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会話とお開き

 

「それでお前ら、いつの間に名前で呼び合う仲になったんだ?」


 先生の一言でさっきまでの和やかな雰囲気から、いきなり日向くんと私が凍り付く。


「…………わ、私、日向くんって言ってましたか…………?」


 動揺しながら事実確認をする。


「ああ、二人とも名前で呼び合ってたぞ。話の邪魔になるから話題が落ち着くまで言わなかったが」


 必死に記憶を辿っても思い出すのは、先生の前で二人仲良く名前で合ってた記憶ばかりだ。


「別に仲が良くなったぐらいでそんなに焦るなよ」


「まあ、そうですね」


 確かにと私も賛同する。


「…………その、名前で呼び合うようになったのは火曜日からです……」


「学校でも呼んでたか?」


「…………い、いえ、その、学校ではまだ呼び合えて無いです……………」


「気恥ずかしいからか?」


「…………そうですね、それに、あの、日向くんに迷惑かかるかなって……」


 私なんかがいきなり学校で『日向くん』なんて呼び始めたら、クラスのみんなは驚くだろう。

 それだけで済めば良いのだがクラスで浮いている私が呼ぶのだ、日向くんが注目の的になるのは簡単に想像できる。


「迷惑じゃ無いんですけど、まあその、秘密にしたいみたいな」


 そんなことが分かっていても『迷惑じゃ無い』なんて言ってくれる日向くんは本当に優しい。

 そんな人とこんなに仲良くなれたというだけで、また頬が緩んでしまう。


「そうか秘密か、なら暗野の方はそんなに気にしなくて良いんじゃないか?」


「…………そうですね」


 ただ、いつかは学校でも『日向くん』と呼べるような関係になりたいと思う。


(少しずつ頑張って明るくなろう……)



「さて、私の聞きたいことも聞いたし、遅くなって悪いが本題に入って良いか?」


「…………は、はい、もちろんです」


 先生の顔がさっきまでの和やか顔から、真剣な顔に変わった。


「暗野、坂本のとき何もできずに見守ることしかできなくて、本当に済まなかった」


 青木先生が深々と頭を下げた。


「…………い、いえ、その先生は止めてくれてましたし、その、気にしないでください」


「いや、あの時、暗野が乗り越えてくれたから良かったものの、もしそうならなければ心に深い傷が残る可能性もあった。取り返しがつかないことをした、本当に済まなかった。償いならなんでもする」


 そう言って青木先生はまた深々と頭を下げた。

 先生の言うことは正しいと思う。

 私が日向くんと出会って居なかったら心に深い傷が残っていただろう。


「…………そうかもしれないですね……ただ、その私はどうして良いの分からないです……だから、その、ほどほどに私を甘やかしてほしいです……その、みんな私に厳しい人が多かったので……」


