雨に降られて
「ヤバいチャイム鳴った!」
美冬ちゃんと会話しているといつの間にか時間が過ぎて授業開始の呼び鈴が鳴った。
彼女の焦った声を聞いて私も焦って教室へ向かう準備をする。
屋上から教室に向かっている最中でも美冬ちゃんは話すことを止めなかった。
「ご飯中に雨に降られなくて良かったね」
「…………確かに、曇り、でしたけど、雨、降るんですか……?」
走りながら話す。こんな誰かと走りながら話す経験は人生で無かったので息切れのなか返す。
しかしそんな私とは違い美冬ちゃんは平然と続けた。
「今日の天気予報は夕方には雨降るって言ってたよ」
さっきお昼のときは雲の切れ間から光が少し見えていた感じだ。このあと雨が降ると言われても納得できる。
「…………そう、なんですか。……寝坊して、天気予報、見てませんでした」
今日は急いで家を飛び出したのでそんな余裕は無かった。それに雨具をカバンに入れているわけでもないので雨に降られるとずぶ濡れだ。
そう言われると確かに今日湿度が高い気がしていた。
「…………降らない、ことを、願います」
私の方はかなり息が上がっていた。そんな中雨具を忘れてた私はただ雨が降らないことを願った。
「私もそう願おうかな」
ここで自分たちの教室に着きひとまず会話が終わった。
教室の扉を開けるとみんなが私たちを注目する。時間的には先生が入って来てもおかしくないので見られるのは仕方ない。
仕方ないが美冬ちゃんに何か迷惑をかけているような気がしてしまう。
それにみんなから注目を浴びた感じがして凄く嫌だ。
「間に合ったねー!」
と美冬ちゃんがご機嫌で私に言う。彼女は教室でも変わらず私に話しかけてくれた。
「…………間に合いましたね!」
声色に少し嬉しい気持ちが乗る。
すると美冬ちゃんが笑顔で返してくれた。
会話が楽しすぎて授業に遅れそうなハプニングはあったが無事に間に合って授業を受け始めることができた。
「よーし、ホームルーム終わり」
あれから時間が経って今ホームルームが終わった。
「このあとみんな雨降るから気をつけて帰れよ」
最後に青木先生がそう言った。外の天気を見るとかなり怪しい曇りといった具合だ。
「木陰ちゃん大丈夫?」
斜め前の席の美冬ちゃんが私を心配してくれた。昼休みの会話を覚えていてくれていたのだろう。
「…………多分……雨に降られる前には帰れそうです」
天気は怪しいが急げばなんとか帰れそうな様子だ。
「良かった。じゃ、また明日」
「…………はい、また明日」
美冬ちゃんが手を振ってくれたので私も振り返して見送った。
美冬ちゃんが斎藤秋人くんと一緒に帰って行く。日向くんは気を使っているのかこの二人が一緒に帰るときは一人で帰っている。
今日一緒に晩ご飯を、と思ったがこのあと雨になることを考えれば迷惑になるので誘えなかった。
(…………急いで帰ろう)
雨に降られる前にと私は家に急いで向かった。
しかし帰りの途中で急な雨にやられて今は木の下で雨宿りをしている。
(もう数十分雨が遅かったらな……)
そう目の前の雨を見ながら思う。強い雨なので無理やり帰ることもできない。
急に降ってきたため身体もかなり濡れた。
(……寒い、どうしよう)
風もあり身体が次第に冷えてきた。そんな状況でも目の前の雨足は弱くなるどころか強くなっている気がした。
完全に足止めされて身動きがとれない。
(遅刻してでも天気予報見てればな……)
遅刻の注目が嫌で無理やり急いだ結果だ。そんな選択をしたことに後悔する。
ただあとから教室に入って注目されるのも嫌だ。
(雨やまないかな……)
少し物思いにふけても事態は変わらない。
しかし目の前で奇跡が起きた。
道の角から日向くんが出て来たのだ。
そして私の方に気づいてくれて寄ってきてくれた。
「お、木陰が木陰で休んでる」
「……そんな感じのこと小学校の頃によく嫌がらせで言われました」
「ご、ごめん。そんなつもりは……」
日向くんが謝ってくれた。でも私は悪い気はしていなかった。
「……いえ、その、日向くんが言う分には全然、嫌味は無くて平気です!」
「そう?」
「……はい、平気です!」
これが信頼関係とでも言うのか本当に嫌な気はしない。小学校の頃の嫌な記憶があってもだ。
「……ひ、日向くんはどうしてここに……?」
普段の通学路なら日向くんはこっち方向ではない。なのにこの道を使ったことが気になった。
「ん、いつも使う道が雨だと急な坂で危ないから遠回りのこっちで帰ってる感じ」
「……な、なるほど」
もしかしたら私のために、と少し期待していたのが恥ずかしい。
「木陰は傘無いの?」
「……はい、その寝坊したときに忘れて……」
その結果おもいっきり雨に降られた。身体もずぶ濡れだ。
「家まで送るよ」
「……い、良いんですか!?」
日向くんに雨の中家まで送ってもらう。つまりそれは相合い傘で帰るということだ。
「良いよ。このままじゃ木陰帰れないでしょ?」
「……あ、ありがとうございます」
口のニヤニヤが抑えられない。
さっきまで憂鬱だった雨も今は天の恵みに思える。
「……あ、あの、お礼にご飯作るので食べて帰りませんか?」
「良いの?」
「……はい!」
さっきはご飯を誘うと雨の中帰ってもらうのが気になって誘えなかったが、今は雨に降られてそして家まで送ってもらえる。なので誘うだけ日向くんに迷惑になりにくい。
それに何か送ってもらったお礼がしたかった。
「じゃ、食べたいな。木陰の料理凄く美味しいし」
「……あ、ありがとうございます……!」
雨に降られて身体はずぶ濡れだが、日向くんと一緒に相合い傘で帰れてそれにご飯まで一緒だ。それに料理の腕も褒めてもらえた。
(………最高! 雨、寝坊! ありがとう!)
自分の寝坊と雨に感謝して日向くんと一つの傘の中肩を寄せ合って私の家に向かった。
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今話から三章後半です
なので
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