お礼と夕食
木陰に連れられて木陰の部屋からリビングへ向かった。
そして木陰が晩御飯を作るためにキッチンへ行く。俺はまた木陰の見える位置の椅子に腰掛けて眺めていた。
「……今から作り始めるので、少し時間かかります……すみません」
「別に気にしなくて良いよ」
「……ありがとうございます」
寝てしまったことで、ご飯の時間が遅くなったことに責任を感じていたのかもしれない。
「あのさ、飲み物もらって良いかな?」
「……飲み物ですか…………あっ!」
木陰が何かを思い出したみたいな反応をする。
「……すみません、……寝る前から日向くん飲み物欲しがってましたよね、本当にすみません」
木陰が急いで水を持ってきてくれた。
「ありがとう」
勢い良く水を飲む。喉が渇いていたのでただの水がとても美味しく感じた。
「……その、さっきのお礼まだしてませんでしたよね、その寝起きで混乱してて……」
「別にお礼なんて」
「……いえ、させてください!」
と木陰がらしくない勢いで言う。
「……私、本当に嬉しかったんですよ」
「そんなに?」
「……はい、その、根暗な私を受け入れてもらえた気がして嬉しかったんです。……それに安心して寝てしまいました」
その言葉通り木陰の声には明るさがにじんでいた。
「……本当にありがとうございました」
「そんなに喜んでもらえたなら俺も嬉しいよ」
「……私からもお礼に何かさせてください」
ここまで感謝されると逆にどう返して良いのか分からない。
「あ、じゃあ変態って呼ぶの止めない?」
木陰が起きてからというもの俺を変態呼びしている。
「……え、事実ですから……それは……でも、そうですね、止めますね」
何か木陰が凄く葛藤していたが止めてくれるらしい。
ただ変態という事実は変わらないようだ。
「ありがとう」
これでお互いの話題も一段落ついた。
「……ご飯にしますね、日向くん」
「うん、お願いするよ」
木陰がキッチンへ戻り料理の続きをする。
心地良い料理の音が聞こえ始めた。
そんな料理中の木陰の様子を覗き見する。
「……どうかしましたか?」
相変わらず俺が見ると一瞬でバレてしまう。
「料理の様子が気になって」
「……そうですか、好きなだけ見ててください」
木陰から許可も降りて料理姿を見る。以前とは考えられないほど簡単に許可が降りた。
そして昼のときとは違い木陰は落ち着いて料理を進めている。
なので今回は今までよりも料理の方も注目できた。
「本当に手際良いよね」
そんな姿を見て自然と言葉が出てしまった。
「……そうですか?」
「本当に手際良いと思うよ」
「……ありがとうございます、また褒めてもらえるなんて……………」
言葉の後半はゴニョゴニョ言っていて聞き取れなかったが、素直に喜んでくれているらしい。
「……その、私少しずつですけど、人目に慣れてきたかもしれません」
「本当に!?」
「……はい、その、日向くんに見られていてもちょっとずつですが、緊張せずに居られてる気がします」
確かに、金曜日のカレーのときは凄く恥ずかしがっていたし、さっきの昼ごはんを作ってくれたときも緊張していたように見えた。
しかし、今の木陰は自然体で料理をしているように見える。
「確かにリラックスしてそうだね」
「……はい、根暗な私から、少しですけど成長できたのかもしれません」
木陰が自分に自信を付けてくれているのなら嬉しく思えた。
「料理できましたけど──この後に言うこと分かります?」
問題と言いたげな顔で見つめてきた。
「私が運ぶので、日向くんは待っててください? かな?」
「……正解です!」
転けたのは一度だけだが、木陰の胸に飛び込んだ過去がある以上警戒するのは仕方ないのかもしれない。
それにしても木陰は俺が正解したのが嬉しそうだった。
その答え通り木陰が運んでくれて、美味しそうな料理が机に並ぶ。
メニューは
チキン南蛮
ミネストローネ
冷奴
アスパラの胡麻和え
ご飯、だ。
どれも美味しそうで今すぐにでも食べたい。
「……それじゃあ、一緒に食べましょう?」
木陰は二人で食べることに強くこだわりがあるみたいだ。
「うん、食べよう」
美味しそうなご飯を目の前にお腹がさらに空いてしまう。
そんな様子に木陰が気付き微笑んでいた。
「……急ぎますね」
気を使って急いで席についてくれた。木陰の優しさに「ごめん、ありがとう」と呟く。
すると嬉しそうに「……はい」と返してくれた。
そして二人でタイミングを合わせる。
「「いただきます!」」
木陰と一緒に休日最後のご飯を食べ始めた。
◇◆◇◆◇◆
面白いと思った方、続きが気になると思った方は評価の方お願いします!!!
下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえると、作者が踊り狂い更新頻度が上がります!!!
(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに
それとブックマークもお願いします!!!!!