休日最後の晩御飯
手を合わせてさっそくご飯をいただく。
やはりメインのチキン南蛮に手が伸びる。
「美味しい」
木陰の作ってくれる料理は何でも美味しかった。
「……ありがとうございます」
木陰の方も俺が食べ進めるのを見た後、料理のデキに安心したらしく食べ始めた。
そんな彼女の表現からは笑みがこぼれていた。
「……たくさん食べてくださいね」
「」
「……ありがとうございます」
再び木陰の手料理を口に運ぶ。
そんな俺の様子を木陰が嬉しそうに見ていた。
俺は見守られながらも、木陰の美味しいご飯を勢い良く食べ進める。
「……あ!」
急に驚いた声を出した。
「……日向くん、食べさせてあげますね」
「えっ、どうして」
「……ゲームで負けてくれたお礼です」
そう言えばゲームをしているときに木陰がそんなことを言っていたような気がする。
集中していたので記憶から消えていた。
ほら、と言いたそうに木陰がチキン南蛮を彼女が口を付けた箸で俺の口元に持ってきた。
「いや、良いよ別に」
ここで食べさせてもらうと、ゲームに完璧に負けたことを認めた気がしてなんとなく嫌だった。
「……そんなこと言わずに、どうぞ」
それでも尚、木陰が食べさそうとしてくる。
しかし俺があまりにも断るので彼女は一旦箸を置いた。
「……どうして断るんですか?」
「負けた気がするから遠慮したい」
子どものような理由に彼女が可愛らしく笑う。
「……良いじゃないですか、それに負けたのは事実ですからおとなしく食べてください」
再び箸を俺の口元に近付けてくる。
負けてない、と主張したかったが負けたのは事実だったので何も言えなかった。
断る理由を木陰に潰されたので恥ずかしいが木陰の言うとおり、おとなしく食べることにする。
「……あーん」
言われるがまま口を開ける。
そこに木陰の口を付けた箸で、メインのチキン南蛮が運ばれてくる。
「……どうです?」
「美味しいけど、なんか餌付けされてる気分」
ここしばらく、食べさせてもらう度に思っていたことだ。
美味しいが、彼女の箸で食べさせてもらう状況がそんな風に思えた。
「……餌付け……ですか、悪くは無いですね」
俺の言葉が気に入ったのか木陰が呟いて笑っていた。
言葉の終わりにかけて声が小さくなり聞こえなかったので、聞き返そうとしたが木陰が話を続けた。
「……さあ、もっと食べてください」
と一回では満足しなかったのかそれとも彼女の優しさか、また口元へ運んでくる。
楽しそうに運ぶ木陰を拒むことができずにまたおとなしく食べる。
彼女の方は間接キスお構い無しと言った感じだが、俺の方はまだ慣れずにいた。
徐々に心臓が速くなってきていた。身体が少し火照ってきているような気がする。
「……あーん」
それでも言われるがまま木陰から再び餌付けされる。
またも楽しそうな木陰を拒めなかった。
「……日向くん、口元にご飯ついてますね」
そう言って木陰が手を伸ばして取ってくれた。
取ったお米を木陰が見つめたあと、そのまま彼女が自分の口に運んだ。
「えっ」
彼女の行動に声が出てしまった。
なんだかもうお構い無しと言った状態だ。
「……どうかしましたか?」
「もう間接キス関係無く普通に食べてたから」
「……そうですね、でも一回間接キスしたので二回も三回も一緒ですよ、お互いに気にしないでいきましょう」
彼女の言い分も理解できるが、そこまで吹っ切れた行動はまだ取れなかった。
しかし木陰は気にせず食べさせてくれる。
拒むと悲しまれそうでなかなか遠慮できない。メインのチキン南蛮を運んでくれるのでご飯が進んだ
「……おかわりどうしますか?」
「いただくよ」
「……じゃあ、行きましょうか」
と一緒にご飯をよそいに行く。
一回してから何故かそのまま続いている謎の決め事だ。
「……さあ、たくさん食べてくださいね」
木陰がご飯を食べ終わり、俺の方をずっと眺め始める。
恥ずかしさもあったが、木陰があまりにも嬉しそうに見つめるので悪い気はしない。
見つめられながらもご飯を食べ進めて無事食事を終えた。
「「ごちそうさまでした」」
先に食べ終えていたがどうやら二人で言えるまで待っていてくれたらしい。
「凄く美味しかったよ、満腹、満腹」
「……はい、ありがとうございました」
と嬉しそうに言う。
ご飯も食べ終えて少しの間二人で椅子に座って会話を始める。
「……もう、夜ですね」
「そうだね」
時刻はもう8時前を指していた。
木陰との楽しい時間の終わりが近づいている。
「……今日は凄く楽しかったです、ありがとうございました。その、友達を家呼ぶのは初めてだったので上手くできたか心配です…………」
それも夢で言うほど心配していた。
「凄く楽しかったよ、またあのゲームやらしてよ。次のボスは完璧に勝ちたいし」
「……本当ですか!? ……もちろんです! ……いつでも遊びに来てくださいね!」
木陰は凄く嬉しそうにしていた。
そんなに喜んでもらえると俺も嬉しくなる。
二人で楽しく会話していると、木陰の家の呼び出し音が鳴った。
「……こんな時間に誰ですかね?」
木陰が疑問に思ったのかモニターの方で誰なのか確認する。
すると驚いた声をあげた。
「……あ、青木先生!?」
「えっ、どうして!?」
「……わ、分かりません、で、でも出ますよ」
そう言って木陰が通話をできるようにした。俺はバレないように静かにする。
『よ、暗野、近くまで来たから寄った。坂本のことで謝罪とその後の話、それに学校のこと聞きたいから家に入っていいか?』
「……え、ちょっと待ってくださいね」
と木陰が俺に確認する。なんて返して良いのか分からずお互いに黙ってしまう。
そんな時間が続いて木陰が先生を待たせられずに
「……今開けます」
と扉を開けた。
『ありがとう』
と青木先生が木陰の家へ向かう。
「……ひ、日向くんは私の部屋に終わるまで隠れててください!」
「え、うん」
木陰に押されるがまま部屋に隠れる。
「……ひ、日向、変なところ開けたり見たらダメですからね! ……バ、バレると大変ですから!」
「分かった」
「……青木先生が帰ったら呼びますね」
終わりの雰囲気から青木先生が帰るまでの隠密作戦が始まった。
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