 予想していなかったであろう発言に、先生も日向くんも驚いていた。


 今まで出会って人のほとんどに強く当たられた。だから一人でも私に優しくしてくれる人が居てほしい。

 そんな気持ちから出た言葉だった。


「あ、甘やかすのか……全部を甘やかすことはできないが、するべき事をしっかりするなら構わないが」


「…………ありがとうございます!」


 これで私の周りに日向くんと先生、二人も私を甘やかしてくれる人ができた。交流関係が広がり優しい人たちに囲まれる、そんなことが可能になりそうで嬉しかった。


「暗野がそれでいいなら別に良いか」


 と先生も納得していた。


「それでもう一つ大切な話だが」


 再び先生の顔が厳しくなる。


「坂本のことだが今週から学校に復帰する」


 先生の発言に私が震えてしまう。


「それって良いんですか?」


 日向くんが私の求めていた質問をしてくれた。


「そうだな……私は警察に突きだそうとしたが、学校と坂本の親に凄く止められてな」


 先生は本気の目で言っていたので、本当に突きだそうとしたのだろう。


「それで話合った結果、坂本は一人ひとりに謝罪すると言って髪も黒く染めていたよ」


「…………そ、そんな簡単に心を入れ替えますか……?」


「私もそう思ったが、坂本のしたことで家族の方が大喧嘩したらしくそれが堪えたらしい。それで少しは変わろうと思えたんだと」


「…………な、なるほど」


 確かに自分のせいで周りに迷惑をかけるのは嫌だ。それが彼女が変わるキッカケになったのかもしれない。


「…………で、でも私はまだ謝罪してもらってないですよ」


「暗野に関しては、学校でクラスのみんなの前で謝ると言っていたよ」


「…………そ、それで謝って終わりなんて、私許せないですよ」


 私をあれだけ傷付けようとしたのに、謝ってはい、おしまいなんて納得できなかった。


「そうだろうな」


 先生は平然と答えた。


「謝って終わりなら、警察も要らないからな。別に許さなくて良いぞ」


「…………そ、それで良いんですか……?」


 学校の先生らしくない意見に理解が追い付かなかった。


「良いと思うぞ、ただ坂本も復帰するし、学校では上手く付き合えとしか言えないな」


 上手く付き合えか。それに許さなくても良いなんてことを言う変な先生だな。

 でも今までの先生の中で一番信頼できた。


「…………が、頑張ります」


「あと坂本はもう一度問題起こしたら退学の話もあるからそんなに怯えなくて良いぞ」


 そう言われて心が楽になった。そうだよ、高校だもん義務教育から外れるんだよ。退学なんてある話だよ。


「…………それを聞いて少し安心しました」


「私も嫌な思いをさせないよう頑張るが、何かあったらすぐ相談してくれ。頼りないかもしれないが頑張るよ」


「…………はい」


「あ、暗野、私とメール交換しておくか?」


「…………はい!」


 すぐに私のことを気にかけてくれる青木先生と連絡が取れるなら安心できる。


「日向、暗野に連絡先送っといてくれ」


「はーい」


 日向くんから青木先生の連絡先が送られて来た。


(これで二人目……!)


 私の連絡先に青木先生が加わって、これでクラスのを覗けば連絡先は日向くんと二人になった。

 大人を頼れる、頼って良いと思えるのが心の底から嬉しかった。


「私からの話はこれで終わりだ」


「…………その、わざわざ家までありがとうございます」


「まあ、坂本のことで近くに来ていただけだよ」


 さっきスマホを触ったときに時間を確認したが、時刻は9時半を回っていた。


「大分遅くなってしまったな」


「…………そうですね……日向くんは平気そうですか?」


 私の話に付き合わせてしまいかなり遅くなってしまった。


「うーん、そろそろ帰らないとかな」


「…………そうですよね」


 名残惜しく思えたがまた明日会えるので良しとしよう。

 日向くんと先生が帰る準備を終えて玄関に向かう。私も見送るために玄関へ行った。


「…………その、今日はありがとうございました」


 先生に向けてお礼を言う。


「私も迷惑かけたからな。何かあったら頼ってくれよ」


「…………はい!」


 そして日向くんと休日最後の話しをする。


「……その、今日は遅くまで付き合わせてすみません。……その私、凄く楽しい一日になりました」


「本当!? 俺も今日凄く楽しかったよ。またゲームやらしてね」


「……はい! ……好きなだけやりに来てください!」


 そして靴を履いた二人を見つめる。


「明日休むなよ」


「…………はい!」


 先生がそんなことを言って扉を出た。


「……日向くん、また明日学校で」


 手を振って挨拶をする。


「うん、また明日学校で」


 日向くんとまた明日会える、それが嬉しい。


「……あ、日向くん、今日と昨日した約束忘れないでくださいよ?」


 昨日と今日でたくさん約束をした。


「うん、木陰もね、また明日」


 そう言って最後に日向くんから手を振り返してもらえた。


(良いもの見れちゃった……)


 最後に手を振り返してくれた日向くんが可愛かった。

 それに約束もたくさんできたし覚えてもらえている。それが嬉しかった。


 二人が帰って家が静まりかえる。そんな中、私はスマホを見つめた。

 新しく追加された、先生の連絡先を見てニヤニヤする。


(連絡先がまた増えた……!)


 日向くんと出会うまでは誰も登録されて無かった画面から、少しずつ連絡先が増えて私の世界が広がっていくように思えた。


「……また増えると良いな……いや、増えるように頑張ろう」


 私は増えた連絡先を眺めながら呟いた。



 ◇◆◇◆◇◆



木陰にとって甘えられて頼れる人が増えました


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― 新着の感想 ―
[良い点] にやにやするんじゃあ
[一言] 更新有難う御座います。日向君は木陰さんを思う存分甘やかして、さらに可愛くしてしまうのでしょうね。日向君と土日のデートを重ねるたびに、木陰さんは別人のように美しく羽化するのですね。
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