買い出しと少し明るい私
私は朝の眩しい光で目が覚めた。
どうやら私はぬいぐるみを抱き抱えたまま気持ち良く寝ていたらしい。
慌てて時計を見れば時刻は10時を回っていた。
「……ヤバッ!」
私は急いで飛び起きた。12時前には日向くんが家に遊びに来る約束だ。
日向くんの来る時間が嬉しく、待ち遠しくもあった。そんな機会を作った昨日の自分に感謝だ。
ただ日向くんが来る前に私は、今日の昼食と夕食の買い出しをしなければならない。
洗面所に顔を洗う。そして鏡に映った自分の姿を確認した。
(相変わらずのそばかすだなぁ……)
やはり何度確認しても私の顔の一番注目が行くところが、頬にあるそばかすだった。
昔の私は自分の髪の毛でそばかすを隠すように生きていた。しかし今の私は違う。
本当に一部、日向くんの前だけでは自分のそばかすのある顔に自身が持てる。
「……次は、服を着替えよう」
顔を洗い終わり、次に私がすることは服を着替えることにした。
自分にスイッチを入れるためだ。それに服を選ぶ時間を多く取りたいという気持ちもあった。
「……どれが良いのかな……?」
昨日、日向くんが選んでくれた服を並べて吟味する。
たくさん買ったとはいえ、それでも服の種類が少なく選択肢はあまり無い。
しかし、その中でも日向くんが一番喜んでくれそうな服を着たかった。
「……まあ、これとこれかな」
昨日買ったスカートは二本、なので今回は昨日履いていないものにした。
プリーツスカートと呼ばれるものらしい。そして上はスウェットの服を選んだ。
(……これを着るのか)
スカートの色はブラウン、スウェットの方は少しクリーム色にくすんだ白色で、どちらも普段私が選ばないような明るいものだ。
しかし、今日は日向くんが遊びに来るのだ。そんなもの大した否定理由にはならない。
服を着て鏡の前に立ってみる。一度試着したので昨日ほどの感動は無いもののやはり自分が明るくなったように思えた。
「……よし、服はこれで行こう。……後は日向くんに褒めてもらえれば完璧だ」
今日着る服を選び、そんな期待を持ちつつ買い出しの準備をした。
恥ずかしいので顔を隠せる帽子を被ることにして家を出ようとする。
しかし、自宅のドアの前で一度足を止めてしまった。
(この服で外に出るのか……)
そんな気持ちが私を動けなくした。昨日は日向くんが居てくれたので、こんな明るい服で街を歩けた。
けれど今日は隣に日向くんは居ない。そんな中、私一人でこんな女の子らしい服を着て街を歩く。
自分には荷が重く感じてしまった。
一度大きな深呼吸をする。
「……日向くんが料理を楽しみにしてくれてるのに、ここで足を止めてどうするの?」
自分に声を出して問いかける。
すると不思議なことに動かなかった足が動くようになった。
「……それじゃあ、行ってきます」
返事の返って来ることのない家に挨拶をして買い物に出掛けた。
日曜日の朝からオシャレをして街に出る。昨日まででは考えられないことだ。
そして買い出しのために街を歩いて一つ分かったことがあった。
周りは案外私を気にしていないということだ。それに気づくとこの服で街を歩くことに抵抗感が減った。
それでも気になるといえば気になるが、長年暗い服を着てきた弊害だろう。
気づくと買い物もほとんど終わり、残すは行きつけの精肉店でお肉を買うだけだ。
これを最後にしたのは顔見知りの人に、今の私を見られることが恥ずかしく思えたからなのかもしれない。
「いらっしゃい」
と金曜日にコロッケをオマケしてくれた、店主の奥さんが対応してくれた。
すると私の姿を見て驚いているのが、私にも簡単に分かってしまう。
「恋をすると女は変わるんだねぇ」
店主の奥さんからそんな言葉を言われた。正直、否定のしようが無い。
「……あの、コレとコレお願いします……」
私の注文を聞いてお肉を詰め始める。その時間にまた話しかけてきた。
「今日は前の彼と会うのかい?」
「……はい、この後に料理を…………」
すると何故か店主の奥さんは嬉しそうにしていた。
私にはその理由が分からなかった。
「楽しみなよ」
短く私を応援してくれた。
「……はい!」と返事をすると、また嬉しそうにしている。
そして私の注文したものを手渡してくれた。
「……ありがとうございました」
「また来なよ」
「……はい!」
気さくに見送ってもらい無事に買い物は終わった。
そして時間に少し余裕を持って家に帰る。
日向くんを待っている時間がどんどん待ち遠しくなっていく。
たった後、数分もしくは十数分ですら永久にも感じた。
すると家の呼び出しベルが鳴り響いた。それを鳴らすのは一人しか居ない。
確認するとやっぱり日向くんだ。エントランスの扉を開けて今か今かと玄関で待つ。
(私の服褒めてくれるかな? 料理美味しいって言ってくれるかな? 私とのゲーム楽しんでくれるかな?)
そんな期待が胸いっぱいにあった。
また永久のように感じられた時間を経て、今度は自分の家のベルが鳴った。
「……来た!」
玄関をすぐに開けて日向くんを迎え入れる。
今から誰に邪魔されることの無い日向くんとのお家デートの時間が始まろうとしていた。
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お外でデートの次はお家デートですか……
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