パフェのち解散
「じゃあ、私このパフェにしよ」
木陰と二人でメニューを分け合って見ていた美冬が指を差して言った。
「…………パフェですか…………?」
「うん、美味しそうだもん」
木陰の表情とは対照に美冬が答える。
そんな意見を聞いて木陰もしばらく考えていた。
「…………じゃ、じゃあ、私はこっちの違うパフェにしようかな……?」
「そっちも美味しそうで気になってるのよね、後で一口食べて良い? 私のもあげるから」
「…………い、良いですよ」
二人がメニューを決めたので俺が店員さんを呼ぼうとする。
すると木陰が「……成田くんは何か頼まないんですか?」と気を使って聞いてくれた。
「大丈夫だよ」
そして店員さんを呼んで注文した。
二人が頼んだのは木陰がマンゴーのパフェで美冬がイチゴのパフェだった。
しばらくして二人の頼んだものが届いた。
「美味しそう」
「…………はい、美味しそうです」
二人のパフェを見る目が輝いている。そしてパフェを食べて二人とも舌鼓をうっていた。
「暗野さんのも食べて良い?」
美冬が聞くと木陰が小さく頷く。
「ん~~、こっちのマンゴーの方も美味しい」
木陰のパフェを食べて美冬が喜びながら言う。
「じゃ、私のもあげるね。はい、暗野さん」
「…………い、良いんですか?」
「もちろん」
美冬が自分のパフェを木陰に食べさせる。ただ、美冬が自分のスプーンですくいそれを木陰に食べさせてあげる様子だ。
「……じゃ、い、いただきます」
そんな美冬に木陰は驚きながらも差し出されたパフェを食べる。
間接キスではあるが女の子同士だ。木陰の方もそこまで気にしていない様子に見えた。
「…………ん、こっちのイチゴも美味しいです」
「そうでしょう? そうでしょう? もう一口どうぞ」
また美冬が木陰にパフェを差し出す。木陰の方もそれを受け入れて二口目を食べる。
「…………ありがとうございます、凄く美味しかったです」
すると今度は木陰が自分のスプーンでパフェを掬って美冬に差し出す。
「…………ど、どうぞ」
「ありがとー」
今度は美冬が食べさせてもらっていた。
そんな二人を見ていると木陰の方が
「……な、成田くんも食べますか……?」
と聞いてくれた。
「いや、遠慮しとくよ」
せっかくの誘いだったが目の前に美冬も居るということで今回は断ることにした。
毎回断れていなかったが今回は断れた。
「え、暗野さん、日向は男だしそれはいろいろと問題だよ!」
「…………そ、そうですよね」
と木陰がぎこちなく誤魔化す。
「ごちそうさま」
「…………ご、ごちそうさまでした」
パフェを食べ終え二人が満足そうに言う。
普段は木陰に見つめられながら食べることが多かったが、今回はいつもと違いこっちが見つめる番だった。
美味しそうに頬張る姿を見たい、と言っていた木陰の気持ちが分かるぐらい彼女は美味しそうに食べていた。美冬の前じゃなければもっとしっかり見ていたと思う。
ふと時間が気になりスマホを確認すると6時過ぎを指していた。
「何時?」
俺が時間を確認したのを見ていたらしく美冬が聞いてきた。
「6時過ぎ」
「うーん、そろそろ解散する?」
冬ほどではないがこの時期も日が沈むのは早い。木陰が家の方向と違うところに居ることをを加味すればちょうど良い時間かもしれない。
「…………そ、そうですね」
木陰の方もそんな感じだ。
「あ、最後に連絡先交換しようよ?」
美冬がスマホを出して木陰に聞く。
「…………わ、私なんかとい、良いんですか……?」
「もちろん」
美冬の返事を聞いて木陰が嬉しそうにスマホを取り出した。
「…………よろしくお願いします」
「うん、よろしく! このアイコン可愛いね」
「…………そ、そうですか?」
二人の会話について行けなかった。
(前までは初期のアイコンだったはずだけど……)
そう思い俺も確認してみる。
すると木陰の連絡先のアイコンがいつの間にか、俺が取ったぬいぐるみに変わっていた。
(そ、そんなに気に入っていたのか……)
少し驚きはしたが自分のあげた物でここまで喜んでくれるなら嬉しい。
ただ、今だにこの深海生物の可愛さが分からないことを除けばだけど。
「じゃ、会計しよっか」
美冬の一言で帰る準備をする。
そして何事もなく会計を済ませて店を出た。
「暗野さんって家どこなの? この近く?」
「…………い、家はあっちの方です」
木陰が俺たちの家とは違う方向を指差す。
「あ、じゃあ、結構遠いのね」
「…………は、はい」
すると美冬が疑問に思ったのか何か考えていた様子だ。しばらくすると「なるほど」と小さく言って何か解決したように思えた。
「じゃ、日向は暗野さん送ってあげてね。夜道は危険だからねー」
美冬の提案に驚きはしたものの「分かった」と軽く返事をする。
「…………い、良いんですか?」
「任せて」
前に俺がいるときでも木陰が夜道で変な人に絡まれた。そのことを思い出すと木陰を一人で帰らすことはできなかった。
「じゃ、日向よろしく」
そう言い残して美冬が自分の家の方向へ帰る。
しかししばらく進んだのに立ち止まって
「暗野さん! また明日! 学校で! いっぱい話ましょう!」
と離れていたので大きな声で聞こえるようにと言ってきた。
それを聞いた木陰も嬉しそうに
「……はい! ……よろしくお願いします!」
と返事した。木陰も頑張って彼女には珍しく声を張って大きな返事をしていた。
美冬がそれを聞いて遠くからでも分かるぐらい満足そうに手を振って帰って行った。
「じゃ、家ぐらいまで送るよ」
「…………あ、ありがとうございます」
少し日が傾いているなか木陰を家に送るため二人で木陰の家へ向かい始めた。
◇◆◇◆◇◆
木陰に学校の休み時間に話せる相手ができました。
三章の前半はあと二話で一区切りだと思います。
なので
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