行っててとメールしたが律儀に待ってくれていた。

 そしてずっと疑問だったことを前田さんに尋ねる。


「前田さん、これ」


 前の席の美冬にジェスチャーで木陰が居ないのか聞いた。


「あー木陰ちゃん、今日まだ学校来てないわよ。日向なにか聞いてないの?」


「いや、特には」


 木陰からのメールにはなにも書かれていなかった。


(いや、もしかして昨日のが原因で……)


 昨日の一件で木陰が学校に来づらくなってしまったのではないかと考えてしまい、背中が寒くなる。


「雨だから、木陰ちゃん遅れて来るかもね」


「あー、それかな」


 木陰からの朝の挨拶が無いと寂しい気持ちになってしまう。

 美冬との会話が一段落ついたところで青木先生が朝のホームルームを始めた。


「うーし、私語やめろ」


 出席簿で机をカンカンと鳴らしてホームルームを進めていく。


「えーと、欠席はっと──」


「はい、はいはい、青木先生」


 美冬が手を挙げた。


「いや、前田は出席してるが? なんだ今から欠席するのか? なら相当なやり手だが」


「私は受けますけど、木陰ちゃ……、暗野さんって今日休みですか?」


「熱で休むって連絡が来たな」


「ありがとうございます」


「よーし、他は全員居るな」


 出席の確認を終えて出席簿を置いた。


「終わりのときに大切な書類があるから今日休まれると、ちょっと面倒なんだけどな。まあいいか」


 青木先生がそんな独り言を呟いたあと俺と目があった。


「じゃ、このあとの授業もしっかり受けろよな」


 そう青木先生が朝のホームルームを締めくくり、教室をあとにした。


「そっか、木陰ちゃん熱か。せっかくご飯一緒に食べたかったのに」


 美冬が呟く。


「後でメールしよっと。そうだ日向も送れば?」


「え、俺も……?」


「いーじゃん、いーじゃん、減るもんじゃないし送ろうよ」


「確かに減るもんじゃないし……送るか」


 木陰が心配だしせっかくならとメールを送ることにした。


「バッテリーは減るけどな」


「「…………」」


 秋人の面倒な絡みによってこの話題は終わりを告げた。ちなみにメールはまとまった時間のあるお昼に美冬と一緒に送った。


 ◇◆◇◆◇◆


「よーし、今から修学旅行の参加確認の書類配るから絶対に無くすなよ。あと雨にも濡らすなよ」


 帰りのホームルームで青木先生が修学旅行の書類を配る。まだ修学旅行は少し先だが、出席の確認や個人の都合を調べるために早めに確認するらしい。


「提出はできるだけ早めに、高校生なら前もって行動するいい機会と思ってさっさと出してくれ」


「うーす」と男の相づちが聞こえた。


「じゃ、これで今日はお終い。雨道だから足元に気をつけて帰れよ」


「「うーす」」


「よし日向、今日は一緒に帰ろうぜ」


 すぐさま秋人が振り返り聞いてきた。


「おう」


 最近は帰りに木陰のところに寄ることが多く、秋人と帰れていなかった。今日は木陰が休みなので秋人とまっすぐ家に帰ることになりそうだ。


「あ、日向は後で職員室に来てくれ」


 急な青木先生からの招集に血の気が引く。


「お前何かした?」


「い、いや、記憶に無いな……」


 苦しく濁すものの思い当たるものしかなく、職員室への呼び出しが死刑宣告のように思えた。


「あ、秋には悪いけど先に帰ってて」


「それは別に良いけどさ、なんか汗ヤバくね?」


「あー、雨だから大丈夫」


「どこがだよ」


 焦りに身を任せて適当な返事をした。どこに大丈夫な要素があるのか自分自身に聞きたい。


「じゃあ俺先に帰るわ。また明日」


「おう、明日があればまた明日」


 秋人と軽口を交して職員室に向かった。

 職員室の扉、ノックするのに緊張が走る。


(俺……大丈夫だよな……?)


「失礼します。青木先生、日向です」


「お、日向か。ちょっとここまで来てくれ」


 職員室の奥、青木先生の机まで呼ばれた。


「その、話ってなんですか……?」


 俺の異常にかしこまった態度を見て青木先生が笑った。


「別に悪い話じゃないから安心してくれ。それとも何か悪いことしたのか?」


 まず悪い話では無かったことに安心する。しかし悪いことをしたかと言われれば、木陰の受け取り方次第だがギリギリしたとも言える。


「……いや、してないっす」


「なんだ、なんだその間は。まあ別にいい」


「ありがとうございます」


 今のもなんのありがとうございますなのか誰教えてほしい、そんなことを考えて青木先生の話を待つ。


「日向、この修学旅行の書類を暗野に渡してくれないか?」


 本当に悪い話ではなくようやく心の底から安堵できた。


「俺がですか? どうして?」


「暗野の家知ってるのは生徒だと日向ぐらいだろ。あと暗野がだいたい一人暮らしなのと、書類は親にも見てもらう必要があるから早いにこしたことはないという訳だ」


 確かに木陰はほぼ一人暮らしみたいなもので、体調を壊すと見てくれる人が居ないとなると青木先生が心配なのも分かる。


「まあ、そうっすね」


「それで書類はポストに入れて、呼び鈴ぐらいで様子見てやってくれ。そしたら暗野も喜ぶだろ」


「分かりました」


「雨の中悪いな、今度飲み物の何本か奢るよ」


「できれば俺だけ提出物を減らし──」


「流石にそれは無理無理。じゃ任せた」


「はーい」


 残念な気持ちを押さえ切れず返事をして職員室を出た。


(急に家を尋ねるのも悪いよな……?)


 スマホを確認すると木陰とのメールに既読は付いていなかった。


「うーん」


 少し考えてある結論に至った。


「よし、木陰に電話するか」



 ◇◆◇◆◇◆



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― 新着の感想 ―
[一言] 木陰ちゃんのお見舞いに行くのは日向くんが適任ですね 次回も楽しみにしております
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