寝起きと晩御飯
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします(2月)
「…………ひ、日向くーん」
誰かの呼ぶ声で少しずつ意識が覚醒し始める。
カシャッ、目覚めには適さないような音が聞こえた。
「…………ほ、ほら、日向くん、ご飯ですよ」
身体を揺すられて目を開ける。
目の前に居るのはクラスメイトの木陰で、なぜ彼女に起こされている状態なのか分からず混乱する。
「…………お、おはようございます、日向くん」
「お、おはよう木陰」
とりあえず返事をするもまだ寝起きで置かれた状況に理解が追いついていない、クラスメイトに起こされている不思議な状況だ。
そんな俺の様子を見て木陰が説明してくれた。
「…………私が料理している間に日向くんが寝ちゃったんですよ」
その説明を聞いて寝る前のことを思い出す。
「そっか、俺、寝ちゃったんだ……」
木陰に説明されて寝る前の記憶を少しずつ思い出す。
「…………そうです、そうです。…………ご飯できてるので一緒に食べましょう」
机の方に目を向けると美味しそうな料理が並んでいた。
「ありがとう、木陰にご飯作ってもらってるのに寝ちゃってごめん」
「…………い、いえ! ……むしろ! ……むしろみたいなところありますから、だ、大丈夫です!」
「むしろってなんだそれ……」
「………………寝てもらえるぐらいには信頼されてて、嬉しいのむしろです」
「なるほど、寝てるだけで喜ばれるとは」
「…………確かに……それ幸せかもしれないです」
木陰と軽口を叩くもどこかよそよそしい。もともと目を合わしての会話は少ないが、今はいつも以上に目が合わない。
「…………ご飯食べましょうか」
「うん、いただくよ」
木陰と向き合って席に付く。煮込みハンバーグと暖かそうなポトフだ。
「いただきます」
「……いただきます」
具だくさんのスープから口にする。さすがは木陰、最高に美味しい。冷えた身体に染み渡る暖かさだ。
「美味しい」
「…………ほ、ほんとうですか。……よかったです」
しばらく食べることに集中して会話がなくなってしまった。ただ木陰の料理が美味しく食べ進めてしまう。
「…………あ、あの、その、外……まだ雨降ってるみたいですよ」
「あー、まだ止んでなかったか」
そんな普通の会話をしたときに寝る前にした会話を思い出す。
「あ!」
急に大きな声を出してしまい木陰が驚く。
「あ、ごめん……」
「…………い、いえ、その、どうかしましたか?」
「い、いやなんでもない」
木陰との会話で寝る前のことを完全に思い出した。そう、お風呂場のことも。
木陰がよそよそしい理由も分かった、というかこっちも対応がよそよそしくなる。
「こ、この煮込みハンバーグ凄く美味しいよ」
意識を逸らすために話題を振る。
「…………あ、ありがとうございます! 喜んでもらえてよかったです……!」
しかし会話が途切れて気まずい沈黙が起きる。
「…………そ、そのまあ、あれは事故ですから…………」
「え!? 顔に出てた……?」
「…………はい」
木陰が俺の様子を読み当てて驚く。さすがは女子、洞察力が凄まじい。
「…………なので…………その、いつも通りに……」
「う、うん」
返事は返したものの時間がかかりそうな問題だ。会話から逃げるかのようにご飯を食べる。木陰の料理は美味しいので食べることに関しては苦労はなかった。
「お、おかわりしていい?」
「…………も、もちろんです」
おかわりしたご飯もぺろっと平らげられた。さすがは木陰の手料理。
「ごちそうさまでした」
「…………ごちそうさまでした」
二人で手を合わせてご飯を終えた。
ご飯を食べきってしまうと再び息苦しい沈黙になってしまう。
木陰の方は食べた食器を洗い始めていた。
「…………あ、あの大事な話なんですけど」
「う、うん」
真剣な声色で木陰は言う。俺も腰を据えて話を聞く体勢を取る。
「…………あ、あの、つ、次のときに食べたい料理ってありますか……?」
「次の料理か」
木陰の質問に真剣に考える。
それに食べたいものを聞かれた際に『なんでもいい』と答えてはいけないと母が言っていたので何かひねり出そうとする。
料理自体は木陰が得意でレパートリーも平気そうなのだが、食後ということもありなかなか決まらないで時間が過ぎる。
「…………の、その、凄く大事なことなんです、次の料理の話は……!」
「うーん、あ、木陰が前に作ってくれたカレーが食べたいな」
「…………か、カレーですね! …………分かりました! ……任せてください!」
かなり意気込んだ返答だ。少し木陰の口も笑っているように見えた。
「…………つ、作りますからね、カレー、ここでまた、食べてくださいよ、絶対に」
「うん、楽しみにしてる」
会話しているうちに木陰が皿洗いを終えた。時間もかなり遅くなってきておりお開きはもうすぐそこで来ていた。
帰り仕度もして玄関に向かう。木陰が見送りで来てくれる。
「…………き、今日はありがとうございました。…………日向くんのおかげで家に帰れました」
「こちらこそ、ごちそうさまです」
「…………いえいえ、次はカレーですからね。……また来てくださいね」
「もちろん」
「…………道路濡れてますから気をつけてください」
「ありがとう、木陰もまた身体冷やさないようにね」
「…………はい、ありがとうございます」
ドアノブに手をかけ玄関の扉を開ける。すっかり日は落ちていた。
「…………あ、あの!」
「うん?」
木陰が言いにくそうに、それでも何かを言おうと頑張っていた。その言葉が出てくるのをゆっくりと、木陰を急かさないないように待つ。
「…………ま、また明日、学校で!」
「うん、学校で!」
木陰に見送りされて彼女の家から出る。一人で歩いてあることを思い出した。
「あ、木陰との関係……ハッキリとさせたかったのに」
いつもご飯を作ってもらう、そんな友達以上の関係。ずっとこの関係に甘えてても良かったが、何か木陰を利用している感じが嫌だった。
ハッキリとしたかったのにお風呂のことで記憶から消えていた。
「落ち着いたらかな……」
今はお風呂場の件タイミングを逃してしまった。しばらくは様子を見て決めよう。
帰りがけどこかの家から晩御飯の良い匂いがした。
「次はカレーか、楽しみだな」
夜道、雨に濡れた足元に気をつけながら呟いた。
次回は木陰視点!!!
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