追跡調査
青木先生がホームルームの終わりを告げた。
(ようやく終わった。今日は大変だったな)
放課後になり念願の日向くんと一緒にご飯を食べるお誘いを学校を出てからメールでしよう。
(来てくれるかな? 今まで誘ったら100%来てくれたし大丈夫だよね!)
そんなことを思いながら帰る用意をする。急いで学校に出てメールを送らないといけないからだ。
しかし浮かれた私に悲しい出来事が起きた。
「ダメ! 日向、今日は私と二人で帰ろう!」
斜め前の席の前田さんが日向くんを誘う。
「………………えっ」
思わず声が漏れてしまった。
しかも日向くんは断る時間も与えられないまま教室の外へ連れ出されてしまった。
(…………嘘)
目の前で起きた急な出来事に困惑してしまう。
しかし徐々に自分の置かれた状況が理解できた。
(……日向くんをご飯に誘えないじゃん!)
それどころか日向くんと前田さんの関係性の方も気になる。
(前田さんは隣の斎藤秋人くんのことが気になってるみたいだし大丈夫だよね……?)
心配になり自分に言い聞かせる。
それでも自分の心は落ち着くどころかむしろ余計に心配になっていってしまう。
(日向くん、ごめんなさい。でもこれだけは許して)
そう謝罪しながら私は二人の後をつけた。
◇◆◇◆◇◆
前田さんに連れて行かれるまま家に帰る。
「意外にも日向と二人で帰るのは初めてだよね」
「確かに、いつも秋が居たからな」
美冬と二人きりでの初めての下校。緊張するかと思ったが秋に気のある分、変な思いもお互いに無く楽な感じで会話しながら帰っていた。
「ねえ、日向。どうやったら暗野さんと話せるの?」
「いや、だから普通にだって」
お昼休みと同じ事を返す。
「えー、無理だったよ」
対策が思い付かず駄々をこねる美冬。
「あ、そうだ。日向って暗野さんの胸揉んでたけどどうなったの?」
唐突につつかれたくない過去の質問をしてきた。
「もしかして有耶無耶にした? それはサイテー男、として失格よ、それ。今からでも謝った方が良いわよ」
「してない、してない。ちゃんと謝ったし暗野さんも自分に非があったからってお互いに解決したよ」
そのことについては問題は一応解決していた。まあ他にもいろいろとマズいことをしてきているが……頬を撫でるとか、胸に飛び込むとか……ごめん木陰。
自責の念にかられ心の中で謝罪する。
「へー、でもじゃあそれがキッカケで話すようになったの?」
「うん、そんな感じ」
まとめればそうなると思う。
「私も胸揉めば良いの?」
「それは違う」
突飛過ぎる美冬の意見をすぐさま否定する。
「じゃあ、どうすれば仲良くなれるのよ?」
美冬の質問に真剣に考える。
(木陰と上手く仲良くなるにはか……)
少し考えても思い付かなかった。
「なんで前田さんは暗野さんと仲良くなりたいの?」
「えー、だって席近いし、日向と話してるし私も話してみたいから!」
と美冬が言う。
でも木陰は女の子を避ける。その理由は深くは知らないが彼女の過去に何かあったのは分かる。
それで昼のときも逃げたのだろう。
(うーん、そんな状態で仲良くなるにはか…………)
かなり難しい問題だ。
「暗野さんは今まで人と話してきたことが控えめだから、ハッキリと自分の意見を言って隠し事せずにすれば良いと思うよ」
これは体験談から出たことだ。木陰は隠し事を嫌う。それは当たり前だけど木陰はその比重がとても大きい。
何かを隠されることを本当に恐れているように思う。
だから、美冬に隠し事をしないようにと伝えた。
「なるほど、やってみるね!」
とアドバイスをもらえて笑顔で答える前田さん。それからも話しをしながら家に向かって行った。
でも途中でずっと気になっていたことを前田さんに聞く。
「あのさ、さっきから後ろで──」
「あ、日向も気づいてた?」
どうやら美冬も気づいてたらしい。
「つけられてるよね?」
「うん」
さっきからずっと誰かにつけられてる。それが誰かは分からないが尾行は下手そうである。
「次の角で待ち伏せする?」
俺が美冬に聞くと
「良いね! それ!」
こんな場面で物怖じしないのが美冬なのだろう。
そして次の角を曲がり足を止めて二人で尾行してきた人を待ち伏せする。
しばらくすると角から人が来た。これは俺たちをストーカーしていた人だ。
美冬と二人でつけて来た人の顔を見る。
その子は木陰だった。
「暗野さん!」
「こ、暗野さん!?」
思わず下の名前で呼びそうになってしまうほど驚いた。
しかし驚いたのはこっちだけではなく木陰の方もだった。なんでバレたの!? 声には出ていないが顔に凄く出ていた。
「暗野さん、なんで私たちをつけてたの?」
美冬がズバズバと質問する。
「………………えっと、その、それは」
しどろもどろになり答えられない木陰。
「なんで、なんで?」
と続ける美冬。
覚悟を決めた顔の木陰。
「………………そ、その、二人がどんな関係か気になったんです! だから後をつけました…………その、ごめんなさい!」
そんな木陰の答えを聞いて美冬が詰まることなく簡単に答える。
「別に日向とは普通の友達だよ。ちょっと暗野さんのこと聞いてただけだよ」
「………………私のこと…………?」
「うん!」
状況が飲み込めず俺に助けを求める目で見てきた。
かわいそうだが、困った顔をしている木陰は可愛かった。
「まあ、立ち話もなんだしどこかのカフェで落ち着いて話す?」
「良いの!? じゃあ日向の奢りで!」
「…………い、良いんですか!? …………そ、そのお金は私も出します!?」
二人とも凄い勢いで食いついた。
そして落ち着いて話しをするために近くのカフェへ三人で向かった。
◇◆◇◆◇◆
ストーカー木陰。独占欲強めらしい。
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