失敗からの決意
お風呂を上がり脱衣場で身体を拭く。扉のすぐ前には日向くんが待機しているだろう。
(ずいぶん待たせちゃったな……それにただ待たせただけじゃないし……)
くつろげる場所で待たせわけではなくお風呂の前や、今は脱衣場の前で待たせしまっている。
(日向くんにヒドいことしちゃったな……)
そんな申し訳ない気持ちが心にチクッと刺さる。
(……ならしっかり美味しいご飯作ろう…………)
日向くんが私のご飯を楽しみにしてくれているのは分かってる、なら美味しい料理で今日のお礼と謝罪をしよう。
そう決意を固めながら身体を拭く。
そんな後ろめたい気持ちもあるが、この後に日向くんと一緒にご飯を食べられるという嬉しい感情で複雑な状態だ。
日向くんもなんだかんだ私に付き合ってくれている。こんなに迷惑をかけてもだ。
(……私は幸せ者だなあ……)
晩御飯のことを考えているうちに今日のお昼のことを思い出した。
まさか学校で誰かと一緒にご飯を食べるなんて私にとってはあり得ない出来事だった。
(明日も美冬ちゃんとお昼一緒なのかな……)
そんな想像で口元が緩む。
(楽しみ……)
幸せの神様が私に味方してくれている、そう思えた。
帰りに雨に降られたけど日向くんと相合い傘で帰れたし、お風呂だっていつもならどうしようもない孤独感に襲われたけど日向くんとお話ししながらの入浴はお風呂が幸せな時間になった。
(じゃあ尚更ご飯は力入れないと……!)
巡りめぐって料理を頑張るに戻ってきた。
(よし、身体も拭いたし着替えたらご飯にしよう!)
気持ちを固めて脱衣場の扉を開ける。
脱衣場の横で座り込んでいた日向くんと目が合う。
「……お風呂上がりまし──」
私が言葉を最後まで言いきる前に日向くんが勢いよく目を逸らした。
そんな行動を不思議に思っていると──
「こ、木陰、服!」
「……え!?」
日向くんの慌てた声を聞いて自分の状況を理解する。
それと同時にマグマのように身体が熱く赤くなってきた。
「……ご、ごめんなさい」
私も慌てて脱衣場に戻った。
「お、俺もごめん」
日向くんもバツが悪そうに謝る。
一人暮らしのような状態ずっと長かったからか私は裸のまま日向くんの前に出てしまった。
暑い時期や身体が良く暖まると、火照った身体を冷ますために自分の部屋で着替えるのが癖になってからだ。決して露出狂とかではないと説明しようとする。
「……そ、その違うんです…………あの、いつも一人だったから……」
ただ恥ずかしさで死にそうになりながら回らない頭でなんとか声を振り絞り説明をする。
二日前だってお父さんが居るにもかかわらず裸で廊下を歩きかけた。そんな失敗から学ばずこんなに大事なときに出てしまった。
「………………そ、その、み、見えましたか…………?」
とても大事な質問を日向くんにする。
「いや、その…………」
言い辛そうな返事だ。
「…………し、正直にお願いします!」
しばらく日向くんは黙っていたが答えてくれた。
「ほんの少し見えたかも……?」
そんな返事を聞いて熱かった身体がさらに火照る。
「…………あ、あの! ……ふ、服を着替えるために部屋に行くので後ろ向いててください」
動揺で口が回らない。
「わ、分かった」
それでもなんとか伝わったみたいだ。
日向くんの返事が聞こえて落ち着くために一息付いてから扉を開ける。目を向けると私を見ないように後ろ向いてくれていた。
(私、今裸で日向くんの後ろに居るんだ……)
危険過ぎる状況に頭がオーバーヒートしそうになる。
(……早く着替えなきゃ)
そのまま急ぎ足で自分の部屋に入った。
(……ひとまずこれで見られる心配はなくなった)
もともと日向くんが覗きをした訳ではないけど……一度落ち着こう。
そう思って深呼吸をする。しかしその程度で落ち着ける状態ではなかった。
(……裸見られちゃったな…………)
今まで誰にも見られなかったことがなかった分、こんなときに堂々とできない。
それに考えれば考えるほど身体が熱くなる。
(……ま、まま、まずは服着よう)
クローゼットから服を取り出し着替える。一向に火照りがおさまらない。
そんなときにお風呂で考えていたことを思い出した。
もしお風呂を覗かれたら? というものだ。
(……日向くんに一生の責任とってもらおう)
お風呂を覗かれた訳ではなく、むしろ自分から見せてしまったのにそんなことを言っていたら当たり屋みたいだ。
でも結果として見られたのなら答えは一つだ。
(……胸も揉まれたことあるし裸を見られたのなら、しょうがないよね……?)
いっそ開き直り自分の意見を肯定する材料を用意して自分に言い聞かせる。
(……だったら日向くんを惚れさせないと)
そう決意して日向くんのもとへ向かう。心音はまだ早いままだ。
廊下に出ると日向くんと目が合った。
「えっと、あの」
気まずそうに何か言おうとしていたが私が無理やり割り込む。
「……二人でご飯食べましょう!」
「え、あ、うん」
返事を聞いて日向くんの手を無理やり引く。体温は私の手の方が熱かった。
「……もう絶対逃がしませんよ?」
日向くんが絶対に聞き取れない小さな声で呟いた。
◇◆◇◆◇◆
この話書くのにビビッてたらいつの間にか時間が流れてました。
面白いと思った方、続きが気になると思った方は評価の方お願いします!!!
下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえると、作者が踊り狂い更新頻度が上がります!!!
(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに
それとブックマークもお願いします!!!!!