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灰かぶりの魔法は扉で解ける

 

「……ふわふわで甘くて美味しかったです」


 そう木陰が食べて振り返る。


「……あ、あとクリームも美味しかったですね」


 ニヤつきながら言ってくる木陰にさっきのことを思い出してしまう。

 わざと思い出させるために言っているのだろう。

 しかし、それが分かったところでどうすることもできず照れてしまう。


「意地悪だな」


 そう言うと彼女はフフフと笑って誤魔化した。

 そんな木陰も少し顔が赤い気がするが黙っておこう。


「……結構良い時間になりましたね」


 時刻を確認すると5時半を回っていた。

 このお店に入るまで少し待ったのと、二人でゆっくりと食べていたのでかなり時間が経っていた。


「そうだね。そろそろ帰るか」


 ここから駅まで歩き、さらに自宅まで歩くとなるとかなり時間がかかる。

 それに木陰の買った服は大量なので、彼女に運ばせるのは気乗りしなかった。

 つまり彼女を家まで送ることを考えるとかなり良い時間だ。


「……そうですね」


 二人で支度をしてレジへ向かう。今回の支払いも全て俺が持つ。

 木陰に料理を作ってもらってる些細なお礼だ。


「会計お願いします」


 受け付けてくれた店員さんは俺たちの注文を取ってくれた人だった。


「はーい、あ、ラブラブなカップルの人たちか」


 予想だにしない言葉をかけられに木陰と二人で変な声を出してしまう。


「そんなに驚かなくても。自覚無かったの?」


 そう聞かれて考えると正直自覚はあった。

 というよりは二人でカップルに見える様に演じていたので、そう言われても仕方ないのかもしれない。


 しかし、まさか店員さんにそんな覚えられ方をされているとは思わなかった。


「いや、まあ、ははは」


 答えにくい質問なので適当に誤魔化す。

 木陰の方は俺の後ろに隠れている。


「いやー、毎回交互に食べさせあってるカップルなんてなかなか居ないからね。覚えちゃったよ」


 店員さんに指摘され照れてしまう。

 いざ、客観的に言われると恥ずかしくて仕方ない。

 誤魔化すために財布を出して会計を始める。

 そんな待ち時間にも店員さんは話しかけてきた。


「彼女さんは彼氏くんのどこが好きなの?」


 急な質問に木陰がさらに後ろに身を隠す。

 しかし、聞かれた質問には返すらしい。


「……えっと、根暗な私でも優しく接してくれるところとか、その、外見で判断せずに中身を見てくれるところ…………あ、あと私の手料理を美味そうに食べてくれるところです」


 しかもしっかりと答えていた。

 かなり真剣な返答に嬉しく思ったが、同時に恥ずかしさも出てくる。


「へー、彼氏くんのこと大好きだね。そんな照れてる彼氏くんは彼女さんのどこが好きなの?」


 照れてる事実を言い当てられた。

 そして質問をうーん、と真剣に悩む。


 別に木陰に魅力が無いから、という訳ではなく彼女の前で話すのが恥ずかしいからだ。

 すると木陰が後ろから、「……バレないように答えてください」とオーダーが来た。

 なのでしっかり答えようと思う。


「そうですね。料理が凄く上手とかあるんですが、やっぱり笑顔が可愛いんです。彼女のなんだかこっちはまで楽しくなる笑顔が良いんですよね」


 恋人として好きかという質問は置いておいて、友達として好きなところは? と聞かれたら答えるようなことを選んだ。


「なるほどね。確かに後ろの彼女さんは今凄く幸せそうに笑ってるわね」


 と俺が表情を見ようと振り返ると帽子を深く被って、顔を見えないように隠した。

 そんな木陰から「……絶対に覚えておきます」に聞こえなくもないぐらい小さい呟きが聞こえた。


「はい、これお釣りになります。またのご利用よろしくお願いします」


 店員さんがお釣りを渡してくれ会計が終わった。

 すると木陰がそそくさと出口の方に足早に向かう。

 置いていかれないように付いていくと彼女は出口の前で佇んでいた。


「出ないの?」


 木陰に聞いたときに『このお店に居る間だけカップルの振りをしませんか?』という提案を思い出した。

 そして少し名残惜しく思ってしまう。

 もしかしたら木陰もそうなのかなと期待を持ってしまった。


「……日向くんは私とカップルの振りをするの楽しかったですか?」


 店員さんに聞こえないよう小声で呟いた。

 木陰の質問を真剣に考える。

 正直、楽しかった、これが答えだった。しかし、それを木陰に伝えるのは避けたいと思ってしまう。


 伝えてしまうと一種の告白のようなものになってしまう気がしたからだ。

 もし悪い方へ行ってしまったらと思うとリスクを避けたい、そんな気持ちが出てきた。


「うーん、木陰の方は楽しかったの?」


 悩んで質問に質問で返してしまう。


「……うーん」


 そんな返しに木陰も真剣に考えていそうだった。


「……えい!」


 少しの沈黙の後、木陰がかけ声と共にお店の外に出た。


「……これでもう友達ですね。……残念ですか?」


 木陰の言うとおりお店だけでの約束。

 つまり、もう恋人の振りは終わりだ、残念かと聞かれたら少し残念に思う。

 木陰が外に出たことでお店に残る理由も無くなり俺も外に出る。


「……日向くんと恋人の振りが楽しかったのかは、恋人の私なら答えてあげたでしょうね」


 と木陰が振り返って言う。


「……知りたかったですか?」


「まあ、知りたかったな」


 実際、俺は木陰がどう思っていたか気になっていた。


「……でも友達の日向くんにはナイショです!」


 彼女は口に人差し指を当ていたずらな顔で笑う。

 そんな木陰との恋人の振りは終わりを告げた。



 ◇◆◇◆◇◆




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