休憩と温もり
「……最後に正義は勝つんですよ!」
俺がボスと引き分けたことを良いことに喜ぶ木陰。しかし彼女が妨害したから引き分けになったのだ。
「木陰もズルしたじゃん」
「……ズルはズルですけど、日向くんが喜びそうなことをしただけです! ……だからセーフです!」
木陰があくまでも俺が喜びそうなことを言っただけと主張する。俺が木陰にあーんしてもらうのが嬉しいと考えているのだろうか。
「呼び捨ては仲が良くなった感じがして嬉しいけど、あーん、はちょっと違う」
「……そうですか? ……名前で呼ぶのはまだ恥ずかしいので、まだやめておきます……あーん、は晩御飯のときにしてあげますね」
木陰は頑なに話しを進めた。意外に彼女は頑固なところがあるのかもしれない。
断ることを諦めて話を進める。
「大分はしゃいだな」
「……そうですね、お互いにはしゃぎましたね」
ゲームに熱中してお互いかなり騒いだ。時間が過ぎて少し冷静になってきた。
「なあ木陰、あのボスって結局どうなったの?」
「……うーん、居なくなったので勝ちとも言えますね」
「ほら、勝ちじゃん!」
木陰の話しにすぐさま食いつく。冷静になった気持ちはどこかへ消えた。
「……でも負けてますよ?」
「うっ、まあそうだけど」
「……だから引き分けです!」
と木陰が再び主張する。もう反論は出なかった。
「あのボスは攻略できたってことで良いの?」
「……良いと思います」
木陰との勝負には負けたものの、一応ボスの攻略が済んだことに安心する。
攻略するのにかなりの時間がかかった。
「強かったな、アイツ」
「……そうですね。……あのボスかなり強い敵ですよ」
木陰からも言われて攻略したことの実感が徐々に生まれて嬉しくなる。
「俺、このゲームにハマったかもしれない」
「……本当ですか!?」
木陰の食い付きが凄かった。実際、俺も友達にゲームを勧めてハマったと言われたら嬉しくなる。
木陰は今その状況なのだろう。
「……勧めて良かったです! ……私も嬉しいです!」
「でもかなり疲れた、一旦休憩」
「……そうですね、ずっと集中してましたもんね」
ボスの攻略にかなり時間がかかった。それもずっと集中していたので疲れた。
ゲームを中断して休憩する。お菓子と紅茶で息をつこうとおもったが紅茶がもう無くなっていた。
「……紅茶、今淹れて来ますね」
そう言って木陰が立ち上がり歩き始める。
そのはずだったのに木陰が頭から勢いよく俺の太ももに転ぶ。
「……あ、あの、すみませ──」
「怪我してない? 顔を打ったとか?」
「……それは無いです…………」
ひとまず木陰が怪我をしていなかったことに安心だ。もし膝に来ていたらかなり危なかった。
そんな心配をしていて時間が経っても木陰が動くことがなく心配になる。
「木陰?」
木陰の返事を待つと頭を打ったとかではなく、ただ動いていなかった。
すると木陰が凄く言い難そうにしている。
「どうかした?」
「……あの、その、足が痺れて動けないです」
どうやら木陰は動けないらしい。
「……ずっと正座で見てたので…………」
「なるほど」
俺からはスカートでなんとなくしか分からなかったが、本当に正座でいたらしい。
木陰が言っていることが本当か、抱いていたぬいぐるみを木陰の足に投げ当ててみた。
すると木陰が「あっ!」と悲鳴を上げて悶えた。
「本当なんだ」
「……相手のことを信じる約束はどこに行きました……?」
「信じてたんだけど、ただなんとなく確かめたくなった」
「……それって私の反応を楽しんでるだけですよね……?」
かなり鋭い意見だ。実際、木陰の反応が可愛いかったので良いものを見させてもらえた。
「木陰、動けそう?」
木陰の質問を誤魔化すように聞く。
「……もう、誤魔化しましたね。……今回は許してあげます。……足の痺れの方はかなり長い時間正座してたので、治るのに時間がかかりそうです」
つまり、木陰がこの状態のまま動けそうにないということだ。
「……その、凄く言い難いんですけど、このまましばらく居てもらえませんか?」
このままとは、木陰を膝枕した状態ということだ。
「罰ゲームの命令なら良いよ?」
「……うっ、かなり意地悪ですね、それに私に膝枕するのが罰ゲームって言われてる感じがします」
確かにされる側はそう感じるだろう。
「それもそうか、前に膝枕してもらったし今回だけな」
「……ありがとうございます、そう言えば前に日向くんに膝枕しましたね、どうでしたか?」
木陰に膝枕をしてもらった記憶を思い出して照れる。恥ずかしいので話題を変えたい。
「動けるようになるのにどれぐらいかかりそう?」
「……また話し変えましたね……今度教えてくださいよ。……時間はうーん、よく分からないですけど15分ぐらいですかね」
さっきから木陰に俺の心を読まれている気がする。隠し事禁止だからある程度は変わらないかもしれないが。
「分かった、治ったら言ってくれよ」
「……はい」
木陰の足の痺れが治るのを待つ。女の子に膝枕をするなんて思わなかった。
しばらくの間、木陰に膝枕をしながら二人で会話を始める。
太ももから感じる木陰の体温は程よく温かかくて心地良かった。
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木陰からすれば棚ぼた展開
一章で書くことのできなかった、日向が胸を揉んで木陰と一緒にご飯を食べて見送るまでの、木陰視点は需要があるのだろうか
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