昼食と放課後
「一緒にご飯食べましょう?」
まさかのお誘いに反応に困る私。
「あ、教室じゃ食べにくいよね」
そう言うと前田さんはお弁当を持って立ち上がった。
「ほら、暗野さんもお弁当持って」
あまりの勢いに言われるままお弁当を手に取り私も立ち上がった。
すると前田さんが私の手を引いて教室の外へ連れ出した。
「あの雰囲気の中ご飯食べづらいよね、暗野さん悪くないのにね」
廊下に出るなり前田さんがそんなことを言ってくれた。
一緒にご飯を食べる話だけではなく、私なんかの味方をしてくれてることに驚いてしまう。
(良い人なのかな……)
そんなことを思ってしまう。
「どこでご飯食べる? 庭のベンチ? 食堂?」
私が少し考え事をしている間に前田さんはポンポンと話を進める。
日向くんとは違う話のスピード感に置いてきぼりになる。
(私が今まで話してきた人のなかで一番話の進みが早い……ついていけない)
前も私のこと気にしてくれてたし、前田さんは悪い人ではないそんな気がする。
でも私のトラウマが心を許すことを避けてしまう。
「やっぱり私とご飯食べるの嫌……かな?」
聞きにくいことも前田さんはストレートに聞いてきた。
「………………嫌、なんてことは…………ないです………………」
つまりながら答える。
「……………でも、その…………」
喉元まで出かかった言葉を吐き出そうとする。
しかしそのあと何も出せずに黙ってしまう。
「「…………」」
私の言葉を待ってくれている沈黙が痛い、苦しい。
「………………ま、前田さんは悪い人じゃないと思います…………でも、すみません…………」
前田さんのせっかくの誘いを断ってしまった。
私の心の奥の奥にあるトラウマ。
昔から同性の女の子からヒドい言葉を言われた。男の子なんかは同じようにヒドい言葉を言うこともあったが私を傷つけていった人の多くは女の子だ。
それに女の子は先生にバレないようにすることも多かっし、何よりも陰湿な嫌がらせが多かった。
その最たる例が『私は誰にも言わないから』だ。
これに騙され胸の内を打ち明けると、その内容がクラス中に知れ渡っていた。
そんなことが積み重なり私は女の子を信じられなくなっていた。
「………………ご、ごめんなさい、私はこれで」
それだけを言い残して私は逃げるようにいつもの屋上に一人で向かった。
(あぁ、もったいなかったな……)
せっかく誘ってくれたのに。
女の子が怖い、そんな理由で一緒にご飯を食べられるチャンスを断ることになったのが私にはただただ悲しかった。
◇◆◇◆◇◆
「ただいま」
教室の扉を開けて前田さんが帰って来た。
「あれ、暗野さんは?」
俺がさっき見たのは木陰と前田さんが一緒にお弁当を持って出ていく姿だ。
それなのに前田さんだけが教室に戻ってきた。
「なんか、どっか行っちゃった」
俺の質問に答えながら前田さんはお弁当を食べる準備を始めた。
最近は俺と秋、カズに前田さんで一緒に昼ご飯を食べることが多い。なので前田さんも俺たちの囲む机に弁当を置く。
「ねえ、日向。どうやって暗野さんと話してるのよ?」
そんないろいろと危ない質問が飛んできた。
「確かに、日向って結構隣のやつと話してるよな」
それに便乗する秋。
「うーん、普通に?」
どうやって、と聞かれても特に方法は思い付かなかった。
「なんやそれ、適当やな」
「えー、もっと暗野さんと話したかったなー」
相変わらずの関西弁で相づちを打つカズ。少し駄々を言う前田さん。少しいつもと違うことがあったが4人でご飯を食べ始めた。
「はい、これでホームルーム終わり。気をつけて帰れよ」
ご飯から時間が進み、青木先生のホームルームが今終わった。
ちなみに木陰はご飯を食べ終えたのか5時間目が始まる頃にはちゃんと席に着いていた。
「あー、疲れた」
斜め前の席の秋が伸びをしながら言った。
「日向帰ろうぜ」
「おう」
そんな返事をすると木陰が少しだけ何か言いたげな目で俺を見つめてきた。
しかしそんな木陰を割り込んで前田さんが
「ダメ! 日向、今日は私と二人で帰ろ!」
勢い良く言う。
あまりの声の大きさにクラスの人たちにも聞こえて注目が集まってしまった。
普通、秋にゾッコンな分騒ぎも大きい。木陰に関しては驚いて珍しく少し声が出ていた。
しかしそんなことを気にせず前田さんは俺の手を引いて教室を出た。
ちなみに前田さんは教室を出る際に秋に「秋人は一人で帰れ」と言い残していた。
「よし、帰ろう」
「いや、前田さん、『よし』じゃないでしょ……なんで俺なの? 秋じゃなくて?」
それを聞くと前田さんが待ってましたという顔で
「だって、暗野さんのことを聞きたいから!」
と宣言した。
(聞かれる内容によってはいろいろとマズいものが……)
あまり聞かれたくないところに踏み込まないでくれよと神に祈りながら、前田さんと家に帰ることになった。
◇◆◇◆◇◆
放課後に晩御飯を誘おうとしてルンルンだった木陰。日向が美冬に奪われました。
次回、木陰が選んだ選択肢とは…………
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