久しぶりの帰宅
「…………う、全然話せなかった」
学校からの帰り道で一人嘆く。
「…………もっと話したかったのに」
最初の挨拶こそ元気良くしたもののそのあとが上手く続かなかった。
「…………私が話しかけて良いものなの…………?」
根暗に見られている(実際に根暗だけど)私が日向くんと話す、そんな姿を周りに見せるのは日向くんに迷惑に思える。
「…………どうすれば良いんだろう」
良い案が浮かばずに頭を抱える。
何かキッカケがあるとすれば、話せるとしても授業の始まりと終わりの少しぐらいだ。
「…………これじゃあ、告白なんてずっと先だよ…………」
日向くんの友達だとハッキリ言えるようになって、自分に自信を持てたら告白すると決めた。
しかし、このままではそんな日はずっと訪れないだろう。
「…………ご飯誘おうかな」
スマホを取り出して日向くんへメールを送る準備をする。
ご飯に誘ってしまえば、周りの目を気にせずに気兼ね無く話せる。それに一緒にご飯を食べられて料理も褒めてもらえる。一石三鳥はある。
「…………でも金曜日にさらに土日まで一緒にご飯を食べたからな……」
今日誘って一緒に食べられたら四日連続となる。私は日向くんと食べられるなら何日連続でも大歓迎だけど、日向くんがどう思うのか分からない。
「…………そもそも友達ってどれぐらい一緒に居るのが普通なんだろ……?」
ずっと友達の居なかった私には友達付き合いというものが分からない。
なのでどこまで踏み込んで良いのか、どこまでが友達なのか線引きができなかった。
「…………恋人まがいのことしちゃったし」
恋人の振りをしてもらったこともある。それに間接キスもしてしまった。
「…………もう、分かんないよ」
友達というものの距離感が分からず投げ出してしまう。開いていた日向くんの連絡先を閉じた。
「…………家帰ろ」
結局悩んだ挙げ句、何もできずに家に帰ることを選んだ。
「…………日が経ったら日向くんとご飯食べよう」
ひとまずの結論を出して家に帰った。
「…………ただいま」
誰からも返事が返ってこないがいつも言うようにしている。
しかし、日向くんを家に呼ぶようになってからは無性に寂しさが込み上げてくる。
「…………はぁ」
私以外に音のない部屋が余計に寂しさを感じさせる。
「…………何か日向くんにメール送ろうかな」
日はまだ出ているしメールをしても問題ない時間帯だろう。
しばらくメールの内容を考えても思い付かず、スマホをベッドに放り投げる。
「…………みんななんてメール送ってるの」
何か用事が無いときにメールを送るなんてことできずに諦めてしまった。
必死に変わろうとしてこの結果だ。何もできなかった自分に落ち込む。
「…………とりあえず、癒されよう」
そう言って手に取ったのは昨日日向くんがずっと抱いてくれていたぬいぐるみだ。
そして匂いを嗅ぐ。
「…………ぁぁあぁ、幸せ」
日向くんの匂いを嗅いでさっきまでの悩みが消し飛んだ。
「…………挨拶頑張ったし、ちょっとぐらいハメ外して良いよね……?」
自分に問いかける。すると心の中に住む悪魔の私から『それぐらい挨拶を頑張った報酬だ、好きなだけやれやれ』と囁きが聞こえてきた。
「…………よし!」
悪魔に唆されて制服のままヘッドに飛び込む。そしてそのまま横になる。
顔にぬいぐるみを押し当てて匂いを嗅ぎながらしばらくの間ベッドでぬいぐるみに包まれて寝る。
「…………はぁあ、最高」
思わず感嘆の声を上げてしまった。
私は日向くんが居なくても日向くんを感じられる最高のシステムを作ってしまったらしい。
「…………嫌なことがあったら絶対にコレしよ」
そう思えるほどに幸せな気持ちになれた。
「…………制服綺麗にして、ご飯作ろ」
ストレス発散と幸せな気持ちになり活力を得れた。それに比べると制服の掃除など大したことではない。
制服の掃除を終えて服もついでに着替えた。
「…………ご飯だ、ご飯」
食事を取って明日の英気に繋げよう。そして明日こそ日向くんともっと学校で話そう。
そう決めて夕食に取りかかる。
しばらくすると玄関が開く音が鳴った。
急な出来事に心臓が速くなる。
「……ただいま」
玄関から弱々しく声が聞こえた。
そんなことを言う人は一人しか居ない。
「…………お帰りなさい、お父さん」
廊下を通ってリビングに顔を出したお父さんに挨拶をする。
しばらく見ていなかったからか、はたまた整えず伸ばされた髭のせいか昔より一層老けて見えた。
服もしわしわだ。それだけ仕事をしていたのだろう。
「……ただいま、木陰」
久しぶりにお父さんが家に帰って来た。家族と一緒に過ごせる、そう思えて心が踊った。
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