メールの返信と
時間は少し巻き戻る。
俺、成田日向はひょんな事からお世話になった暗野さんの家から自宅へ歩き始めた。
「それにしても、不思議なことばかりだったな」
歩きながらぶつぶつと独り言を言う。
暮れかけた日に焦りを覚え少しはや足で歩く。
(結構長くお世話になってたのか?)
暗野宅でお世話になり気がつけば夜が迫っていた。
時間を気にしないぐらい楽しんでいたとも言える。
「でも、あんな事があったのにも関わらず、許してくれる暗野さんは天使か聖女なのかもしれないな」
それに、心に残っていたのは暗野さんの見せた笑顔だ。
笑顔と共にもう一つ忘れられないものがある。
彼女のそばかすだ。
(そばかすもなかなか悪くないな……)
彼女の見せた笑顔とそばかすが合わさり輝いて見えた。
それがすっかりと目に焼き付いていたのだ。
(暗野さんの笑顔、もう一回見たいな……)
何を考えているんだか、さっさと帰ろう
そう思い俺は走って家を目指した。
◇◆◇◆◇◆
「ただいま」
何事もなく家にたどり着いた。
「お帰りなさい。アンタ初日から夜帰りかい、昼ごはんどうしたの?」
帰るなり色々と言ってきたのは俺の母親だ。
「友達と食べてきた。ちょっと遅い昼飯だったから晩飯はいらないや」
「あ、そう。斉藤くんとは一緒クラスになったの?」
斉藤くんとは親友の斉藤秋人のことだ。
「んー、なった」
靴を脱ぎながら答える。
聞かれてやっと思い出す程度だった。それぐらい今日は他の事に意識が向いていた。
「へー良かったじゃん。じゃあ手洗いはしなさいよ。あと風呂沸いてるからいつでも入りな」
「へーい」
言いたいことを言い切ったのか、母さんはリビングへと戻っていった。
俺は洗面所に向かい言われた通りに手を洗う。
(あー、何にもすん気が起きねえ)
今日は感情の起伏が激しかったのかかなり疲れた。
部屋に戻り荷物を置いてベットに寝転がる。
身体に何か当たっている感じがして、ポケットに手を伸ばす。
「なんだスマホか」
ただ、それを見たことで連絡先を交換したことを思い出した。
(あー、メール送ろうか。いやわざわざ、無事帰りました!顔文字付きみたいなのは彼女に送るものでもないだろ)
すぐさま自分の考えを否定した。
いまいち距離感が掴めないのだ。
彼女に対してどんなメールが良いのか決まらず、程なくして俺は考えるのを止めた。
(とりま、風呂入るか)
◇◆◇◆◇◆
「あー、さっぱりした」
いつもより少し長い風呂から上がると、時間は完全に夜中になっていた。
風呂おかげで疲れが取れたのでもう一度あの問題と対峙することを決めた。
スマホを手に取るとそこには──
暗野木陰さんから新着メッセージがあります
と表示されていた。
思わぬ事態に動揺する。
「マジか、あの人メール自分から送るタイプなのか!?」
彼女からメールが来たことにも驚いたが、もう一つのことでも同じぐらい驚かされた。
(メールなっっっが)
軽く三十行はありそうだ。
ひとまず長文のメールを読み進める。
内容は要約するとこうだ。
ビンタしてごめんなさい。
家に強引に誘ってごめんなさい。
ご飯食べてくれてありがとう。
感想嬉しかった。
また食べに来てね。
と、だいたいこんな感じ。
てか、数えたら五十行はあった。
(一つずつ返していくか。あとメールは短めにしよう)
メールのボリュームは多かったが、読んでいると心が軽やかになっていく気分になった。
(俺、このメール楽しんでるし)
冷静に自分を分析する。
既読してから時間も経っていたので、メールをできるだけ短く推敲し、送信ボタンを押した。
(はあ~、意外に返信に疲れた)
さっきまでメールを考えていたこともあり、頭の中は暗野さんのことばかりだった。
そして連想ゲームのように彼女と言えばでアレらも頭によぎってしまう。
目に焼き付いたとパンツ、そして胸を揉んだときの感触と膝枕たちだ。
(あー、俺最低なのかもしれない)
ふと、元凶となったおみくじを確認したくなった。
財布からおみくじを取り出し確認してみる。
待ち人、難あれど来る
(はぁ、神様は何でもお見通しってことか)
俺はベッドで暗野さんのことで悶々となりながら眠りに就くのだった。
◇◆◇◆◇◆
面白いと思った方、続きが気になると思った方は
下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえると、作者が踊り狂い更新頻度が上がります!!!
(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに
それとブックマークもお願いします!!!