寝顔とそばかす
木陰が心地良さそうに眠りについた。
しばらく彼女を撫でていたが、どうしても可愛い寝顔に目が行ってしまう。
そんな彼女を見ていると自然とそばかすの方に目線が持っていかれた。
(そんなに気にするものなのかな……?)
彼女とゲームをしているときに言ったことを思い出して思う。
──そばかすなんて良いこと無いですよ
彼女はそんなようなことを言った。
それに昨日の酔っぱらいに絡まれたときも、そばかすで酷いことを言われていたのも事実だ。
木陰は前髪を切ってありのままの自分を見せていたが、他人から酷いことを言われれば木陰じゃなくても傷つくだろう。
少し自信を付けていただけにタイミングが悪過ぎた。再び気にする様になってしまったかもしれない。
(綺麗だと思うんだけどな、木陰のそばかす)
これは一目見たときから思っていたことだ。
(いつか星空見に行くか……)
木陰との約束の一つだ。それで彼女が今よりも自信を付けてほしいと思う。
そんな木陰のそばかすを見ていると、どうしてもさっきの耳たぶのように触れたくなってしまった。
しかしさっきも触って怒られているのだ、もう一度同じことをするなんて、と自制心が働く。
(けど、触りたい、木陰寝てるし……)
木陰曰く許可無く触るのがダメなだけで、許可を取れば触らせてくれるだろう。
(いや、木陰に真正面からそばかす触らせてください、なんて言えないだろ)
自分の思考に自らツッコミを入れる。
しかし、木陰のそばかすを触りたいという気持ちは変わらなかった。
(あとで全力で謝ろう)
そう決めて木陰の頬を指で撫でる。
そばかすだからといって触り心地に変化は無いが、木陰の頬はプニッとモチモチで触っているだけで幸せになれた。
木陰の可愛い寝顔を見ながら、頭と頬を撫でる。そんな時間を堪能する。
すると木陰が大きな寝返りを打った。その衝動で彼女は目覚めたらしい。
「……うーん」
と可愛らしい声を出して夢心地から少しずつ帰ってくる。
上体を起こして少しずつ覚醒したきた。足の痺れもどうやら終わっているようだ。
「……あれ、日向くん……? ……なんで……?」
寝ぼけた木陰からそんなことを聞かれた。
「木陰が途中で寝たんだよ」
聞かれたことを返すと木陰がしばらく固まり、ゆっくりと考え始める。
「……私寝てたの……? ……それも家に呼んで、日向くんに膝枕してもらって……? ……いや、それは夢?」
「全部本当だよ」
すると木陰が冷や汗をかいて焦り始めた。
「……寝顔見ましたか…………?」
「うん、こっちに顔を向けてたから完璧に」
そう返すと木陰の顔が赤く染まり始めた。
「…………ひ、日向くんのスマホ貸してください」
突拍子の無いお願いだが、断れずに木陰にスマホを渡す。もちろんロックも解除してだ。
すると木陰が俺のスマホの写真を見始めた。
「何してるの?」
「……ひ、日向くんが私の恥ずかしい写真を寝ている間に撮っていないかの確認です」
木陰に言われて今の行動に納得がいった。
無防備の木陰に俺はいろいろできる状態に居たのは事実なので疑われても仕方ない。
(木陰っめ防衛意識高いんだな)
と関心してしまう。そもそも男と二人きりのときに寝ているが。
「……ありがとうございました。……写真に問題は無かったです」
木陰から俺のスマホを返される。
(ん、やってたよね俺、マズイこと?)
自分のしたことだ。最初に考えていたように謝ろう。
「あの、木陰」
「……日向くん」
お互いに話すタイミングが被ってしまった。
なので木陰に先にどうぞとジェスチャーをする。
「……ありがとうございます。……その、日向くん……正直に言ってください。……私が寝ている間に何かしましたか?」
至極まっとうな質問だ。
そして先に話しを切り出しておけばと後悔する。これじゃあまるで木陰に問い詰められたから答えた様な感じだ。
「……正直に、隠し事は無しですよ。……その、胸を触ったとか?」
「いや、その胸は触って無い!」
「……胸はですか、どこ触りました?」
問い詰められて息が詰まる。しかし、怖がりっているのは俺よりも木陰の方だ。
しっかり全力で謝ろう。
「その、俺は木陰が寝ている間に、木陰のそばかすを勝手に撫でました。本当にごめんなさい!」
木陰の前で頭を下げて謝る。
「……本当ですか?」
「本当に木陰のそばかすを触りました。ごめんなさい」
すると何故か木陰が笑い始めた。
「……そばかすって、日向くん。……普通もっと胸とかお尻とか他に触るところあるでしょ。……そばかすなら良いですよ、膝枕してもらいましたし……」
それが木陰の笑っている要因らしい。その表情は明るかった。
それでも俺はまだ木陰に頭を下げる。
「そうかもしれないけど、勝手にそれも女の子の身体を触ったのは事実だから。本当にごめんなさい」
「……それもそうですね、再犯ですしやっぱり許しません」
そうだ彼女の言う通り、今日俺は木陰の耳も許可無く触っている。再犯の罪は重い。
「……なら正直に答えてくれれば許します。……私のそばかすを触った感想はどうですか?」
木陰は二度もバカなことをした俺をこの程度のことで許してくれるらしい。
前から思っていたが、木陰はとても優しい。気を配ってくれたりする優しい子だ。
それなのにこんなことをしてしまった、謝ろう誠心誠意。
「その、そばかすはあんまり触り心地しなかったけど、木陰のほっぺたは柔らかくてスベスベで触ってると落ち着く感じがしたよ」
「……なるほど、柔らかくてスベスベで触ってると落ち着くんですね」
木陰がおうむ返しで俺の感想を言う。
「……分かりました……けどもしかしたら日向くんが寝ている私の胸を揉んだり、服を脱がせたかもしれません」
「いや、そんなことしてない!」
慌てた弁明する。そこのラインだけは絶対に越えてはいけないものだ。
「……はいそうですね、少し困らせたかっただけです。……約束通り日向くんを信じますよ……」
木陰がこんな状況でも約束を守ってくれる。
「……それに嘘で私のそばかす触りました、なんて思い付くなんて思いません……だから事実ですよ」
「それもそうかも……ね」
事実だが、そんな言われ方されると何とも言えないものだ。
「……それに寝ちゃった私も悪いですから」
「それでも手を出す男が悪いよ」
「……そうですね……なら手の出した日向くんが悪いです」
全くもってその通りだ。
「……でも手の出せる状態で、私の胸じゃなくて私のそばかすを触る日向くんって、相当な変態さんですね?」
木陰がイタズラな表情を浮かべて楽しそうに言った。
「……じゃあ変態さん、私が寝ちゃって良い時間になったのでご飯にしましょうか」
「うん、でも変態って……」
「事実でしょ、変態さん?」
そう言って笑う木陰が夕食の準備を始めた。
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