ボス戦
俺はゆっくりと楽しみながらゲームを進める。
木陰もその様子を見て満足しているようだ。
どうやらこのゲームはいろいろな進め方があるらしく、俺なりの進め方を木陰は楽しく見ているらしい。
「……なかなか上手くなってきましたね」
「本当に?」
木陰に褒められて上機嫌になる俺。なんだか勧められたゲームを楽しんだり、褒められ喜んだりと彼女に良いようにされている気がする。
ただ楽しいから別に良しとしておこう。
しばらくゲームを進めているとなかなか勝てない敵が出てき始めた。
「だんだん敵が強くなってきたね」
「……そうですね、ここからが頑張りどころです」
それでもなんとか進めていると明らかなにボスのようなモンスターが現れた。
「……なるほど、日向くんはこういう攻略をするんですね」
俺がこのゲームで選択したルートを冷静に分析する木陰。
「え、あれ、死んだんだけど」
目の前のボスにはあっさりと殺されてしまった。
今まで出てきたモンスターとは違って圧倒的な強さを持っていた。
「……日向くんはどう攻略するんですかね」
ニヤニヤと楽しそうに見ている木陰。
「難しいな」
そんな笑みを浮かべる彼女を尻目に俺の気持ちはなんとかしてこのボスを倒したいだった。
さっき褒められて喜んだことと良い、ボスになんとか勝ちたいと挑んでいるのと良い、良いようにされているどころか完全に木陰の思うつぼだ。
しかし、楽しいのだから仕方ない。
そんな様子を木陰も少し離れて見ている。その表情は嬉しそうだ。
「コイツ強すぎるでしょ」
しばらくの間、ボスに挑んではやられて、挑んではやられてを繰り返して溜まった不満を吐き出すように言う。
「……日向くんなら行けます! ……頑張ってください!」
木陰からも応援されて何度も挑む。しかし結果は変わらなかった。
それどころか攻略の糸口もまるで分からないままだ。
「木陰、これどう攻略するの?」
「……それは答えになってしまいますよ」
「隠し事禁止は?」
「……うっ、ズルいです! ……約束はしましたけど、それはダメですよ!」
木陰からの猛反発を食らってしまった。
俺もさすがにこれはズルいのでこれからは止めようと思う。
お互いの共通認識の中にズルい使用目的での隠し事禁止はダメということになった。
「しかし強いな」
その後に挑んでも簡単に返り討ちにされてしまった。
「木陰、ヒントお願い」
あまりにも詰まり木陰を頼る。
「……もう、しょうがないですね……ヒントだけですよ」
と木陰が頼られて嬉しいのか、はたまたゲームに参加できて嬉しいのか満足そうに言った。
「……そうですね、日向くんは脳筋過ぎます。……もう少し相手を観察して、相手に合わせて攻略してみてください」
「なるほど……」
木陰からもらったアドバイスをしっかり受け止めて、もう一度ボスに挑戦する。
意識するのは、無理をしない、相手を良く観察する、そして隙を狙うことだ。
そのおかげか少しだけボスを前に生き残れた、しかしまだ全然倒せるレベルではない。
「もっと落ち着いてだな」
反省点を口ずさむ。
「……良い感じです」
木陰からのお褒めの言葉もいただいた。
それでもなかなか勝てずに時間が進んだ。俺も木陰もモニターに食らい付きながらゲームを続ける。
「あっ、今のかなり惜しかった」
「……そうですね、あと少しって感じでしたね」
今の戦いはかなり惜しいところまで行った。それだにかなり悔しかった。
このゲームの攻略を真剣にやっているので、もう思うつぼどころか完全にこのゲームの虜になってきている。
「次は勝つ!」
大きく意気込んで再開する。
「……それじゃあ、負けたら罰ゲーム追加ですね」
木陰が賭けを持ちかけてきた。
「なら勝ったらどうする?」
「……私に罰ゲームですかね…………?」
「いや、俺の罰ゲーム取り消しで」
「……ええ、それはもったいないです!」
そんな木陰を無視して戦闘を始めた。
今俺の顔を見ると絶対に悪い顔をしている自信がある、そう思えるほど笑みが浮かんでいた。
「……あっ、ズルい! ……ズルズル! ……負けろ!!」
木陰が珍しく俺に命令口調を使った。それだけお互いの信頼ができているのだろう。
しかし今回は負けられない。
「勝てば正義!!」
そう言って戦闘を続ける、長い時間かけて動きも見切ったし俺の調子もかなり良い。
このまま行けば確実に倒せる。
「……あ、日向くんのとなりに宇宙人が!」
「木陰らいつから宇宙人になったの!?」
「……なってません!」
俺を勝たせないために木陰が妨害を始めたらしい。
さっきのは俺の視線を画面外へと誘導するためのものだろう。
そんな木陰の妨害にも屈することなく、ボス戦はかなり順調に進んでいた。
「行ける、勝てる!」
「……勝たないで、負けろ!」
ボス戦が最終盤に行き、緊張で木陰ほどではないが汗が出てくる。
「木陰も少しは頑張ってる友達の応援もして!」
「……嫌です!」
最後まで木陰からの妨害を受けながら戦うことが決定してしまった。
しかし妨害があっても行ける、まだ余裕がある。
ボスの体力もあと少しだ。
「良し! 良し! 良し!」
木陰からの妨害も途切れた。これなら勝てる。
「……日向くん、お願い! ……後であーん、ってしてあげますから!」
「えっ!?」
唐突な提案に戸惑う。操作にも動揺が伝わる。今の動揺でかなりこっちの体力が削られた。
それでも持ち直してお互いにあと一撃となった。
攻撃の隙に勝負を決めようとする。
「……日向」
急な木陰からの呼び捨てに動揺して手元が狂う。その破壊力は凄かった。
「あっ、マズい……」
ボスとの勝負はお互いに最後の一撃を当てた形となった。
「どっちだ?」
結果は相討ち。
ボスは倒されて、俺は何故かボス前の部屋で目覚めた。
勝ちとも負けとも言えない状況だ。
「これって?」
判断を木陰に尋ねる。
「……日向くんの引き分け! ……つまり私の勝ちです!!」
木陰が嬉しそうに宣言した。
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ゲームに熱中してはしゃぐ二人
二章も終盤です
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