お風呂で幸せな会話
このままでは変な妄想ばかりしてしまうし、日向くんをただ待たせてしまうので何か話をしよう。
それにお風呂に入りながら誰かと会話する、なんてことは経験したことがないのでいつもの孤独感を忘れられて浮かれた気分が押さえられない。
(変に浮かれてるのがバレるのは恥ずかしいな……)
男の子を脱衣場に待たせて浮かれて話す、そんな変な女の子だと誤解をされるかもしれない、なのでいつものように今の上がる気持ちを押さえて日向くんに話しかける。
「……あ、あの…………」
「ん? どうかした?」
私が途中で詰まってしまい日向くんが私に聞く。
(……あれ、こんなときどんな話題をすれば…………)
話をしないといけない、そう意識すると逆に話が浮かんで来なくなってしまった。
もともと話が苦手なうえに失敗したらという恐怖からさらに固まってしまう。
(お、落ち着け私、相手は日向くんだし……)
そう、今お話をしているのは日向くんだ。いつもありのままの私を受け入れてくれている日向くんだ。
「……今日、私写真送りましたよね……?」
普段の私ならパニックになり話をできなくなったかもしれない、しかし日向くんという安心感が私を落ち着かしてくれた。
「うん、屋上の写真だよね? 見たよ」
「……ど、どうでした……?」
さすがに自分でも、いかにも会話が苦手な人の話題の出し方だと思う。
「凄くいい写真だと思うよ」
「……あ、ありがとうございます」
日向くんが私の写った写真を褒めてくれた。それも直接、言葉でだ。
顔のニマニマが止まらない、でも今は顔を見られないから好きなだけ恥ずかしい顔をできるので私の照れた顔を増長させた。
もし見られたら死ぬほど恥ずかしいと顔だと自負できる。
「……実はあの写真……青木先生にも送ったんですよ」
「え、本当!? 青木先生に!?」
日向くんが私の話題に食いついてくれた。自分でも上手い話題に持っていけてひと安心だ。
「……はい、なんて返信が来たと思います?」
「うーん」
日向くんは唸りながらしばらく考えていた。
そんな時間に私も思いにふける。
(楽しい……)
フフッ、とご機嫌に笑ってしまう。
いつもの孤独で寂しいお風呂とは大違いだ。
「青木先生か……なら『さては自撮り慣れしてないな?』 とかかな?」
『言いそう!』と思ってしまう答えだ。
さすが一年生の頃にも担任してもらっていただけに青木先生が言いそうなところを押さえてきていた。
「……残念! ……ちょっと違います!」
「えー、結構良いところいけたと思ったんだけどな……」
日向くんも真剣に考えてくれていたことが分かりさらに嬉しくなる。
(私をいい加減に扱わない日向くん……)
もうただの会話だけで幸せが止まらない。
「分からないし答えお願い」
「……しょうがないですね」
答え合わせの声が高くなってしまう。隠そうとしていたがついには理性よりも嬉しさが勝ってしまう。
「……答えはですね『私のタバコ吸う友達より暗野の友達が多くなったが?』でした!」
「なんだそれ、青木先生意外に友達居ないのかな」
と日向くんからも笑顔が混じった声が聞こえてきた。
「……実はそうなのかもしれないですね」
私も楽しげな声で返す。
「……それに『今度友達の作り方教えろ』って来ましたよ」
「じゃ教えてあげなよ」
「……私も知りたいですよ」
と二人で笑い合いながら会話する。いつもの孤独なお風呂とは違って楽しい空間だ。
「青木先生の友達ってあの人かな、保健室の?」
「……あー、山田先生ですね、確かにその人っぽいです」
山田先生、一年生の頃に保健室でよくお世話になった先生だ。
前に一度日向くんを私が原因で保健室に連れていって以来会っていない。
保健室に頻繁に行ってないことを喜びたいが会えなくなったのが少し寂しく思えた。
(また会いたいな……)
今度会いに行って今日撮った写真を見せよう、そう心に誓った。
「……そう言えば外の天気ってどうなりましたか?」
「うーん、脱衣場からはあんまり分からない」
日向くんの帰りを考えると雨は止んでいてほしい、それにこれ以上雨が強まって雷が鳴ることは避けてほしいな。
もし日向くんが居るときに雷が鳴ると、私が実はまだ雷が怖いことがバレてしまう。
「……少しだけ外見てもらえませんか?」
「うん、良いよ」
と快く引き受けてくれた。
これでもし雷が鳴っていても心の準備ができる。
「あんまり変わってなかったよ」
「……か、雷はどうでしたか?」
雷に怯えるあまり思わず聞いてしまった、これでは雷が怖いのがバレバレだ。
「雷まではなかったと思うよ」
「……ありがとうございます」
日向くんからなにも言われなかったのでひとまず私の恥ずかしい秘密はバレなかった、ということにしよう。
「……あ、あの私、もうそろそろお風呂から上がりたいです……?」
身体も思う存分に温もったのでお風呂を上がろうと思う。
しかしすぐそこに日向くんが居る。私のお願いでわざわざ居てくれていたがこのまま私が出ると日向くんに裸を見られてしまう。
「じゃあ脱衣場から出るよ」
「……わざわざありがとうございます」
日向くんが脱衣場の扉を開けた音がした。
「……あ、あの、待つのは脱衣場の扉の前でお願いします」
「分かった」
なにかと見られたら恥ずかしいものがあるので日向くんの行動をかなり制限してしまった。
(お風呂のことで日向くんにかなりわがままを言ったし、その分のお礼は料理でしっかり返そう……)
お風呂場の扉から日向くんの影が無くなったことを確認して私は出て日向くんがずっと待っていた脱衣場で身体を拭く。
(あ、日向くんの匂いだ……最高……)
脱衣場に残る日向くんの匂いで最後の最後まで幸せに包まれながら私の孤独じゃないお風呂は終わった。
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