電話の内容
まさか前田さんから電話が来るとは思わず慣れない電話で声が震える。
「………………ま、前田さんは、その、何をしてましたか……?」
話題を埋めるためにとりあえず聞いた。さっき私が同じことを聞かれたので会話の苦手な私でも相手を真似てひとまずの山を乗り切ろうという考えだ。
『ん? 私はね、爪の手入れしてたよ』
いかにも女の子のような返答だ。
前田さんは爪までしっかり手入れをしているのだろう。自分の爪を確認する。私なんかとはえらい違いだ。
(日向くんに告白するならそういうこともしないと……)
急な電話だったがまず一つの学びだ。
「それでね、電話なんだけど暗野さんがね心配で電話したの」
「………………私が、心配…………?」
なぜ私が心配なのか、なぜ私を心配してくれたのかそれが分からなかった。
『だって今日、周りが暗野さんのこと悪く言ったでしょ?』
周りが私のことを悪く言った、これは今日の朝に坂本さんを許す許さないでのことだろう。
どうやらそれのことで前田さんは私を心配してくれたらしい。
「…………そうですね、言われましたね」
「だからね、引きずってないかなって思って電話したの」
「…………そ、そうなんですか…………ありがとうございます」
まさか私を心配してくれるとは思っていなかったので嬉しい。
『暗野さんは大丈夫だった?』
「…………はい、大丈夫だと思います」
そうは答えたものの今日の出来事を思い出すと少しだけど腹が立ってきた。
「…………でも少しムカつきました」
思わずそんなことを吐いてしまった。
『やっぱり? 私もムカついたよ』
「…………はい、だって私悪くないのに悪いみたいに言われるのヒドいですよ」
「そうよね、暗野さん悪くないのにね」
「…………そうです、私は悪くないです。…………被害者です、なのにみんなヒドいです」
『本当よね、私もヒドいと思ってたもん』
前田さんが私の意見に賛同してくれたことが嬉しかった。私は悪くないし間違っていないそう思えた。
「…………すみません、なんか愚痴っぽくなっちゃって」
『良いの、良いの』
まだ話してすぐの前田さんに愚痴を言ってしまったと反省する。
「…………でも、その、心がスッキリしてしました、ありがとうございます」
ただ自分の心の内側にあったものが吐き出せて楽になった。それにこんな風に愚痴を聞いてもらえたことが無かったのでそれも嬉しかった。
『女の子は愚痴を言って共感する生き物だから平気よ、平気』
そう前田さんに言ってもらえて私なんかが認められているような感じがした。
「…………ありがとうございます」
『そう言えば今日、日向と帰ったけどどうだった?』
急な前田さんからの質問に動揺してしまう。
「…………え、あ、その、まあ、、、普通に家の近くまで送ってもらえました」
『え、何話したの? 何話したの?』
さっきまでとは違い楽しそうな声色で聞く前田さん。
「…………ふ、普通に話しただけですよ…………」
そんな恋愛話の方向に話が進むと思ったとき前田さんが
『ごめん、暗野さん。私お母さんにご飯呼ばれちゃった』
と少し暗い声で言う。
「…………そうなんですか」
前田さんと少しずつ話せてきていただけに残念だ。
『明日、またこの続き話そ、楽しみにしてる!』
「…………はい、その、わざわざ電話ありがとうございました」
『良いの、良いの。じゃまた明日』
「…………はい、また明日」
そう言うと前田さんからの電話が切れてしまった。残念だったが私のことを心配して電話してくれた、その思いやりが凄く嬉しかった。
(明日また話せるよね……それに楽しみにしてくれてるらしい……)
そうは思ったものの日向くんの話を追及されるといろいろと危ない。
(今のうちにイメージトレーニングしとこ……)
前田さんが聞いてきそうなことを想定して返す練習をしよう。明日詰まらないように、ボロが出ないように。
そんなことをしている間にご飯を食べ終えていた。一人ぼっちのご飯のはずだったが前田さんの電話のおかげで孤独を感じずに過ごせた。
(それに前田さん私のこと心配してくれたし優しいな……)
私に優しくしてくれる、そんな人がまた増えた。それだけでまた顔がニヤついてしまう。
それに愚痴まで聞いてもらえた。そのおかげで今日あったムカつく出来事を話せて心のモヤモヤが無くなった。
ひとまず自分の心を整理するために
「…………シャワー浴びよ」
そう呟いてお風呂場に向かった。
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この話で前半が終わると思ってましたが終わりませんでした。
まだあと一話続きます。
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